勝てる戦いをする

「勝てる戦い」と「どうやっても勝てる見込みのない戦い」は違う

孫氏の兵法とか、そういう難しいことはあまりよくわからないけれど、マネジメントにおいても「勝てる戦い」をするのはとても大事なことだ。

部下だけでなく、同じマネージャーでも、上司であっても、無謀な戦いに挑もうとする人はとても多い。

「どうやっても勝てる見込みのない戦い」に対して向かっていくことを勇敢とは呼ばない。

無謀と呼ぶ。

では、なぜ「勝てる見込みのない戦い」に挑むのか?

組織の命じるままやっているのだから仕方ない、確かにそういう場合もあるだろう。

ただ僕が見ていて感じるのは、「勝てる戦い」と「どうやっても勝てる見込みのない戦い」の違いがわからないままやっている場合がある(そしてその比率は思いのほか高い)、ということだ。

その差は歴然としているはずなのに、どちらに対しても同じようなスタンスで向かっていく人が本当に多い(そして次々と討ち死にしていく)。

これはいつも書いていることを、違う角度から書いているのに過ぎないようにも感じるが、何というか、わかりやすいのではないかと思ったので、今回はこんなテーマで書いていこうと思う。

勝率が高い戦場での戦いを選ぶのが指揮官の仕事

自分のチームの戦力を見極めれば、どの程度の勝率が得られるか、というのは大体わかるはずだ。

そしてその勝率が高い戦場での戦いを選ぶのが指揮官の仕事である。

どこかのブログでも書いたことだけれど、特に弱小チームにおいては、「小さな成功体験」は非常に価値がある。

弱小チームは勝ったことがないから、勝った経験が少ないから、弱小なのだ。

そこにいるメンバーも、叱られ怒鳴られ、自信を喪失してしまっている場合が多い。

ただ、(当たり前のことだけれど)弱小であるから、いきなり大勝するのは難しい。

ではどうするか?

本当に小さな戦いに挑むのだ。

そこで「勝てる戦い」をする。

マネージャーから考えたら、あまりにも小さな目標で、馬鹿らしい、と思うくらいの目標で構わない(もちろん、メンバーからしたら少し高い球というのがベストだ)。

そのくらい緩いボールを投げる。

自信があれば、ギリギリの戦いを勝ちに持ち込める

例えば営業であれば、期間を定めて、その小さな目標に取り組む。

個人戦とチーム戦を組み合わせながらやってみてもいい。

とにかく、「ある課題があって、それに対して試行錯誤を重ねて、達成した」ということが大事なのだ。

勝つ、という経験は不思議なことにチームを確実に強化してくれる。

能力がすぐに伸びることはないけれど、自信はすぐにつけることができる。

自信があれば、ギリギリの戦いを勝ちに持ち込むこともできる。

そうやって勝率が上がってくるのだ。

内海を設定する

ここで大事なのは、あくまでもマネージャーが設定した「箱庭」の中での勝利である、ということだ。

外海ではなく、内海での勝利

それはマネージャーだけがわかっていればいい。

ただ、その波が少ない状況を設定してあげることは、マネージャーにしかできない。

特に弱小チームを率いているのであれば、自分の上司や会社からのプレッシャーは相当なものになるはずだ。

「何とかしろよ! わかってるんだろうな!」的なスゴみみたいなものもたくさん味わうことになるはずだ。

ただ、それをできるだけいなしながら、まずは勝てる戦いをさせて貰えるように仕向けていく。

その手腕がマネージャーには求められる。

勝てるフィールドを手にすることが大事

交渉と言うとやや大げさにはなってしまうけれど、上司と目標を擦り合わせる中で、弱小チームが弱小チームであった理由や要因を論理的に説明していく。

できることと、できないことを、明確にして話す。

でも、話の全体的なトーンとしては「無理です。できません!」ではなく、「現状はこのような戦力なので、ここまではできます。ただこれ以上は難しいと思います。まずはこの目標でやらせてください。しかる後に、その目標値ができるところまで持っていきます」というような話の仕方をする。

平たい言葉で言うのであれば、安請け合いをしない、ということになるのかもしれない。

もちろんそこにはちょっとした攻防があるはずであるが、自分のチームが弱小であればあるほど、上司も上手くいかなかった経験をしているはずなので、「まあ仕方ないか。取り敢えずやってみろよ」という形になることが多い。

そうやって勝てるフィールドを手にする。

後はそんなに難しいことではない。

勝てるフィールドで、勝てる戦いを、淡々とするだけだ。

そして実際に勝つ

自分で定めた小さな目標を達成させる。

それを繰り返す(次はもう少し高い目標にしていく)。

それがチームを少しずつ強化していくのだ。

いい意味での勘違いをさせること

この辺の見極めができるようになれば、実際の実力はともかく、チームが変わってきたという印象を持たせることができるようになる。

内部にも外部にも。

いい意味での勘違いをさせていく。

内部的にはそれは自信という形で現れるし、外部的にはそれは評価(「あのマネージャーはなかなかやるかもしれない」)という形で現れる。

すると、次はもう少し高い目標に挑戦できるような状態になっているはずだ。

連戦連勝とはいかなくても、こうした「勝てる戦い」を繰り返していくと、「本物の実力」がだんだんついていく。

後はテイクオフするだけだ。

それではまた。

いい仕事をしましょう。


あとがき

すぐに実力がつくということは起こらないですが、実力がついたのではないかと勘違いさせることは可能です。

そしてその勘違いというのは案外力になるものです。

それが今回書きたかったことです。

マネージャーの仕事は壮大な勘違いをさせること、と言ったら言い過ぎでしょうか?

勝率を上げる為に、戦術や戦略を考えること、フィールドを用意することは、マネジメントの仕事です(実際に勝つかどうかはやってみなければわからない)。

それができるようになれば、後から遅れて実力も付いてきます。

どんどん勝てる戦いをしていきましょう。

キャリア論

前の記事

ミドルの憂鬱