メンタルを安定化する方法

僕たちは簡単に気分に流される生き物である

判断にはその時の気分が影響を与える。

そしてその自覚はないことが多い。

だから同じような事例であっても、その時の気分(天気や応援しているチームの勝敗などが影響を与える)によって裁判官の量刑が異なったりする。

そのような行動経済学の知見から考えると、我々のようなレベルのマネージャーであったとしても、メンタルを安定化させることは判断の安定化(一貫性)に繋がると考えることが自然である。

一方で、マネージャーが判断を求められる時は、時間的制約や情報的制約があることが多く、さらに顧客の感情が波立っていることもあるので、平常心を保つことが難しい場面が多いのも事実である。

その中で、なるべく再現性の高い判断を下す為にはどうすればいいのか?

メンタルを安定化させる為にはどうすればいいのか?

今日はそんなことを書いてみる。

経験を積むことが余裕に繋がる

メンタルが安定化する、というのは、僕のイメージでは「余裕がある」ということに近い。

何らかの非常事態が起きた時にも落ち着いている人、そんな感じである。

ではどのようにすれば余裕がある状態に到達できるのだろうか?

一言で言うと、「経験値」である。

たくさんの経験値を積んでおくことが、心の余裕に繋がり、メンタルの安定化に繋がり、判断の一貫性に繋がる。

どのような突発的な事象に対しても、いつか来た道「またこのパターンね」と思えれば、必要以上に焦ることはなくなる(もちろん多少は焦るけれど…)。

失敗も成功も、あらゆるパターンを体験しておくと、それはその時にはとても大変であるけれど、必ずその人の糧になるのだ。

たくさんの引き出しを持っておいて、その引き出しの中にもたくさんの解決方法を持っておいて、その中から数個引っ張り出してくれば解決できる。

それが「余裕」である。

若い頃の苦労は…

もう少し分かり易く例えると、「村の長老」みたいな感じかもしれない。

古代であれば、長生きしているということは、たくさんの経験をしているということと同義だっただろうし、そんなたくさんの経験(その中にはきっと危機的状況もあっただろう)をしても生き延びている、その事実がその人を長老たらしめるわけである。

ただ物知りであるとか、人望があるとか(もちろんそれも重要な要素だとは思うけれど)、それだけではなくて、経験が多い、というのが共同体を維持する為には必要なことだったのだろうと僕は思う。

例えば山火事が起きたとか、噴火したとか、大地震が来たとか、そのような危機的状況においても、経験値があれば(何もないよりは)落ち着いて行動ができるし、対処の仕方、事態の展開の行方がわかる。

だから、できるだけ駆け出しの時にたくさんの経験をしておくべきである、というとてもつまらなく当たり前の結論が今日の話となる。

「若い頃の苦労は買ってでもせよ」みたいな、おじさん的な話が、本当に重要なのである。

ルーティンにする範囲を広げてしまう

「いやいや、もっと手っ取り早く安定したメンタルを手に入れたいんですよ!」

その気持ちはよくわかる。

でも、たぶん経験を積む以上にメンタルを安定化させる方法はない

新しい職場に来た日を思い返して貰えば、この感覚が分かると思う。

最初は何事にもドキドキしたはずだし、おっかなびっくり仕事をしていたはずだ。

でも数か月もすると、そんなことは何でもないこと(ルーティン)になる

今尚ルーティン業務をドキドキしながらやっている人は少ないだろう。

マネジメントも同様である。

その幅と種類を広げるだけである。

マネジメントにはマネジメントの経験の種類がある。

それはプレイヤーで経験してきたものとは(少し)異なる。

その経験値を貯めていくしかない。

血を流さなければ、力はつかない

特に駆け出しの頃には、意識的にその機会に立ち会う、飛び込んでいくという気概が必要である。

冷汗をかきながら、そのリスクを自分で受け止めながら、それでも決断する、という行為。

そして決断の成り行き、行く末も含めて、自分で背負っていくという覚悟。

リスクを負い過ぎてもいけないし、負わな過ぎてもいけない

どこまでメンバーの話を信用するか、どこまでメンバーに任せるか、それによってどのような反応が巻き起こるか、その際に自分の上司はどのようなことを言ってくるか、そのようなことを勘案しながら、判断を行っていく。

もちろんその中には成功も失敗もあるだろう。

そしてその成功と失敗の中にもグラデーションがあるだろう。

それを自分の体に刻み込む。

適切な血を流す。

そうやって身に付けたものしか、あなたの本当の力にはならない。

当たり前の結論

僕にも様々な後悔がある。

今だったらもっと適切に対処できたはずの事象、感情的になって暴言を吐いてしまった自分の器の小ささ、腰が引け、逃げ出してしまった弱さ、その全てに顔から火が出るほどの恥ずかしさを覚えるけれど、それがあったからこそ、もう二度とそういう思いをしたくないとも思えるのである。

あらゆる経験が糧になる。

それ以上嫌なことは少なくなる。

だから余裕が出るし、メンタルも安定化する。

つまらない話になってしまった。

それではまた。

いい仕事をしましょう。


あとがき

何事においても、初任者のうちにたくさんの失敗をしておいた方がその後の伸びは大きくなります。

特にマネジメントにおいては、「判断」が重要であるので、それをできるだけリスクの小さい初期の頃から経験しておくことはとても大事なことです。

残念ながら、最短距離はないし、最適解はありません。

でも、そこでの苦闘の経験は、必ずあなたの力となります。

苦難に飛び込んでいきましょう。