部下とどれだけ話しているか(ウエノ流1on1の心得)?
部下とサシでどのくらい話しているか?
マネジメントについて学び始めると、「部下と話す時間を確保しなさい」という教えに出会うことになると思う。
そこで改めて考えて頂きたいのが、「実際どのくらい部下と話をしているか?」ということである。
そしてこの「話」というものにも幅があって、業務内容的な会話を含めるのか、とか、挨拶はどうか、とか、それによって実際の時間は変わってくるだろう。
ただ、今回の話では、「サシで話をした時間」を「部下と話をした時間」と定義することにする。
そしてこの「サシ」には、周囲に誰もいない状況を指すことにする(要はデスクで、他のメンバーがそれぞれ座っている環境下での会話はノーカンとする)。
となると、1on1がその対象時間となる訳だ。
さて、あなたは部下とどれくらい話をしているだろうか?
自身のことを振り返りながら読んで頂けたら幸いである。
それでは始めていこう。
苦い思い出
僕は毎週1on1をやっている。
これは自身の反省から始めたものだ。
マネージャーになった当初、僕の上司(上級マネージャー)が毎週メンバー達と1on1をやっていたので、「まあオレはやらなくていいか(その分部下の時間を取るのもナンだし…)」と思っていた。
その判断は間違っていたとまでは言えないけれど、結果として良くなかったなとは思っている。
表現が難しいのだけれど、その上級マネージャーのやっていた1on1というのは、(僕からすれば)あまり意味のないもので、メンバー達もそのように感じていた種類のものだった。
もちろんやっていること自体は、今僕がやっている同じ1on1ではある。
でも、何というか、その中身が違うのである。
営業活動に関する打ち合わせだけでは足りない
営業という仕事をされている方であれば何となくお分かり頂けると思うのだけれど、現在の目標達成率がどのくらいで、残りの目標を埋めるための手元の案件がどれくらいあって、みたいな打ち合わせをすることは、よくあることだと思う。
そして当時の上級マネージャーがやっていたのはこれに近いものであった(ようだ)。
これは別に悪いものではない。
繰り返すようだが、それは営業では「あるある」ではあるから。
ただ、それだけだといけないんだよな、と今の僕は思っている。
何というか、「受け」の時間が必要なんだよな、と。
テーマを決めるのは部下
僕が考える1on1のポイントは、部下の話を「受ける」ことだと思っている。
その時の主題(テーマ)を決める権利は部下にある、というか。
僕の役割は、部下が決めたテーマに沿った適切な壁打ち役になることである。
このちょっとした違い。
話のきっかけ、口火を切るのはマネージャーではなく、部下であること。
ここに1on1のポイントがあると思っている。
コーチングは僕には難易度が高すぎる
これは「コーチング」の概念ともちょっと違う。
僕は何度もコーチングを取り入れようと努力してきたけれど、自分にはあまり合っていないなと思っている。
というのは、(僕の拙い技術では)そんなに前向きに応じてくれる部下なんていないと何度も思ったから、である。
何か話を引き出そうとしても、「ええ…」とか「まあ…」とかそんな話しか出ない(出せない)のだ。
それなら、「受け」に回って、部下が話したい時だけ話を聞けばいいのではないか、というのが僕の今の考えである。
コマ(時間枠)だけ取っておいて、話したい時は話せばいいし、話したくない時には話さなくていい、そんなイメージ。
話す順番も時間もバラバラ
メンバーによって1on1の時間はバラバラだし、同じメンバーであっても毎週面談の長さは変わる。
話す順番もバラバラだ。
部下も早く帰りたい時もあるだろうし(僕が1on1をやるのは週末の夕方だ)、そうは言っても話したい時もある(ようだ)。
始めは話したくないと思っていても、ふと話が弾む時だってある。
それをただ毎週繰り返していく。
そこに意味があるような気がしている。
自分が想像するよりも、部下は上司と話したがっている
僕が8年近く、毎週に亘って1on1を繰り返してきたことで最近わかったことが、「思ったよりも部下は上司と話をしたいと思っている」ということである。
これは僕にとってはちょっとした驚きであった。
それは何も「僕と話をしたい」ということではなくて、職場において上司という立場の人に自分の状況を理解してほしい、と多くの部下は思っているということを意味する。
そして、その機会はあまり多くないことも同時に意味している。
デスクに座りながら、それぞれの部下とそれなりに話をしていると上司側は思っているようだけれど、部下側はそうではなく、個別に、ある程度シャットアウトされた環境で、話をしたいと思っているようなのだ。
僕は昔も今も上司と1対1で話をするのは嫌いであるが…
それは僕が部下だった頃にはあまりなかった感覚ではある。
僕は「上司と話をする=数字を詰められる=嫌だ」という感覚をずっと持っていて、1on1をやるのも、「部下はきっと嫌なんだろうなあ…」と思いながらやっていた(いる)のだけれど、そうとも限らない、ということが最近わかってきたのである。
どんな部下だって存在価値を認めて欲しい。
というか、話を聞いてもらいたい。
そんな風に感じる時がある。
繰り返すことに意味がある(はず)
1on1は疲れるし、上手く話せない(苦手な)部下もいるし、意味なんてあるのだろうか、と思う時もある。
でも、振り返って、「繰り返してきてよかったな」とは思うのである。
それが何になっているのかはわからないけれど、僕はまた今週も1on1を続けていく。
それではまた。
いい仕事をしましょう。
あとがき
僕は1on1の時、会議室に移り、そこに部下全員が入れ代わり立ち代わり入ってくる、という形式を取っています。
順番もバラバラ、話す内容もバラバラです。
となると、必然的に、話は「受け」から始まる(準備ができないから)ことになります。
それは結果的には結構良いことなのではないか、というのが今日の話です。
多くのマネージャー(上司)は、自分が話の主導権を握るものだ、と(無意識であれ)考えているような気がします。
その方が、密度の濃い面談ができる、と。
ただ、僕が8年間毎週繰り返してきて思うのは、続けること、もっと言えば、「門戸がいつでも開いていること」「そこでは自分が話したいことが話せること」を部下に理解してもらうことの重要性です。
「言いたいことがあれば、何でも言ってくれ!」という上司はたくさんいますが、毎週同じ時間にその人専用の時間を取っている人はそんなに多くない、と僕は思っています。
ましてや、相手が持ってきた話題に瞬発力を持って応えられる上司なんて殆どいないはずです。
地味ですが、それがチームマネジメントの要です。
密度やコスパを意識せず、ただ続けることを意識して、ひたすらに続けていきましょう。