任せるスキル

昔の方が忙しかった

「業務が回らなくて大変だ!」

同僚のマネージャーからもよく聞く愚痴である。

その度にいつもこう思う。

「営業主任の時の方が忙しかったな」と。

僕は課長になってから、途端に暇になった。

それは仕事において能動的に動く割合が極端に減ったからだと思う(管理職の仕事の大半は受動的なものだ)。

そして、多くの仕事を部下に任せているからだと思う。

「忙しくて大変だ」と仰る管理職の方は、一回騙されたと思って、徹底的に部下に仕事を任せてみると良いと思う。

そうすれば管理職という仕事のイメージがガラッと変わるはずだ。

今日はそんな話をしていく。

やらなくていい仕事を極限までやめる

「部下に任せる」という話をすると、とにかく自分の仕事を部下にぶん投げる人がいるけれど、今回の話はちょっと違う。

まず大事なことは、「やらなくていい仕事をやめること」である。

管理職になってから思うことだけれど、本当に無駄な仕事というのは山ほどある。

それを「こんなにやめて大丈夫かな…」と思うところまでやめる。

極限くらいまで。

「いつか使うかもしれない」と思うものは使わない

その時の意識として、「必要ならまたやればいいか」という気持ちでいることが大事である。

これは部屋の片づけと一緒で、「いつか使うかもしれないから…」という程度のものは捨ててしまって、必要なら後で買えばいい、というくらいの気持ちで臨むということである。

そして部屋の片づけと同じで、だいたいそう思ったものが復活することはない。

そのまま不必要なままである。

自分の仕事が減れば部下の仕事も減る

これでまずは自分の仕事を極限まで減らす。

この過程で、通常であれば、部下の仕事も同時に減るはずである。

それはなぜか?

それは報告物や、報告物に関するやり取りが減るからである。

全部覚えておく必要はないと割り切る

この際に大事なのは、「紙ベースをやめる」という意識である。

管理する側としては、全ての部下の案件や状態を覚えていられないので、確かに紙があるほうが後に思い出すことができるので楽ではある。

また、自分の上司からの咄嗟の質問や依頼事項にも回答しやすいのも事実である。

でも、これは思い切ってやめるべきだ。

多少の恥をかいたり、案件を忘れてしまったりしてもいい。

薄っすらと広く、だいたい覚えていればいい、くらいの割り切りをする。

部下の案件や状態をマネージャーが管理する必要はない

これはマイクロマネジメントとは真逆の考え方だ。

未だに昭和世代のマネージャーは「部下の案件は全て課長が知っておくべきである」という時代錯誤の考え方を持っているけれど、それは早々にやめたほうがいい。

必要なら部下に確認すればいいのだ。

ハードディスクに全て保存しておくのではなく、必要な時にクラウドから取り出せばいいのだ。

そして余ったキャパシティを、本質的な仕事に充てるようにする。

これを履き違えているマネージャーはとても多い。

繰り返す。

部下の案件や状態をマネージャーが管理する必要はない。

これで管理負担は極小化する。

部下は放っておくととんでもないことをしでかす?

でも多くのマネージャーはこれができない。

それはなぜか?

不安だからである。

部下は放っておくととんでもないことをしでかす、と思っているからである。

それは一理ある。

部下は確かにとんでもないことをやらかす。

でも毎回ではない。

この意識が大事である。

小さなミスは問題ない

これはリスクマネジメントにも通じてくる話だけれど、大きなミスというのはそんなに頻度が高くない。

でも1回起きるとダメージが大きい。

だからヘッジをする。

例えば、営業であれば、そのようなリスクが高いメンバーには重要な顧客を任せない、ある程度マネージャーが監視しておく、などの対策を行う。

これは逆の意味では、小さなミスは許容するということである。

小さなミスはマネージャーがケツを拭けばいい。

リカバリーすればいい。

そのくらいの度量を持つことが必要なのである。

任せないと部下は育たない

業務が回らないと言っているマネージャーの大半は、部下に仕事を任せていない。

仕事を任せていないから、部下が育たない。

部下が育たないから、更に仕事を任せられない。

こういうスパイラルになっている。

先回りすることが良いことだとは限らない

この流れをどこかで思い切って変える必要がある。

その際に生じるミスは許容すべきである。

というか、それこそがマネージャーの本当の仕事なのである。

部下がミスをするのを未然に防ぐのはマネージャーの仕事の本質ではない。

ミスが起きた後に対処するのがマネージャーの仕事の本質である。

それを履き違えてはいけない。

余った体力を部下に注ぐ

そしてその際に大事なのは、部下が簡単に相談に来るような状態を保っておく、ということである。

業務を削り、部下に仕事を任せると、マネージャーは暇になる。

そしてその暇になった部分で、部下からの相談に時間を割く。

それは指導ではない。

「お悩み相談会」みたいな感じである。

どんどん暇になる。だがそれでいい

任せるのは放任とは違う。

でもニュアンスは近い。

仕事の主導権は部下にあって、マネージャーはただの壁打ちの相手である。

自分がハンドリングするのではなく、あくまでも部下にハンドリングをさせる。

これを繰り返すことで、部下は成長し、チーム力は上がる。

結果としてマネージャーはどんどん暇になる(そのうち相談にすら来なくなる)。

これでいいのである。

それではまた。

いい仕事をしましょう。


あとがき

性善説性悪説

このブログを書き始めた頃に書いた話題ですが、性善説でマネジメントすることができるマネージャーは未だに多くないと感じています。

もちろん見極めは大事ですが、大体の部下は放っておいても大丈夫です。

サボる者もいますが、それは成果できちんと評価すればいいだけの話です。

どんどん部下に任せていきましょう。