ちょっとした工夫が戦略に実効性を与える

UnsplashEric Prouzetが撮影した写真

マネージャーとメンバーを繋ぐための回路

マネジメントの仕事を10年もやっていると、ちょっとした工夫がないことによって戦略を機能させられない人が思いのほか多いことに気付く。

多くの人はそのちょっとした工夫を軽視しがちである。

そんなものは重要ではないと。

でも、それがなければ戦略は戦略として機能しない

それがわからない人が非常に多いように感じている。

ここで言うちょっとした工夫というのは、戦略を戦略として機能させる為の簡単な仕組みのことを指す。

言わばマネージャーとメンバーを繋ぐための回路である。

それを戦略に織り込めるか否かでマネジメントの成否は大きく変わる。

今日はそんな話である。

それでは始めていこう。

部下の腹落ちの重要性を理解している人は少ない

戦略には部下の腹落ちが大事である。

でも、それに本当の意味で気づいている人はそこまで多くない。

というか、わかってはいても軽視しているというか、腹落ちさせる為の方法がわからないというか、そういう感じなのかもしれない。

どうやったら部下が腹落ちするのかわからない?

これは何もボトムアップ・アプローチをしなさいとか、ボトムアップ・アプローチの方が優れているとかそういうことを言いたい訳ではない。

トップダウン・アプローチであったとしても、そこには部下を腹落ちさせる為の仕組みが不可欠である。

しかしながら、それがどのように実現できるのかということは思いのほかわからないようなのである。

部下の腹落ち加減は評価に値しない?

一方、僕はこれが得意である。

でも、それがあまり評価されていないなとも感じている。

それはそれが評価に値するほどの重要性があるとの認識がないことが関係しているように思う。

確かにそれだけを取ってみれば、大したことではない。

言ってみれば、取るに足らないものである。

ただそれがなければ、スムーズに物事が流れていくこともないのである。

面従腹背だらけの職場

この話は僕がこのブログを立ち上げた時からずっと言っていることである。

でも、一向に改善する兆しは見えない。

だからこそ、生産性が向上しないのだろう。

戦略だけが独り歩きして、誰もが面従腹背的に動くから、ダメなのである。

欺瞞的報告と見当違いの戦略の再生産

そして、報告においてはその戦略がいかに機能しているか、効果を挙げているか、ばかりが喧伝される。

それを真に受けて、またよくわからない方向性の戦略が構築され、伝播される。

以後永遠に繰り返し。

これが伝統的な日本企業における典型的な流れのような気がしている(当社だけか?)。

接続すること

僕は今日のテーマのことを「接続」と呼んでいる。

戦略と戦術を接続すること。

それが何よりも大事なことである。

でも、その重要性について言及されることは殆どないとも思っている。

些細であるが重要なこと

確かに敢えて取り上げるまでもないことである。

ちょっとした工夫というのは、本当に僅かなことである。

例えば何かを行う際にこういう言い方をすることに統一しようとか、その形式を変えようとか、そういったくらいの些細なことである。

ただそのちょっとした気遣いが、マネージャーとメンバー、戦略と戦術を繋ぐのだ。

模倣可能性と不可能性

それは細部への拘りと言い換えることができる。

よく企業文化論などにおいて、模倣可能性みたいな話が出るけれど、今日の話もそれに関係があると思う。

ちょっとした工夫というのは、模倣不可能である。

ただ、その模倣不可能性がその企業の文化であるとも言える。

それはチームにおいても同様だ。

成果が上がるチームとそうでないチームの違い

何だか上手くいくチームと、そうでないチームがあるというのは、マネジメントを複数年経験した人であればわかる感覚であると思う。

やっていることはそんなに変わらないのに、そしてメンバーのレベル感もそこまで大きく差がないのに、なぜこんなにも成果の水準が違うのか?

そう思った時には、チームにある文化の差がそこには隠れていることが多い。

そしてその文化の一種が今日の話である「ちょっとした工夫」であったりもするのである。

日々のメンテナンスの重要性

僕がチームを去ると、途端にチームが機能しなくなったという話を聞くことがある。

それは今日のようなちょっとした工夫が失われたからだと自分では理解している。

もちろん、僕がいなくてもチームが機能するような仕組みを構築しておくべきだというご意見はよくわかる。

そして、それなりに僕としてはそれをやっているつもりでもある。

でも、たとえそうであってもちょっとした違いは生まれてしまう。

それは外形的にはわかりづらいものではあるけれど、非常に重要なことなのだ。

戦略の戦略性に囚われるな

日々のちょっとした工夫により、チームにある小さな段差のようなものが解消されていくこと。

それが累積し、チームが壊れていくことを未然に防いでおくこと。

そういうイメージがとても大事だし、それができていれば戦略というのはその力を大いに発揮するようになる。

しかしながら、戦略の戦略性ばかりに気を取られると、それが機能することはない。

戦略やメンバーが悪い訳ではない

多くの人は、戦略が機能しない場合、戦略が悪いのか、それを実行するメンバーが悪いのかという二者択一で考えがちである。

でも、僕の経験では、そのどちらかに問題があるのではなく(そういう場合もあるが…)、その接続が上手くいっていないことが大半である。

ちょっとした工夫が戦略に輝きを与える。

そんなイメージを持って、マネジメントという仕事に取り組んでいくのである。

それではまた。

いい仕事をしましょう。

あとがき

ちょっとした工夫が本当に下手だなと思う時がよくあります。

戦略が良くても、それが適切に実行されなければ、絵に描いた餅に終わります。

でも、それが適切に実行されないことを部下のせい(資質や能力など)にしてしまう人はとても多いです。

大切なのは、それを上手に「接続」することです。

そして、その為の方策を考えることです。

ちょっとした工夫を蔑ろにせず、両者を接続していきましょう。