お菓子配りの功罪

UnsplashJoanna Kosinskaが撮影した写真

部下は上司の行動をよく見ている

先日部下と話をしていたら、ちょっとびっくりしたことがあったのでそれを今日は文章化してみる。

「ある大変な仕事があって、その部下が自分の仕事でもないのに引き受けることになった。

彼女はよくわからないなりに一生懸命取り組み、その仕事を何とかやり遂げた。

その感謝として、僕の上司である上級マネージャーが彼女にお菓子をプレゼントした」

これがコトの顛末である。

まあよくある話であると思う。

でも、僕が驚いたのは彼女の反応である。

「お菓子とかそういうことじゃないんですよ。そもそもなぜ私がその仕事をやらなければならなくなったのか? あの人の仕事は、それを本来やるべき部署に差配することなのではないのですか?」

彼女の言っていることは一理ある。

その仕事を誰がやるかという話になった時に、僕と彼女でその上級マネージャーに「これは別の部署でやるべき仕事だと思います。だからその話をして下さいませんか?」と言ったにも関わらず、その上級マネージャーが何の対処もしなかった、その事実に彼女は怒っているのである(僕も憤っていた)。

加えて、「そもそも、お菓子配れば喜ぶとでも思っているんですかね?」「そういう考えだからダメなんですよ」という手厳しい言葉もあった。

さて。

ここからはこの話を一般化していく。

部下の機嫌を取る為に、お菓子を配るマネージャーは一定数いる。

その功罪について今日は話をしていこうと思う。

それでは始めていこう。

日々の仕事において、きちんとした対応をしているか否かが重要

職場を円滑にするために、お菓子を買ってきて、労いをする。

まあよくある光景であると思う。

そして、一般的には、これは喜ばれるものでもあると思う。

でも、冒頭の彼女の話ではないけれど、この行為によって、一定数不満を持つ者がいるということは頭に入れておいた方がいいのではないか、と僕は思っている。

ここで大切なことは、そのお菓子を配っている当事者が、日々の仕事においてきちんとした対応をしているかどうかが、その効果に大きな影響を及ぼすということである。

真面目に、誠実に仕事をしているのであれば、問題ない。

ただ、もしそうでないなら、そうでないと部下に思われているなら、余計なことはしない方がいい。

逆効果になる可能性があるから。

そんなことを思うのだ。

ベースの信頼感

これをもう少し掘り下げていくと、部下は上司の日々の行動に対して査定を行っているということになるのかもしれない。

部下が上司に本来して欲しい仕事をせずに、そのようなご機嫌取りばかりやっている、そのような評価。

でも、当の本人は良かれと思っており、そのようなギャップに気づいていない。

このようなケースは、職場においてよくあることだと僕は思っている。

そして、これを突き詰めていくと、結局のところ、上司が信頼されているか否か(僕の言葉で言うならベースの信頼感があるかないか)が重要である、ということになる。

「行動そのもの」よりも「誰が行っているか」が大事

長いことマネージャーという仕事をやってきて、「行動そのものの善悪」よりも「誰がその行動を行っているか」が大事であるということを嫌という程知らされてきた。

同じ行動であっても、それを行う者が誰であるかによって、その評価は大きく異なる。

これは信頼されていないなら何をやってもダメ、という厳しい現実を指すことにもなる。

もっと言えば、信頼回復の為に色々とやる行動も空回りする可能性があり、となると、一旦信頼を失うとそこからの挽回は不可能、ということにもなり得るということである。

ああ怖い。

日々の仕事におけるスタンスが間違っているかもよ?

ただ、これは裏を返せば、日々きちんとした仕事をしていれば、ちょっとした行動の間違いは許容してもらえる、ということでもある。

ここで話を纏めていく。

僕たちマネージャーはその「行動そのもの」に焦点を当てがちであり、その行動の是非が部下からの評価に影響を与えるのではないか、と考える傾向にあるが、それはたぶん間違えている。

例えば、360度評価が悪いとして、あの行動がいけなかったのかな、と思ったりする。

それは全く間違っているとまでは言えないが、ある種的外れであるかもしれない。

行動の累積、日々の仕事に対するスタンスそのものが良くないのかもしれない。

そのように考える方が建設的である。

表面と内実は大きく異なる

となると、お菓子を配る前にやることがあるのではないか、というところに話が戻ってくる。

部下はそんなに簡単な生き物ではない。

もちろん、彼(彼女)らは喜んだフリはするだろう。

「いつもありがとうございます!」なんて言葉を添えたりもするだろう。

でも、内心は全く異なる場合がある。

だから、僕たちはそのような表面上の反応を鵜呑みにすべきではない。

もっと言えば、そんなことをしなくても、部下からの信頼を得る方法はたくさんある。

それをまずきちんとやること。

それが先決である。

不遜な考えは改めよう

「お菓子でも与えておけば、喜ぶだろう」なんて不遜な考え方は厳に慎むこと。

それは簡単に見透かされるから。

そのような自覚をもって、日々誠実に仕事をしていこう。

それではまた。

いい仕事をしましょう。

あとがき

今回の話には続きがある場合も多く、「こんなにやってやったのに、アイツは恩知らずだ!」と今度は上司側が部下に対して憤っていたりすることもあるので、人間というのは本当にすれ違う生き物なのだと思ってしまいます。

本文ではわかりやすく「お菓子」という題材を使いましたが、これは「感謝」においても同様です。

何でもかんでも感謝ばかりしていると、その真意は部下には伝わらず、「あの人は何もわかっていない」という評価に繋がりがちです。

なので、部下の行動をしっかりと見て、それが感謝に値すると判断した場合のみ感謝をする、ということが大事であるように思います。

誠実に仕事をしていきましょう。