マネジメントスキルは研修では身につかない

UnsplashJason Goodmanが撮影した写真

マネジメントスキルの不足までは理解できるが…

「日本のマネジメントには問題があり、その要因の1つとしてマネージャーのスキル不足がある」

ここまでは僕も人事部も同じ問題意識を共有していると言える。

でも、それを解決する為の方向性は大きく異なる。

そんな風に思う。

働き方改革や、組織のフラット化、年功序列の廃止、ハラスメント意識の向上、等々によって、マネージャーの仕事は多様化し、いつしか「管理職は罰ゲーム」とまで言われるようになった。

実際問題として、管理職の業務負担は増加している。

それを見て、管理職になりたがらない若手社員も増加している。

結果、「管理職人材プール」は枯渇寸前だ。

そんな状況を打開すべく、人事部はマネージャーのスキル開発を積極的に行おうとしている。

マネージャーのスキルが向上すれば、上記したような多様化する仕事に対応できるようになるし、指導力が発揮されることで、部下達もマネージャーになりたいと思う、そんな好循環が生まれるのではないか?

そのような発想。

僕はこれらが決して間違っているとは思わないものの、ちょっと方向性が違うのではないかと考えている。

今日はそんなことについて書いていく。

それでは始めていこう。

多様な問題に対処するスキルは個別具体的に身に付けるしかない

マネージャーのスキルの多様化と、そこに追い付いていない現状があって、それを埋めるべく研修を行う、という一連の流れに僕は疑問を持っている。

問題の原因はマネージャーのスキル不足にある、というところまでは僕も同意する。

でも、それを研修によってクリアできるのかは疑問である。

それはなぜか?

多様化するマネジメント環境における問題は、文字通り多様であり、その解決は個別具体的に行うしかないからである。

もっと言えば、研修やその他の訓練によって身に付けられないスキルがそこはあって、それは適性とも言うべき項目であると僕は考えるからである。

克服不可能な課題の方が圧倒的に多い

マネージャーには向き不向きがある。

スキル強化によって克服できる課題もあるが、そうでない課題もある。

そして、後者の割合の方が圧倒的に多いのではないか、というのが僕の考えである。

また、そのような状況において現状を打破する為には、マネージャーの選別を行う必要があり、スキルの高いマネージャーには現状の仕事(と高待遇)を、スキルの低いマネージャーにはそれ相応の仕事(と低待遇)をあてがうことが大事なのではないかと思っている。

要は、何でもかんでも一律に処することを是正すべきなのではないか、というのが僕の意見である。

マネージャーの評価方法と処遇を変えよう

これはマネジメントにおける成果主義とも言える。

でも同時に評価の困難性がそこに付帯していることを意味してもいる。

とすると、現状を打破する為には、マネージャーの評価制度を改めることと、その評価に見合った処遇の見直しを進める必要がある訳だ。

改善されていない処遇に問題がある

「管理職罰ゲーム論」は、その処遇と対価が見合っていないことが1つの要因としてあるような気がしている。

これがそれなりの待遇に改善されれば、「まあ悪くないかもな…」と思う人だっているはずだ。

そういう意味では、管理職の業務範囲が拡大したことによる処遇改善が進捗せず、安い人件費でそれらの仕事を賄おうと考えている人事制度にまず問題があると言える(本来的には業務拡大に合わせて処遇も改善すべきだったのだ)。

業務範囲を絞り、給料も下げる

でも、人件費は有限でもある。

また、企業が人件費を出来るだけ切り詰めたいという動機も理解はできる。

とするなら、パフォーマンスの低い管理職の人件費はそれなりのものに抑えることが不可避となる訳だ。

ただそれだと不満が昂進するだけなので、それに合わせて業務範囲も縮小していく。

低いマネジメント能力でも対応できる範囲まで業務を縮小してしまう。

差を付けよう

これはある意味では、組織のフラット化に反する流れと言えるのかもしれない。

というか、組織をフラットに保ちたいと願うなら、その分人件費が必要になるという訳で、その二律背反の項目においてどのくらいの水準が適正なのかということをもう少し真剣に考えるべきなのではないか、と僕は思っている。

現状は管理職をただ搾取しているだけに過ぎない。

でも、マネジメント能力が備わっていない人物がそこに居座っていることも事実だとも思う。

それをもう少し可視化していく。

ただ、(これもループみたいな話であるが)マネジメント能力を適正に評価する(可視化する)為には、相応のマネジメント能力を持った人が必要となる訳で、そういう意味においても、高度マネジメント人材の選別は不可欠なのではないかと僕は思っている。

幹部候補と非幹部候補の選別を行い、それにあった処遇の見直しを行うこと。

それは研修によるスキル強化とはだいぶ違う方向であるけれど、それこそが人事部の本来業務なのではないかと僕は考えている。

それをせずに、全員に研修を行えば解決するだろうと考えるのは、安易であるし怠慢ですらあると僕は思う。

何だか変な話になった。

それではまた。

いい仕事をしましょう。

あとがき

マネージャーのスキル不足はその通りですが、それを万人に身に付けさせようとしているところに問題点があると僕は考えています。

そうではなく、それが可能な人材を見極め、そこに重点的にリソースを配分することが必要では?

そこで生き残れるマネージャーには高待遇を与える(それ以外は低待遇にする)ことで、現在の不満の多くは吸収できるような気もしています。

というか、それを選別するのが、人事部の本来業務なのでは?

適切な格差に慣れていきましょう。