ショートノーティスは無能の証明書

ウォーターフォールモデル(笑)

管理職をしていると、様々な方面から報告を求められる。

その中には「ショートノーティスで恐縮ですが…」的な文章が含まれていることがある。

僕はいつもこれに違和感を覚える。

「その自覚があるなら、もっと早く依頼しろよ」と。

もちろん、そのメールの出し手だって組織の一員であって、より上位の人から早期の報告を求められているのだろうから、それが下に降りてくる時には同じように依頼したくなる気持ちはよくわかる。

ただ、これを連鎖させていくと、同じ指示が下に降りていくだけで、結局苦しむのは現場ということになる。

これほど生産性を下げるものはない。

もっと言うと、大半はそんなに急いで報告すべき内容ではないことが多いので余計にぐったりとしてしまう。

ただ上司から短納期を求められているから下にも同じように依頼しているに過ぎない、と思われるものが殆どだ。

自分の責任にならないことが最優先で、その内容を吟味することはない。

流れ作業のように依頼するだけ。

あなたもその片棒を担いでいないだろうか?

今日はそんな話をしていく。

せめて申し訳なさそうにはして欲しい

まず前提として、僕は「ショートノーティス」という言葉を使う奴を無能だと思っている。

特に、もしそれが自分発信であるなら、軽蔑すら覚える。

仕事のスケジューリングというのは基本のキであって、それがどのくらいのレンジを持つものなのか、返ってくるのにはどのくらい時間がかかるのか、ということを想像できない人にははっきりいって「いい仕事」はできない。

様々な要因によって、仕事というものは停滞するのが当たり前だし、それすらも考慮に入れて発注をすべきであるのに、その努力を怠る人が結構な割合でいるのは残念でならない。

もちろんのっぴきならないことはある。

でももしそうなら、せめて申し訳なさそうにはして欲しい

「自分の能力の至らなさによって、こんな無理難題を押し付けてしまうことになってしまって、大変申し訳ない」という気持ちはそこに込めて欲しい。

実際にそうなのだから。

ただ、こういう人はそういう節度すら持っていないことが多い(というか、そういう節度がないから仕事ができないのだろう)。

それがウォーターフォールのようにどんどん下に落ちてくる。

無能の連鎖。

そうやって組織全体のパフォーマンスが落ちていくのだ。

部下を守るのもミドルの重要な仕事

「いや、でも、組織に属している以上、それはやむを得ないんじゃないですか?」

そういう声が聞こえてくる。

その気持ちはよくわかる。

「あなただって、管理職である以上、無理な短納期を部下に頼むことはあるでしょう?」

確かにそうだ。

でも、僕が思うのは、「せめて流れを食い止めよう(弱めよう)」という意識があるかどうかによって、部下からの反応は大きく異なる、ということだ。

組織の階層毎にこの意識が少しでもあれば、水の流れは徐々に弱まっていく。

もちろん、大きな流れは変えられないかもしれない。

ただ、大事なのは部下からの信頼を減らさないということなのだ。

この少しの逡巡みたいなもの、戸惑いみたいなもの、それが実は大事なのである。

思考停止をして、想像力を欠いて、ただ右から左へ受け流すだけでは、ミドルマネジメントとしては失格だ。

部下を守るのもミドルの重要な仕事である。

全部でなくとも、一部の責任を被るのもミドルの仕事だ。

僕はそう思っている。

えなり的開き直り

ショートノーティス、という言葉が欺瞞に満ちているのは、「私はそれをショートノーティスだということをわかっている」という変な気遣いがそこに含まれているからだ。

「私は理解者であると同時に被害者である」いうエセ善人感が余計にその卑怯性を際立たせる。

そしてその自覚がないところに、羞恥心の欠如に、僕は無能性を感じる。

少なくとも僕には片棒を担いでいる、という自覚がある。

「そんなこと言ったって、(組織に属しているのだから)しょうがないじゃないか」という「えなり的開き直り」は僕にはない。

マネージャーには羞恥心が必要

以前にもこのブログ内にも書いたことだけれど、マネジメントにはこの羞恥心みたいなものが必要だと僕は思っている。

それがない人にはリーダーの資質がない。

人がついてくることはない。

人がついてこなければ成果は出せない。

優秀性(無能性)の証明の一端

「ヒラメ上司」という言葉が侮蔑的な意味を帯びているのは、そこに部下が含まれていないからだと思う。

優秀な奴ほど、組織内での優秀性に拘ってしまう。

近道をすることで、かえって遠回りになってしまう。

納期通りの仕事をすることは確かに優秀性の証明の一端にはなるだろう。

でもそれによって失うものは大きい。

その自覚があれば、ショートノーティスという言葉は使えないだろう。

その分別のなさに僕は呆れてしまう。

リスク・リターンの平準化を

責任を負おう。

無理難題を押し付けているという無能性を背負おう。

その自責の念があれば、あなたは間違いなく、卓越したマネージャーになれる。

短納期の仕事を依頼したとしても、部下は頼もしいくらいあなたに応えてくれる。

その分あなたも彼らを守るべきだ。

それではまた。

いい仕事をしましょう。


あとがき

部下に仕事を任せる、というのは優秀な上司の条件の1つであることであることは間違いありません。

ただ、それは部下に仕事を振る(投げる)というのとは大きく異なります。

上手く言えないのですが、その仕事が中長期的に部下の為になる種類のものでなければ、マネージャーのところで捌いてあげることも時には必要であると僕は思っています。

この峻別が非常に大事です。

できることをやって部下を守っていきましょう。