曖昧なままにしておく勇気を
即断即決が求められる世の中ではあるけれど…
物事をスパっと分ける。
わかりやすく説明する。
昨今の(というか従来からずっとそうなのだろう)風潮はこんな感じである。
AなのかBなのか?
それをはっきりさせなさい。
そのような無言の圧力。
でも、マネジメントにおいては、というか「判断全般」においては、曖昧なものを曖昧なままにしておくことも重要なのではないか、と僕は考えている。
そして、その曖昧性に耐えられるようにしておくこともまた同様に大事なのではないか、と思っている。
もちろん、即断・即決しなければならない局面もある。
ただ、そうじゃない場合、そこまで緊急性がない場合、結論を先延ばしにすることは必ずしも悪いことではないはずだ。
今日はそんな話である。
それでは始めていこう。
判断はすぐに行うべきでもない
マネージャーになってから自分の考え方が変わった部分で言うと、今日のテーマは結構大きなものである。
以前の僕は、「判断はすぐに行うべきである、そしてその方が望ましい」と考えていた。
ただ、今の僕は違う。
「すぐに行わなくてもいい判断は、すぐに行わない方がいい」
そんなことを思う。
決められないマネージャーはたくさんいるが…
これは「決められないマネージャー」という批判との戦いでもある。
確かに「決められないマネージャー」はたくさんいる。
でも、今日言いたいことはそれとはちょっと違う。
決めるべきものは決めるべきだ。
それは変わらない。
ただ、曖昧なままにしておいてもよいものは、よいと判断したものは、そのままにしておいた方がいいのではないか?
無条件に即断即決が望ましいことではないのではないか?
それが今僕が考えていることである。
判断に必要な情報を確保する為に
もう少し詳細に説明する。
マネージャーが判断を行う局面において、情報が十分にあることは殆どない。
大抵は、限られた情報の中で判断を行う(行わざるを得ない)。
これは当たり前と言えば当たり前のことを言っているのかもしれない。
「十分な情報」なんてものは限りがないから。
ただ、今回言いたいのは、「十分な情報」にも幅がある、ということである。
「十分な情報」というカテゴリーにおける最低ラインで判断するのと、それ以上で判断するのとでは、その判断の精度は大きく変わる(変わり得る)。
だったら、その情報が集まるまで、少しでも増えるまで、判断を留保することも悪くはないのでは?
それが今日僕が言いたいことである。
物事は多面的だ
そして、ここには「時間」という概念が関係している。
僕がマネージャーになってから感じた大きなことの1つに、「自分は物事のほんの一部しか見えていないのだな」ということがある。
ある事象を判断する際に、一面から判断するのと、多面的に判断するのとでは、その判断の精度は大きく変わる。
でも、即断即決を是としていると、これがわからない。
時が経つにつれて、一面しか見えていなかったものが、徐々にその多面性を表してくることがある。
そして、それは僕の努力云々ではなく、「時間」というものがそれを露わにしてくれる。
それなら時間を味方に付ける方が理に適っているのでは?
時間を味方に付ける
僕が曖昧なものを曖昧なままにしておく方がいいと考えるのは、この時間を味方に付けた時の力の強さに驚いている(し畏れを持っている)からである。
ただ、時間を味方に付ける為には、その間の時間を耐える必要がある。
判断を留保するというある種の「気持ち悪さ」に耐えなければならない。
それは上記したような他者からの批判というような生易しいものではなく、自身の内面に生じる居心地の悪さであり、それを片付けてしまいたいという衝動である。
たぶん人間は何かを途中の状態にしておくことに居心地の悪さを感じる生き物である。
それに耐える。
というか、判断を留保しておいて良いものかそうでないものかを的確に見極め、留保できるものについてはその精度を上げる為に留保しておく、そのような態度が必要なのだと僕は考えている。
判断の遅速を使い分ける
マネジメントという仕事をしていると、時を味方に付ける大切さを感じることが多い。
今日の現時点においては真っ暗闇のように感じる状況であっても、一夜明けると新しいことが判明し、その暗闇に光が差す、そこから一気に解決に向かうということが結構な頻度で起こり得る。
それを上手にコントロールしていくこと。
それが判断の精度を上げることには重要であり、マネジメントという仕事のパフォーマンスを上げる為に重要なことである。
勇気の大切さ
そして、その為には「勇気」が必要である。
大人の社会において勇気が大事だと言う人はあまり多くはないけれど、僕は仕事をしていて勇気の大切さを感じる場面がとても多いし、それが仕事の成果を分けるとも考えている。
勇気がない人はとても多いから。
それはある種「孤独に耐える力」と言い換えることもできるから。
一歩先へ
物事を留保しておく力。
時間を味方に付ける能力。
その為の勇気。
それらが備わった時、マネジメントという仕事はもう1歩先に行けるように感じている。
それではまた。
いい仕事をしましょう。
あとがき
「曖昧性に耐えられない人が増えている」
そんなことを考えることがあります。
何事も白黒つけないと気が済まない人。
そしてその方が正しいと盲目的に信じている人。
曖昧性に僕は知性を感じます。
割り切った議論は心地良いですが、そこには発展性がないようにも思います。
はっきりさせることが全てではありません。
適切な曖昧性と、それと向き合う勇気を持って仕事に取り組んでいきましょう。