部下の不満はテキトーに
部下の不満に誠実に向き合うことは良いことか?
マネージャーという仕事をしていると、「よくまあこんなにも不満が言えるものだ」と思えるくらい部下からの不満を聞くものである。
不満の対象は様々あって、同僚であったり、上司であったり、職場環境であったり、使うシステムであったり、休暇であったり、不満がないものはないくらい、様々なものに対して様々な角度から不満を言ってくる。
僕も駆け出しの頃には、この種の不満に対して誠実に向き合うことが良いことだ、と盲目的に考えていたのだけれど、ある時点から「テキトーでいいんじゃね?」と思うようになった、というのが今日の話である。
経験上、不満を解決したとして、また別の不満が持ち上がるだけであり、パフォーマンスの向上に結び付かない。
もっと言えば、不満を解決しようとしたことで、更に状況が悪くなることだってあり得るのだ。
だから、解決しようとするのではなく、程々に対処すればいいのではないか、というのが現在のところの僕の考えである。
それでは始めていこう。
不満はなくならない。絶対に。
「不満を解決すれば、成果が上がるんじゃないか?」
何を隠そう、僕もそう思っていた時期があった。
でも、それは間違いだ。
というか、もう少し正確に書くなら、不満はなくならない(解決できない)。
永遠に。
絶対に。
不満というのは、1つなくなれば別の1つが持ち上がるだけのものであって、常に存在し続けるものなのである。
この認識がまず重要なことだ。
そしてその不満が常に存在する状況の中で、成果を出すためにはどうしたらいいのか、という思考に持っていくのである。
問題に対処しようとしないマネージャー?
ある程度マネージャー経験のある人であれば、まあそうだよね、という話であると思う。
でも、これを実践するとなるとなかなか難しいものである。
それは、マネージャーは問題に対処しない奴だ、という方向に矢印が向いてくることがあるから、もっと言えば、その矢印の出所が部下だけではなく、自分の上司である可能性があるから、である。
不満の解消? 成果の向上?
会社という組織に属していると、「管理職は不満を解決しなければならない」という圧力を感じることがあると思う。
問題に対処するのがマネージャーの仕事である、という暗黙の了解というか。
もちろんそれは否定しない。
「ただ、ガチで取り組まなくていいのでは?」というのが今日の話である。
こんなことを言うと批判されそうだけれど、「不満の解消」と「成果の向上」のどちらを取るかと言われたら、僕は後者を取る。
それが僕の仕事であるから。
というか、「不満の解消」というのはあくまでも手段に過ぎなくて、目的ではないから。
この辺をわかっている人は、会社の中にも多くない。
というか、混同している人が多いような気がする。
不満の影響度を見極める
不満があまりにも大きくて、それが成果の向上に多大な悪影響を及ぼしているのであれば、不満の解消は必要である。
でも、それがそこまででもなくて、愚痴に近い類のものであるのであれば、テキトーに流しながら付き合っていくことが大事であると僕は思っている。
そして、先ほどの「あのマネージャーは問題を解決しようとしない奴である問題」については、「状況を理解し、向き合う姿勢だけは見せておく」ことで対処することが有効である。
「問題を把握しているが、解決は難しい」という認識へ持っていく
表現が難しいのだけれど、矛先がマネージャーに向いてくる原因として、「あいつは何にもわかっていない」というものがあると思う。
だから、これをなくす。
「あいつは(少なくとも)わかっている」という方向に持っていく。
これが大事である。
そして、「(何らかの要因で)解決は難しいようだ」というところに着地させるのである(もちろん程度問題ではあるが)。
想像よりも放置しておいて大丈夫
今回は分かり易さ重視でザックリと書いているけれど、現実的には不満の選別はきちんと行うべきだとは思う。
対処すべきものとそのままにしておいても大丈夫なものを見分けるだけの目は必要ではある。
でも、イメージとしてお伝えしたいのは、「もう少し対処しなくても(放置しておいても)大丈夫ですよ」ということである。
問題を解決しようとして、複雑化する場合も多い
不満の解決に全身全霊をかけているように見えるマネージャーはとても多い。
責任感が強く、真面目な性格であるのだろう。
でも、僕のようなサイコパスから見れば、それは本来の業務ではないし、有効な解決にもなっていないのである。
もう少し厳しいことを言うなら、あなたが一生懸命不満の解決に取り組むことによって、その問題が更に悪化し、手の施しようがないくらい複雑化することだってあるのである。
それを「解決したー!」と思っているのはあなただけであり、言うなれば、自己満足に過ぎないのだ。
そのような醒めた目をどこかで持っておくこと。
淀んだ空気をかき回すと部屋全体に攪拌されてしまうから、それなら一か所に留めておいた方がマシ。
そういうイメージを持ちながら、不満に対処していくのである。
不満と共存しよう
仕事ができない部下ほど文句を言いがち。
それに振り回されているだけでは、残念ながら成果を上げることはできない。
不満と共存しながら、成果を探るための道を探すことが我々の仕事であるから。
それではまた。
いい仕事をしましょう。
あとがき
今日の話は、マネージャー経験が浅い人にはなかなか理解できない(したくもない)話かもしれません。
でも、長くマネージャーをやっている僕が感じるのは、不満を解消する(なくす)よりも、不満との距離感(付き合い方)を考える方が、成果には結びつきやすい、ということです。
理想を追いたくなる気持ちはわかりますが、不満は絶対になくなりません。
後はどのように付き合うか(付き合い続けるか)です。
中間状態に焦れずに、じりじりと進んでいきましょう。