管理職になってはいけない人
「取り敢えず」マネージャーをやらせてみることの罪
初任マネージャーの中には、明らかに「この人は管理職にしちゃいけないよな…」という人がいる。
ここにはプレイヤーとマネージャーの仕事は大きく異なるものであるという概念の欠如と、「他に適任者がいない」という理由が潜んでいる、と僕は思っている。
この2つの話は実は一緒のことを言っていて、プレイヤーとして優秀な人でないとマネージャーにする理由(口実)がない、でもその人がマネージャーとして優秀(になる)かどうかはあまり考慮していない、ということなのだろうと思う。
要は、フィルターが「プレイヤーとして優秀かどうか」ということでしか機能していないのである。
マネージャーとして仕事ができるかどうかは、実際に仕事をさせてみてから(事後的に)判断すればいい、そう考えているように見える。
それは確かに一理ある。
でも、それによって職場は確実に壊れていく。
今日はそんな話だ。
アドレナリンとセロトニン
狩猟民族と農耕民族。
プレイヤーとマネージャーはそのくらいの違いがある(営業職の場合)。
プレイヤーはアドレナリン的というか、感情を波立たせながら、動作も大きく俊敏であることが求められるし、実際にそのタイプの方が成果は上がり易い。
一方マネージャーはセロトニン的というか、落ち着いた状況で、時間軸を長めに取りながら判断していくことが求められるし、その方がチームは安定し、長期的には成果が上がり易い。
この切り替えが上手にできるかどうか、それも早めにできるかどうかが、マネージャーとしての成功に繋がるのだ。
でも僕から見える初任マネージャーの多くは、この切り替えに難儀しているようである。
というか、難儀すらしていないように見える。
ここがたぶん問題なのだろう。
マネージャーも試用期間が必要では?
僕は最近、「マネージャーをマネージする人」が必要なのではないか、と思っている。
これは「適切に叱れる人」と言い換えてもいい。
要は、世の中から「大人」たちがいなくなって、ハラスメント警察が目を光らせている環境においては、職場においてきちんと指導したり叱ったりできる人が殆どいなくなってしまっているのである。
特に初任マネージャーというのは、マネージャーとしての経験が殆どない訳であるから、そこに対する指導や教育(特にOJT的なもの)は不可欠であると思うのに、簡単な研修だけやって後は「我流」に任せているのが現状である(これは新人を野放しにしているのと何が違うのだろうか?)。
インターンシップとまでは言わなくても、「見極め期間」みたいなものを設けて、その期間を無事にクリアできたものをマネージャーとして認める、それ以外は排除する(というかスペシャルなプレイヤーとしての道を示す)、そんなことが必要であると思うのである。
明らかに不適格な人だけでも排除しよう
自分のことを振り返っても、当時は悩みがあっても相談できる人はいなかったし、自分の振る舞いが正しいことなのかを評価することもできなかったので、それがもう少しケアされていれば仕事もし易かったのではないか、と思うのだ。
もちろん、ある程度時間を経ないと理解できないものがマネジメントである、というのも事実であるから、その「プレ・マネージャー期間」みたいなものだけで判断するのは拙速であるとは思うけれど、「明らかに向いていない人」はそれによって排除できるような気がしている。
そうすれば、組織内における「おかしなマネージャー」の割合が少しは減ると思うし、結果として、全体のパフォーマンスの向上にも繋がると思うのだ(上記した教育のコストは十分に回収できるはずである)。
マネジメントは自己流でOK?
もう少し議論を進めると、これは「マネージャーをマネージできる人」が殆どいない、ということにも繋がってくる。
要は、マネジメントについて体系的に理解したり、指導したりできるような人材は殆どいない、ということである(当社だけかもしれないが)。
「マネジメントなんて自己流でどうにかなるでしょ?」ということを直接的には口にせずとも、実態はそのようになっているのが現状である。
適性の見極めを
確かに、マネジメントというのは計量的に評価しづらい。
そして計量的に評価しづらいものは客観性を担保しづらい。
それはそうだと思う。
ただ、「明らかに」向いていない人はすぐにわかるはずであるし、そういう人をマネージャーから排除するだけでも、組織の力は向上していくように思う。
現在でもある程度の期間を経た際に人事的に降格する場合はあるけれど、それでは遅すぎるのだ。
もっと短い期間、例えば1年くらいを試用期間として定めて、適性を見極める。
もしそれが短すぎるとするなら、マネージャーをマネージする人が責任を持って指導を続ける。
そんな対応が必要であるような気がしている。
組織全体のマネジメント力を向上させよう
ちょっと前であれば、本人の素養がふるいにかけられて、そういう人は自然と選別されていたはずであるけれど、そもそもの人材の質が落ちてきている状況においては、ある程度制度として対応せざるを得ないのではないか?
それはある種酷なものではあるから、それを補う教育制度みたいなものをセットにして、組織全体のマネジメント力向上を目指していいのではないか、と僕は考えている。
このブログがもしその一助になれば、それほどありがたいことはない。
それではまた。
いい仕事をしましょう。
あとがき
今日の話は免許制度みたいなものだと思っています。
自動車の運転と同じように、マネジメントにも教習期間は必要ですし、初心者マークも必要です。
もっと言うと、更新試験みたいなものや返納制度みたいなものもきっと必要なのだと思います。
明らかにマネージャーに向いていない人を排除するだけでも、働く環境は良くなるはずです。
「お前は不適格だ!」と言われないよう、ブレーキとアクセルを踏み間違えないよう、日々精進していきましょう。