適切に負荷をかける

部下は生もの
部下育成について問われることが多く、今日もそんな話である。
「部下は生ものであって、その時々において適切な負荷量が変わる」
そんな風に僕は捉えている。
そして、その適切な負荷をかけるのがマネージャーの役目なのではないか、というように話は繋がっていく。
この見極めというか、見定めというか、そういうものがマネージャーには求められるし、それができるマネージャーの下にいる部下は成長をすることができる。
何だか言いたいことは全て言ってしまったような気もするけれど、とりあえず始めていこう。
部下を観察する
「部下をよく見ること」
観察とまではいかなかくても、その部下が現在どのような状態にあるのかを把握することは部下育成のみならず、マネジメントにおいてとても重要である。
現在の仕事量や仕事の質、精神状態など、それをできるだけリアルタイムに知っておくこと。
それに応じた対応をすること。
それがとても大切なことである。
動的なマネジメントと静的なマネジメント
これを僕は動的なマネジメントと呼んでいる。
というのも、多くのマネージャーは(たぶん無意識的に)静的なマネジメントを行っていると思うからである。
静的なマネジメントというのは、僕のイメージにおいては、無生物に対するマネジメントに似ている。
たとえば機械など、一定の入力があれば一定の出力を返すだろう、というようなイメージである。
これはテイラー主義的な考え方に通じると僕は思っている。
そして、その出力を如何にコントロールするかがマネジメントであると多くの人は考えているように思うのだ。
同じ入力に対して、同じ出力がある訳ではない
もちろん、マネジメントという仕事にはそのような側面がある。
部下を「管理」し、仕事をするように求めていく、それがマネジメントという仕事には当然に含まれてはいる。
でも、相手は人間である。
そんなに安定的に出力が出てくる訳ではない。
そこで必要になるのが動的なマネジメントである。
部下の状況をできるだけ細やかに把握し、それに応じたマネジメントを行っていくこと。
ある種のオーダーメイド感。
そういうものが現代のマネージャーには求められるのだ。
適切な負荷量を把握する
そして、今日のテーマである部下育成においてもそれは当てはまる。
現在の部下の状況がどのような状態であり、目指すべき方向はどちらなのか、その為に必要なことは何なのか?
そういうものをできるだけリアルタイムに把握し、それに応じた課題を与えていくこと。
それは難し過ぎても、簡単過ぎてもいけない。
適切な負荷量を与えること。
それがマネージャーの腕の見せ所なのである。
部下自身は適切な負荷量がわからない
ここで難しいのは、部下自身は適切な負荷量がどのようなものかがわからないことが多い、ということである。
また、多くの部下は現状維持思考が強いということもここには関係してくる。
それも無意識的であることが殆どだ。
となると、適切な負荷量というのはマネージャー側で考える必要が出てくるということになる訳だ。
ましてや、日々の業務がそこにはある。
当然ながら、適切な負荷量というのは、往々にして日々の業務にオンされたものになる。
それを見つけ、部下に腹落ちさせ、その負荷を潜り抜けている最中に支援し続けること。
これなくして部下の成長はないのである。
みんな違う
もっと言えば、適切な負荷をかけるべき部下とそうでない部下がいるということも頭に入れておく必要がある。
それも先述した動的なマネジメントに必要なことだ。
「適切な負荷をかけるべきだ!」と僕が言ったからといって、それを鵜呑みにし、十把一絡げのように一斉に部下に負荷をかけ始めるのは間違っている。
それぞれの部下には、それぞれの負荷をかけるべきタイミングがある。
そして、その中には負荷をかけるべきではない部下もいる。
そういうことも勘案しながら、チームマネジメントを行っていくのである。
負荷をかけると成果は(一時的に)下がる
また同時に大切なことは、負荷をかけている期間は成果が下がってしまうことを頭に入れておくことである。
もちろん、それが身になり、力になれば、成果はその後大きく伸びていくのだけれど、負荷がかかっている最中というのは、そちらに意識が向いていることもあり、往々にして成果が下がってしまうことを許容しなければならない。
といっても、マネージャーは成果を求められ続ける訳で、その渦中においてもチームとして成果を出せるような仕組みを日頃から作っておく必要があることは言うまでもない。
そういった「伸びと縮み」みたいなものを組み合わせながら、日々の運営を行っていくことが重要である。
成果を上げるのは大前提
少なくとも、成果が上がらないことの言い訳を部下育成にしてはいけない。
成果を上げるのはマネジメントの絶対条件である。
ただ、目の前のことだけに取り組んでいる(取り組ませている)だけでは、成果の伸長も一定程度に留まってしまう。
だからこそ、部下には適切な負荷をかけ、成果の水準を上に伸ばしていくような仕掛けをし続ける必要があるのだ。
それではまた。
いい仕事をしましょう。
あとがき
成長には一定のイニシエーションみたいなものが必要だと僕は考えています。
現代の若者たちはこのような考え方(特に負荷)に対して忌避感を覚えるようですが、それなくして成長というものは起こり得ません。
異世界転生やオレだけレベルアップみたいなことは残念ながら現実には起こりません。
そこには必ずマイナスなものが付帯してきます。
それを適切に掛けられるか否か。
それがマネージャーの腕の見せ所です。
難しい時代ではありますが、めげずに負荷をかけていきましょう。
