複利のマネジメント

UnsplashIsaac Smithが撮影した写真

線形と非線形の言い換え

線形と非線形。

このブログの初期から僕が言っていることである。

線形のマネジメントではなく、非線形のマネジメントを。

それをもう少し分かり易く言い換えるなら、単利ではなく複利でマネジメントを考える、ということを思いついたので、今日はそんなことを書いていく。

元本+利息=新しい元本

単利というのは、預金の「当初元本」に対してのみ利息が付くことをいう。

一方、複利というのは、前回までの利息を含めた「元利金」に対して利息が付くことをいう。

違いが分かるだろうか。

ミソは、今回得られた利息が次の元本に組み入れられ、「新しい元本」になる点にある。

仕事の累積

単利であれば、毎期の努力は一旦リセットされて、次の決算期が始まっていく。

しかしながら、複利であれば、毎期の努力が翌期のベースに加算されて、次の決算期が始まるのである。

何を当たり前のことを、という声が聞こえてくる。

まあ確かに。

それはたぶんどのマネージャーでもやっていることだろう。

では、これが更に次の期、そのまた次の期、と繰り返されていったら?

「その乖離、上昇の幅を考えて仕事ができているだろうか?」というのが今回僕が言いたいことなのである。

もう少し詳しく書いていく。

複利は想像しづらい

アインシュタインは、複利のことを「人類最大の発明」「宇宙で最も偉大な力」と呼んだ(らしい)。

それくらい複利というのはインパクトがある概念である。

でも、実感しづらい。

人間の想像力ではそこまで到達できない。

そこに複利の面白さと困難性があるのだ。

非線形のイメージを

マネジメントにおいて、「日々の向上」というのは視認しづらい。

というか、殆ど誤差みたいなものに過ぎない。

でも、それを繰り返していくこと、昨日の本当に些細な向上を今日に繋げていくこと、はとても重要である。

そして、その時にイメージして頂きたいのは、線形(比例)ではなく、非線形なのである。

加算と乗算

昨日得られた経験を今日活かす、今日得られた経験を明日活かす、ということを言うと、比例関係をイメージする人がとても多いように感じる。

緩やかな右上がりの直線。

それはそれで別に間違っている訳ではないけれど、今回僕が言いたいのはちょっと違うのだ。

そういう意味では、「加算」というよりも「乗算」と言った方が分かり易いのかもしれない。

要は、「向上」という概念を、「昨日から1増えた」ではなく「昨日から1%増えた」というイメージに変える。

足し算の累積と、掛け算の累積の違い。

それが今回僕が言いたい「複利のマネジメント」という意味である。

複利という概念を理解する

複利というものがどれだけのインパクトを持つか、というのは、人間にはわからないもののようである。

わからない、というのは、想像できない、という意味で、たぶん人間の脳機能には、「複利」という概念が馴染みづらいのだろう。

でも、このイメージを持っておくことで、日々の仕事というのは大きく変わっていく。

「質」の概念

上手く言えないのだけれど、日本社会においては「あくせく働くことが尊い」というイメージがまだ根強く残っているように僕は感じている。

もちろん一生懸命頑張ることは大事だ。

ただ、そこに「フリ」「やってる感」が生じているなら何の意味もない。

でも、僕から見える多くの人は、この「頑張っている人=偉い」みたいな労働観に囚われて、忙しくもないのに忙しいフリをしているように見える。

気持ちはわからないではない。

百歩譲って、担当者であればまあ良しとしよう。

でも、管理職はダメだ。

量ではなく質の概念を持たなければ、絶対にダメなのである。

日々改善していくこと

ただ、「質の向上」というのは分かりづらい。

それは日次はもちろん、月次・年次でも殆どわからないくらい些細なものである。

特に部外者には全くわからないだろう。

でも、ここで諦めてはいけないのだ。

毎日のささやかな向上。

それも加算でなく乗算的な向上。

昨日得られた知見を、今日の仕事に少なからず活かすこと。

そのような毎日のアップデート。

それこそが仕事の質を高めていくのである。

写真で取ったら同じように見えるのかもしれないけれど

僕は暇そうだとよく言われる。

そして実際に暇でもある。

それはなぜかと言うと、過去にこのような日々の乗算を繰り返してきたからである。

その現在時点だけを切り取って、瞬間だけを見て、「暇そうですね」というのは、僕からすればナンセンスである。

複利効果を得られた僕のマネジメントは、効率の良い車とおんなじで、そんなにガソリンを消費しなくてもどんどん前に進んでいく。

ただ、そこには目に見えない過去からの蓄積(カイゼン)があるのである。

それを外側から見て、2両の車を比べてみて、大して変わらないな、と思っているようでは、まだまだマネージャーとしては1人前とは言えない。

そんなことを思うのである。

複利のグラフを見てみよう

「前日対比+○○」ではなく、「前日対比×○○%」というような概念を持つこと。

それを毎日繰り返して、掛け算の日数を増やしていくこと。

複利のグラフを見て貰えばわかると思うけれど、初期の頃のグラフは単利と大差はない。

でも、時間を経れば経るほど、その違いは大きくなる。

それも僕たちの想像を超えるくらいに。

毎日のちょっとしたカイゼンを。

それではまた。

いい仕事をしましょう。

あとがき

営業では1日1本多く電話をかければ、1週間で7本、1か月で20本、1年で240本の差になる、ということがよく言われます。

成約率が1%だとしても、これだけで年間で2件成約が増える訳です。

だから、1本でも多く電話をしなさい、そういうことが言われます。

今回の話はそれに加えて、電話をかけていると実際の成約件数が増えるだけでなく、経験値も併せて増えていく、ということが含まれています。

そして経験値というのは加算ではありません。

線形の電話件数だけでなく、非線形の経験値。

前者が大事ではないとは言いませんが、本当に重要なのは試行錯誤したという経験そのものです。

それを10年も繰り返せば、大きな差になります。

日々少しずつでもアップデート(ディープラーニング的な)していきましょう。