送別会でのスピーチを効果的に利用する

残存するメンバーに語りかける体で

春は出会いと別れの季節である。

マネージャーともなれば、チームから異動するメンバーに対してスピーチを求められる場面もあるだろう。

その中でどんな話をするか?

もちろん僕はスピーチに関しては素人なので、具体的な内容は脇に置いておいて、チームマネジメントに役立てる、という観点から話してみようと思う。

結論から言うと、異動するメンバーに対して話しているようであるけれど、実はチームのメンバーに語りかけている、というような(嫌らしい)形を取ると、その後のマネジメントはやり易くなる。

今日の話はとてもニッチな話ではあるけれど、参考になる部分があるかもしれないので、ぜひ読んで頂きたい。

感謝を伝える

皆さんは日々メンバーに感謝を伝えているだろうか?

送別の時だけになっていないだろうか?

感謝を伝えるタイミングは多ければ多いほどいい。

ただシャイな人はなかなかできない、上手くできない、その気持ちもよくわかる。

だから、普段あまり感謝を伝えることができていないマネージャーは、送別の時のスピーチを上手に活用した方がいい。

これが今回の話の趣旨である。

そして、その際に本人に感謝を伝えるだけでなく、「そういうことにマネージャーは感謝を覚えるのだ」「そういうところまでマネージャーは見ているのだ」ということを残ったメンバーに知ってもらうことも「狙って」いく。

(ここでは冗談めかして「狙って」と書いているけれど、本当に「狙う」のではなく、あくまでも「そうなったらいいな」くらいの感じでいい。大抵の物事と一緒で「狙った」ものは上手くいかないからである)

敢えて対処していないだけなのに…

自分が思っている以上に、メンバーはマネージャーが日々の状況について分かっていることを理解していない、というのがこの話の背景にはある。

(これは僕の性格やマネジメントスタイルもあるのかもしれないけれど)、マネージャーというのは全ての事象に対処することが最善であるとは考えていないから、ある程度の事象は見て見ぬふりをしているだけなのだけれど、多くのメンバーは「そもそも気付いていない」と侮っていることが多いのである。

だから「そうじゃないよ」ということをスピーチの中で表明する。

裏方仕事への感謝

例えば感謝。

異動するメンバーが見えないところでチームの為に動いてくれていたことについて感謝をする。

そして「こういう良い所があった」というような、表には出ない裏方での仕事についての貢献を具体的に称える。

もちろん送別なので、全体的なトーンはポジティブな感じで。

これができればスピーチの目的は達している。

メンバーはマネージャーをナメている

マネージャーを長くやっていて思うのは、メンバーによる上位者への不信感である。

不信感というと言葉は強いかもしれないけれど、侮りというか、ナメているというか、とにかくマネージャーというものは平場で起こっている現実を理解していないというような感覚を持っているような気がする。

そして、そのようなタイプのマネージャーが実在することも事実である。

上っ面だけを理解した気になって、表面だけを掬い取って褒めたり感謝したりするのは、その場はそれっぽい雰囲気になったとしても、チームに悪影響を与える公算が大きい。

でも当のマネージャーは気付いていない。

だから、メンバーはマネージャーの言葉をあまり信用していない。

それが前提条件としてあるような気がしている。

「あんたは分かっていない」という話型

確かにマネージャーには見えない部分もある。

本当の本当の部分、現場での瞬間的な事象については、当事者にしかわからないことは確かにある。

でも、同時にメンバーには見えていない部分もあるのだ。

メンバーの視点というのは残念ながらとても低いことが多くて、そして感情的かつ瞬間的に反応しがちである。

本意はそこにないのにな、と思うことも多いけれど、一旦思い込むとそれが真実であると決めてかかってしまう。

一言で言うと、視野が狭いのである。

「私にはわかっていて、マネージャーにはわかっていない」という話型を取ることで、マウンティングしようとするのが彼ら(彼女ら)の一般的なスタイルであるのだ。

いやいや、その程度わかっているぜ?

確かにそのような側面があることは否定しない。

でもそれだけではない。

ナメてもらっては困る。

その事実を「ここぞ」という時に出す。

逆に「お前らには見えていないだろうけれど、オレには見えている」ということをきちんとした形で表に出す。

この出し方は若干テクニカルな部分があるけれど、本心を言えば大体の場合、(メンバーはそもそもマネージャーを侮っているので)、上手くいくものである。

そしてそれはそこにいるメンバーへの皮肉にもなるのだ。

時にはオフィシャルに話そう

異動するメンバーのタイプにもよるけれど、そのメンバーが地味で献身的なタイプの場合(そして「分かり易い」活躍をしていない場合)、その長所を上げることで、そうではないメンバーに対するメッセージにもなる。

チームというのは、目立つ奴だけで出来ている訳ではない。

それをきちんと表明する。

機会としてはあまり多くはないことだと思うけれど、オフィシャルな場で、オフィシャルなスピーチをする場面があれば、それを利用しない手はない。

それではまた。

いい仕事をしましょう。


あとがき

人前に立って話すことが昔から得意ではありません。

でも、マネージャーという仕事上、そういう役回りが回ってくることがあります。

そういう時に大事なのは、上手に話そうとすることではなく、本心を伝えようとすることだと僕は思っています。

これは営業にも通じることですが、どもりや詰まりみたいなものは忌避されるものではなく、むしろ歓迎すべきものですらあります。

というのは、それがあることによって、「本当らしさ」が生じるからです。

淀みない言葉というのは、嘘っぽくもあります。

下手でも苦手でも、心の奥から言葉を引っ張ってくると、その思いは必ず伝わります。

そしてそれはオフィシャルな場でより効果を発揮します。

逃げずにスピーチしていきましょう。