若者は「現役選手」しか尊敬しない
良質のコメディ
僕は本を読むのが好きだ。
今回は最近読んだ本の中からマネジメントにも役に立つ1冊をご紹介する。
それは「先生、どうか皆の前でほめないで下さい(金間大介著、東洋経済新報社)」である。
詳細は是非読んで頂きたいのだが、僕なりにこの本を一言で要約すると「良質のコメディ」ということになる。
本の最初の方では「若者」を外部にいる「他者」として面白おかしく描いており、読者である自分も「そうそう、そうだよね」と「あるあるネタ」みたいに楽しく読んでいるのだけれど、そのような若者たちの態度を生み出しているのは他ならぬ「自分を含めた大人」である、ということに気づきハッとする構造になっているのだ。
これは僕が常日頃考えている概念(「批判だけでは何も変わらないぜ?(共犯者的思考論)」)に近い。
そして最後の方に書かれている「若者は『現役選手』しか尊敬しない」という一節に、共感するとともに、背筋が伸びる想いがする。
今日はそんなことを書いていく。
チームが受け身なのはそのチームを作っているマネージャーにも問題がある
僕は仕事柄、先輩・同僚・後輩のマネージャーから様々な愚痴を聞くことが多い。
その中で多いのは、「若手が考えない(受け身である)」というものである。
その度に、僕は「それはそのようなチームを作っているあなたにも問題があるのでは?」と思う(そして実際にそう言うこともある)。
考える若手をマネジメントするのは、考えない若手をマネジメントするよりも難しい
これは以前ブログに書いたこと(イエスマンを望むマネジメント)でもある。
「考える若手」をマネジメントするのは、「考えない若手」をマネジメントするよりも難しい。
それは考える若手は様々な意見を持ち、マネージャーの言うことに必ずしも賛同しない可能性があるからである。
そして、現代という時代は、権威よりも本質を重んじる。
見せかけの課長、ハリボテのマネージャーでは、そのような考える若手を納得させ、前向きに行動させることはできないのである。
それをわからずに、ただないものねだりをしているマネージャー達を見て、僕は暗い気持ちになる。
そしてこう思う。
「残念ながら、『考える若手』はあなたに従うことはないですよ」と。
過去よりも現在と未来
これが今回のテーマの話に繋がってくる。
それは「若者は『現役選手』しか尊敬しない」ということである。
これは端的に普段から僕が言いたいことを纏めてくれている。
過去の栄光や、肩書に、若手は何の価値も置いていない。
単純に「今あなたは何ができるのか?」に彼(彼女)らは興味があるのである。
おじさん達は、過去の武勇伝を得意げに話すのだけれど、それで彼(彼女)らが尊敬の念を持つことはない。
「それはわかった。ではその経験を活かして、今日あなたは何に挑戦するのですか?」と彼(彼女)らは思っているのである。
これを僕たちマネージャーは忘れてはならない。
僕たち自身が挑戦し、失敗し、再挑戦する、この姿を見せることが必要なのだ。
席に座って、「ご苦労!ご苦労!」と言っているだけでは、信任は得られないのである。
内部化すること
これは「プレイングマネージャーになりなさい」ということを言っている訳ではない。
ニュアンスが難しいのだけれど、プレイングマネージャーはプレイングマネージャーで問題点がたくさんある(それらについては別ブログを参照頂きたい)。
そうではなく、大事なのは「内部化する」ということである。
若手を他者として突き放すのではなく、若手たちがそのように思考したり行動したりするのは、自分がそのようなことを促しているのかもしれない、と考えること。
「外部」として排除するのではなく、「内部」として包摂して考えること。
これが大事なのだ。
あなたはできていますか?
例えば、自分よりも偉い人達がたくさん集まる会議で、あなたは発言を行っているだろうか?
もっと言うと、会議の流れが自分の意見とは違う方向に進んでいて、それが会社の為にならないことがはっきりとわかる状況下で、あなたは反対意見を述べられるだろうか?
明らかにその行為は「空気」を乱すものであるが、それでもそれを実践できているだろうか?
これと「若手が考えない」のと何が違うのだろう?
あなたはきっと、訳知り顔で、「そういうことじゃないんだよ」と言うと思う。
「大人っていうのはそんな甘いもんじゃない」なんてことを偉そうに宣うのだと思う。
でも同じなのだ。
あなたが意見を述べず、裏でただ愚痴るだけであることを、あなたの部下はよく見ている。
あなたは普段部下に意見を求めているにも関わらず、自分が「現役選手」の立場になると、途端にショボいプレーしかしなくなる。
それなのに、部下には凄いプレーを求める。
そんなのナンセンスだ。
超ダサい。
あなたは見抜かれている
上司には意見を言うことなく、ただヘラヘラ笑っているだけ。
間違っていることに間違っていると言えない中間管理職。
クソみたいな命令を、クソみたいな命令のまま伝えることしかできない九官鳥。
それを彼(彼女)らは見抜いている。
露骨には表現しないだろう。
でも、それが事実なのだ。
リスクを取るのが現役選手の条件
僕たちは「他責」にせず、自分達ができることを実践していくことでしか、世界を変えていくことはできない。
あなたも(もちろん僕も)その当事者なのだ。
リスクを取ろう。
それが「現役選手」であることの条件である。
それではまた。
いい仕事をしましょう。
あとがき
自律的なチームについてはこのブログで何度も言及していることですが、本当に自律的なチームを作りたいなら、マネージャーにもある程度の覚悟が必要となります。
あらゆる物事はトレードオフで、全てを手にすることはできません。
あなたのチームを自律的にするにはあなた自身が自律的に行動するしかなくて、でもあなた自身が自律的に行動すると、残念ながら現在の日本組織ではネガティブに受け止められることになるでしょう。
それは避けたい。
それなら、現在のあなたの行動に倣い、あなたのチームが非自律的(受動的)になるのは仕方ないのです。
他人の行動を変えるのは難しい(不可能?)ですが、自分の行動は変えることができます。
まずは自らリスクを取っていきましょう。