思いをぶつけることと相手を動かすことは違う

手段と目的

自分の思いを発露したところで、相手が動くとは限らない。

そんなことは営業をやっていれば当たり前のことである。

こちら側の論理向こう側の論理とは異なる。

それぞれの言い分がある。

では双方の考え方が折り合わない時にどうすればいいのか?

思いをぶつけるのも1つの方法ではあると思う。

でも、それよりも力点を置くべきは、「相手を動かす」という目的の方である。

「思いをぶつける」のは手段に過ぎない。

この違いがわかるかどうか。

それがマネージャーには必要なスキルである。

よくわからないかもしれない人もいるかもしれないけれど、今日はそんな話をしていこうと思う。

日本人特有なのか?

「思いを吐露すれば、相手が察してくれて、事態が変わっていくはずだ」

このように考える人が多いように感じている。

これは「怒り」という場面でよく見られる光景である。

自分の機嫌は自分で取る、ではないけれど、「怒りを示せば、周りが動く」という考えは僕からしたらとても幼稚なもので、大事なのは怒りという感情を出すことではないし、それによって変わったように見える相手の行動は、ただ「めんどくせえなあ…」と思われているだけであることを、もっと上位者は自覚すべきである。

これは怒り以外の感情も同様である。

「心の奥底にあるものを出す=凄いこと=相手は動いてくれるはずだ」というような考えを持っている人は、今すぐに考えを改めた方が良い。

マネジメント業をしている人であれば尚更である。

これは実力をつける機会を単純に逸しているからである。

泣けば大人が動いてくれるという甘え

日本社会においては、まだまだ「上位者の言うことは絶対っ!」という王様ゲーム的なノリが残存している。

もちろん適切な敬意は必要である。

ただ、それを自分の実力や人望のおかげであると勘違いしている人も多いので、それはできるだけ若いうちに改めた方が良い。

それは「甘え」に過ぎないからだ。

幼児が駄々を捏ねるように、泣き叫ぶように、大きな声を上げれば大人が動いてくれる、というのはもうやめにしないか?

それによって大人が割を食う社会を変えていかないか?

僕はそんな風に考えている。

大事なのは行動を変えること

これは「言葉を届かせる」ということに対する意識の差だと僕は思っている。

思いの発露は相手の表面をなぞるだけである。

そこから奥には到達しない。

表面的には従ったような感じは出すけれど、腹落ちはしておらず、行動は変わらない。

これでは当初の目的が叶ったとは言えない。

大事なのは(目的だったのは)、「行動を変える」ことだろう?

でも、起こりうる事態は、「面倒くさい上司」というラベルを張られて、その後のコミュニケーションは表面的なものに留まる、という最悪の事態である。

面従腹背状態。

でも行動は何も変わらない。

結果として成果は上がらない。

これでは何のために感情を出したのか?

それをよくよく考えた方が良いと思う。

腹落ちさせるスキル=マネジメントスキル

先述した通り、思いをぶつけるのは1つの方法に過ぎない。

それが効果的な相手であれば、手段の1つとしてそれを使えばいい。

しかしながら、多くの人はそんなに冷静に考えて、思いの吐露という手段を使っている訳ではない。

ただ単に感情に振り回されているだけである。

僕たちマネージャーの仕事はあらゆる手を使って、部下の行動を「改善」していくことである。

こう書くと、とても嫌らしい感じがするけれど、実際にそうなのだから仕方がない。

でも「改善」というと偉そうなので、違った書き方をすると、望ましい方向へ(知らず知らずのうちに)誘導する、みたいなイメージになるのかもしれない。

「腹落ちした」という状態に何とか持っていくこと。

それをマネジメントスキルと僕は呼びたいと思う。

組織の論理はもう通らない

現代は多様性の時代だと言われる。

確かに多様な価値観を持った人達が働いているし、ヨコの情報というか、それぞれがそれぞれの情報を入手するのも容易になっている。

僕たちは組織に所属しているので、何となく組織の論理は通るものだという意識があるのかもしれないけれど、そんなものは現代には通用しない。

世の中にたくさんある論理の1つに過ぎないのだ。

その相対的な価値をきちんと考えた方が良い。

お前の論理は?

そして求められるのは、マネージャー個人の価値観の正当性や首尾一貫性である。

組織の論理はわかった。

ではお前の論理はどうなのだ?

ということをマネージャーは日々問われ続けるのが現代という時代である。

抱えた感情を発露すれば、周りが慮って、動いてくれるなんてことは起きない。

仮に動いてくれているように見えても、それは「はいはい…」という諦めの気持ちを抱えたままの動きに過ぎない。

それをマネジメントを行う人間であればきちんと分けて考えるべきなのである。

大人になりましょう

世間の常識は変わっていく。

感覚も動いていく。

では、企業はどうなのだろうか?

僕たちは、まだ旧態依然の組織に属している。

昔の論理のまま、マネジメントしようとしている。

それではもうダメなのだと思う。

マネージャーなど、ただの1個人に過ぎない。

子供じみた感情など、有害なものに過ぎない。

もっと大人になろう。

言葉を相手に届かせよう。

それではまた。

いい仕事をしましょう。


あとがき

感情を出したもん勝ち、みたいな世の中になってきているような気がしています。

気のせいかもしれませんが、図々しければ図々しい程、生きやすい世の中になっているのではないか?

僕は偏屈なので、そんな風に感じています。

別にその人が不機嫌だろうが、ご機嫌だろうが、僕には知ったこっちゃないのですが、どうやら上位者の感情を忖度し慮るのが、日本社会では当たり前のもののようです。

僕にはこのような振る舞いはとても子供じみたものに思われるのですが、そう思う人は少数派なのでしょう。

自分の機嫌は自分で取るしかありません。

せめてそういう人にはならないように気をつけていきましょう。