部下の体温を上げるには?

「やる気」と「体温」

中長期的に安定した成果を上げるには、部下の体温、ひいてはチーム全体の体温を上げることが重要だ。

ここで言う「体温」というのは、「やる気」に近いニュアンスではあるのだけれど、「やる気」が一時的なイメージ(ムラがある)であるのに比べて、「体温」は恒常的なイメージである(ことにする)。

換言すると、突発的に士気が上がる(下がる)、というのではなくて、平均的に士気が高い状態(「平熱」が高い状態)を目指す、ということになるだろう。

多くのマネージャーは、何かのきっかけを与えて、「やる気」を引き出そうとするのだけれど、僕の場合は淡々とベースを上げる、そんな風に書けば意味が伝わるだろうか。

経験上、「やる気」というのには波があって、良い時は良いけれど、そうでない時は成果が停滞することが多い。

チーム全体がこの「やる気」の停滞期に突っ込むと、浮上するまでに時間がかかる。

なので、僕はなるべく「やる気」に頼らないような運営をしている。

抽象的な話になりそうで不安であるが、今日はそんな話をしていく。

体温を上げるには納得性が必要

部下の体温を上げるには納得性が必要だ。

チームに属していることに、チームで仕事をすることに、ある種の納得感があること。

逆に言えば、不条理をできるだけ少なくすること。

それもできるだけ全員がそう思う状態が望ましい。

では、納得性はどうやって醸成するのか?

それはたくさん対話を行うことから生まれる。

僕はそんな風に考えている。

何でもない時間を大事にする

数多くの1on1ミーティングを経て僕が思うのは、面談の内容よりも、面談を繰り返すことが重要である、ということだ。

それこそやり始めの頃には、コーチング的な、部下を導いてやろう的な、余計な力が僕にも入っていたのだけれど、最近は殆ど何も考えていないし、本当に雑談をしているような感じである。

傍から見れば、時間のムダのように思えるだろう。

でも、部下とコミュニケーションを取る時間がどんどんと少なくなっている昨今において、この「何でもない時間」というのが実は大事なのではないか、と最近は考えている。

意図を含まない面談。

その中でアドリブ的に部下から出てくる疑問や不満などを答えていくこと

「用意された答え」ではなくて、「建前」ではなくて、マネージャーがどのような思考回路を経て、結論を出したのかを共時的に体験してもらうこと。

これが納得感を生むのだと思う。

マネージャーは違う世界の住人だと考えるメンバーもいる

マネージャーを自分とは違う世界に住む存在である、と考えるメンバーは一定数いるのだ、ということに僕は今更ながら気づいたりする。

自分達を管理する人、苦役を与える人、痛みをわからない人、そんな風に考える人がいる(僕には驚きではあるが)。

同じチームで働いていても、指示する側とされる側のような、利害の不一致みたいなものから、対立関係が生まれてしまう(実際には違うのに)ことがある。

これをそのままにしておくと、どんどん実態と離れた意味不明な方向に行ってしまう。

気が付けば、「マネージャーは悪魔だ(これは例えだ)」みたいなよくわからない偶像が出来上がってしまったりする。

そんなことはないのに。

様々な行き違いを補正する

組織で働いている以上、意に沿わないこと、腑に落ちないこと、はたくさんある

それを全て解決することはできないけれど、少なくともマネージャーも同じような不条理を感じていて、それに対して憤っているということを共有することが大事なのだと僕は思っている。

もちろん職場内においてそれを共有することができる場合もあるけれど、部下の人数が多くなってくると、なかなかそうもいかないのが現状だ。

同じ発言をしたとしても、受け取る人たちは千差万別で、「なぜそのように伝わってしまうのだろうか?」と思うことだって度々あるし。

それを補正する為に、僕は1on1という場を使う。

小骨を取り除く、もしくは共感すること

1on1を繰り返していると、人というのは本当に些細なことに引っかかったりするものなのだ、それによってパフォーマンスが左右される生き物なのだ、と思うことになる。

その「小骨」みたいなものをピンセットで取ってあげること。

もしくは、「小骨」が取れない場合には、「気になるよね」と共感してあげること。

その繰り返しが部下の体温を、ひいてはチームの体温を上げることに繋がるのだと思う。

弱い紐帯

表面的な利害は人によって様々であるし、働いている理由はそれぞれ別にある。

でも、会社という場において、チームという単位で働いている時に、少なくともマネージャーとは弱く繋がっているという意識があること。

これが結構大事なことなのだと思う。

マネージャーは立場上、部下にとって嫌なことだって言わなければならない。

それも自分だって納得していないことを言わなければならないことだってある。

そんな時に、部下との関係性ができていなければ、伝わるものも伝わらない。

日々の行き違いも含めて、こういったやり取りを継続的に繰り返していくこと。

それが最終的にはチームのパフォーマンスに繋がるのだ。

それではまた。

いい仕事をしましょう。


あとがき

「あなたのことをきちんと見ている」というメッセージを如何に発信するか、というのがチームのパフォーマンスを左右します。

ものすごく単純化するのであれば、これだけできていれば自然と成果は上がると言っても過言ではないかもしれません。

それくらい人間というのは他者との関係性の中で生きている動物です(社会的関係動物)。

よく「部下を褒めなさい」ということが(稚拙な)マネージャー本には書かれていますが、大事なのは褒めるという行為それ自体ではなく、褒められるだけの材料をマネージャーが持っている状況である、ということです。

部下のことを普段から見ていれば、何らかの良い所は見つかるはずですし、それを必ずしも「褒める」という形で表現する必要はない(見ていることを表現すればいい)と僕は考えています。

そういうことの積み重ねが、マネージャーの発言に重みを与え、信頼感に繋がっていきます。

表現方法も含めて、自分に合うやり方を見つけていきましょう。