口語と文語

UnsplashAnne Nygårdが撮影した写真

文章の割合多めで

皆さんは部下に説明をする時、口頭で説明している、文章で説明している、どちらだろうか?

僕は両方を混ぜ合わせて使っている。

もう少し分かり易く書くなら、たぶん他のマネージャー達よりは多めに文章を用いて説明をしているような気がする。

僕から見える殆どのマネージャーは、口頭が9割・文章が1割(いやもっと少ないかもしれない)くらいで、僕の場合は口頭が7割・文章が3割くらいと言ったら少しは想像しやすいだろうか。

口頭で言えば、話は伝わる。

でも、それだけでは深くまでは行けない。

今日はそんなことを書いていく。

証拠が残ってしまうのはリスクではある

多くのマネージャーが文章に落とすことを嫌がるのは、エビデンスが残ってしまうから、であるような気がしている。

これは僕だって同様ではある。

会社の意向と異なることなんてものを書いた日には、それが証拠として残ってしまうから。

だからできるだけ口頭でのコミュニケーションをする。

その気持ちはわからないではない。

ただ、口頭での話というのは残らないのである。

口頭では部下に伝わらない(もしくは伝わるのに物凄く時間がかかる)

もちろん、何度も何度も繰り返すことで、徐々に浸透はしていく。

ただ、残念ながら、多くの部下というのは、そこまで行くのにとても時間がかかるし、下手をすると、行かない場合だってある

そして言い続けていると、こちらだってだんだん嫌になってくる(飽きてもくる)。

だからある程度きちんと伝えたいものは文章の形にして残しておいた方がいい。

それが今回の話の趣旨である。

あなたの伝えたいことは、伝えるに値するものなのか?

文章に落とすことの利点は、内容を客観的に見られるようになる点である。

ある程度自分の中でも煮詰めないと、文語化するのは難しい作業でもある。

あらゆる仕事において「言語化」が叫ばれるのは、この文章に落とす作業を通過すると、思考がシャープになるからだと僕は思っている。

本当に伝えるべき内容(強度)を持ったものなのかを、客観的に査定できるようになること。

それが文章化のメリットである。

文章は自分のペースで読める

これは受け手側についても同様である。

口頭で話されたものよりも、文章で書かれたものの方が、自分のペースを確保し易い。

そんなの当たり前じゃないか、と仰る方もいるかもしれない。

でも、これが結構重要なことなのだ。

刺さる言葉は成長の段階によって変わっていく

「刺さる言葉」というのは、受け手の状態に大きく左右される。

そして成長の段階に応じて、「刺さる言葉」も変わっていく。

その時に適切な言葉をタイミング良く口語で出すというのは結構難しいことであるのだ。

それなら、時制を超えて、あらゆる言葉を文章に残しておく。

その時々によって、読み返してもらうことで、以前には引っかからなかった言葉が引っかかるようになる。

それが文章に落とすことの効用である。

1on1を文章化する

僕は1on1でダラダラ話したことの中から、面白いと思ったアイディアを文章に落とすことが多い。

もちろん文章に落とすまでに、色々なことを考え、自分なりのエッセンスを入れて、その精度を高めていく。

文章化する間にも、部下とディスカッションを行い、「これってこんな感じ?」みたいにニュアンスを修正していく。

すると、比較的面白いものが出来る。

思想や価値観を伝える

部下との信頼関係が確立できていない状態だと、いくら良いものを書いたとしても、読まれもしないのも事実であるけれど、それができてくると、「読み物」として読まれるようになる。

中にはファイリングをしてくれる部下も現れるようになる。

そしてコンテンツ自体ももちろん大事なのだけれど、そこに宿る思想や価値観みたいなものが伝わるというのが結構大事なことだとも僕は思うのだ。

マネージャーが何を考えているのか?

どんなことを大事にしているのか?

それは口頭で言うよりも、文章化した方が深く伝わる。

だから面倒でも、時々は文章化しておくといい。

僕はそんな風に考えている。

覚悟は部下に伝わる

もちろんそれなりのリスクはある。

先程も書いたようにエビデンスとしてそれが残ってしまうから。

そういう意味では一定の節度は必要だ。

ただ、リスクを負った文章というのは、裏を変えれば真剣であるということなのである。

その真剣さは部下に伝わる。

リスクを負った者の覚悟というのは、確実に部下に伝わる。

その繰り返しが、チームの成長に繋がるのだ。

過程の言葉を

文章化するにあたって1つ注意点を挙げるとするなら、きちんとした言葉にし過ぎない、ということだと思う。

ある程度生っぽい方が好ましい。

できれば口語と文語の間くらいの文体概念を抽象化する過程の言葉、それくらいで表現できると良いような気がしている。

考える余白がある文章というか。

完成品はいらない

官僚的・システマティックな文章なら、書いても意味がない。

先程も書いたように、マネージャーの体温が伝わることが重要なのだ。

それも「過程」「仮説」の文章であると尚良いと思う。

「完成品」は必ずしも望ましくない。

思考の過程も含めて、その背景にあるイメージも含めて、伝えられるようになると、文章化するメリットを享受できるようになるだろう。

あまりやったことがない方は、まずA41枚で表現してみることをお勧めします。

それではまた。

いい仕事をしましょう。


あとがき

自分が間違えた時に部下に謝るのが苦手というマネージャーの方には、文章で謝ることをお勧めします。

エビデンスが残るから嫌だ、という気持ちを抑えて真摯に自分の反省の気持ち文章に落とすことで、思いもかけない効果を生みます。

スーパードライな僕が人間を嫌いになり切れないのは、最後の最後の部分で誰よりも他者を信じているからだと思います。

真剣なものは、真剣に伝わります。

怖がらずに、文章化していきましょう。