現実歪曲フィールドの使い手たち

UnsplashVinicius “amnx” Amanoが撮影した写真

現実を認め、直視した方がいいのでは?

「誰もが不可能だと思っていることでも、巧みな話術によって実現できると納得させてしまうこと」

スティーブ・ジョブズのカリスマ性により、そのような磁場が構築されることを表現したものが現実歪曲フィールドという言葉である。

これはここではポジティブな用法となっているが、もちろんネガティブな意味もある。

「現実を認めない」というその点において、この言葉はポジティブにもなり、ネガティブにもなりえる。

誰もがジョブズには憧れるけれど、それを使いこなす為には相当な資質が必要であり、その資質がない大半の人は現実を捻じ曲げることなく、直視した方がいい、と僕は思っている。

ヘンテコな話術だけを身に付けたところで、人を心酔させ、多くの人を巻き込んでいくことはできない。

今日はそんな話である。

現実は様々。だけど…

会社の中には現実歪曲フィールドの使い手がたくさんいる。

僕は冗談めかしてそう言うことがある。

というのも、僕から見える現実と彼(彼女)らから見える現実があまりにも異なっているからである。

もちろん、現実の見え方は人それぞれではある。

同じ事象であったとしても、捉え方が様々であることはそんなにおかしなことではない。

でもあるレンジ(範囲)内には収まるとは思うのだ。

それをあまりにも逸脱している人が多すぎる。

そして、それを疚しいとも思っていない。

もしかしたら、気づいてさえいないのかもしれない。

そんな状態のまま、マネジメントという仕事をしているのだ。

明るい展望を話すことは悪いことではないが…

どうやったってうまく行くはずがない。

彼(彼女)らの認識している現実が捻じ曲がっているのだから。

出発点が間違っていれば、どんな方向に進んだとしてもそれは間違いなのだ。

もちろん、ジョブズのように、そこにはポジティブな意味合いが込められていないこともない。

現実は厳しいけれど、努力を続けていれば、明るい未来が到来するはずだ。

そうやって部下を労い、励ます、それはリーダーとしての大事な資質である。

ただ、そこで語られる明るい未来があまりにも現実から乖離していると、それはうすら寒いだけである。

でも、それには気づけない。

なぜなら、認識している現実が歪んでいるから。

本心からそれを現実だと信じ込んでいるから。

まあ(いつもの通り)僕がおかしいのでしょうけれど

いや、きっと僕の方がおかしいのだ。

こんなにも多くの人の認識が間違っていると思うのは、きっと僕がおかしいからなのだ。

世の中はいつだって正常。

僕はいつだって異常。

きっとそうなのだろう。

不可能なものを可能だと言い続けることがリーダーの役割なのか?

以前にも書いたことだけれど、こうなって欲しいという願望と、そこにある現実は異なる。

でも、リーダーシップというものを勘違いすると、不可能なものを可能だと言い続けることがリーダーの役割であると思うようになってしまう。

前述したように、それは必ずしも間違いとは言えない。

ただ、それが通るのは、その人がそれを本当に実現できるんじゃないか、と思わせられるまで行った場合のみ、である。

マネジメント本の影響か、はたまたその種のセミナー(TED的なものも含む)のせいなのかわからないけれど、ジョブズのようなスタイルを形だけ真似たマネージャーが多すぎるように思うのだ。

もちろん、本物はいい。

本物になろうとすることも否定はしない。

でも、言いっぱなし、やりっぱなしはなしだぜ?

結局は成果

実際のジョブズがどうだったかはわからないけれど、少なくとも僕が出会うニセジョブズたちは、1度自分が熱を込めて話せば聴衆が熱狂し、不可能を可能にする為に自動的に動き出す、というようなイメージを持っているように感じる。

「いやいや、あなたはジョブズじゃないし、そのようなカリスマ性もないですよ?」

その度にそんなことを思う。

ただ、そう思ってから、「いや、それだってその人のマネジメントスタイルなのだから、尊重すべきなのでは?」とも思い直す。

そこで僕はまた原点に戻ってくる。

「成果で勝負しようぜ?」と。

未来でお会いしましょう

現実を捻じ曲げた理想。

大言壮語の類。

それを言う権利を否定することはできない。

そして、先ほども言ったように、僕自身がおかしいだけなのかもしれない。

それなら、未来で勝負をしよう。

あなたの言うその理想がもし叶うなら、その成果は莫大なものになるはずだから。

そこでまた再会しよう。

言うだけではダメ

僕はマネジメントは成果である、とずっと言い続けている。

それは、このような「キレイゴト」を並べる人、並べるだけで素晴らしいと思っているそれがマネジメントなのだと勘違いしている人が、あまりにも多すぎるからだ。

多くの人をモチベートしようとするのは、マネジメントの手段の1つに過ぎない。

大事なのは目的を叶えることだ。

成果を出すことだ。

言うのと動かすのは違う

「野暮なこと言うなよ」

この種の人は、実際のプロジェクトが走り始めて、成果が出ないことが続くと、そんなことを言い始める。

自分が言った未来が到来しないのは、部下の動きが悪いからだとの印象を与えようと必死に画策する。

それは単純にマネジメントのスキルが足りないだけなのだ。

言うことと、実際に動かすまで行くことは大きく異なる。

それがわからないうちは、まずは現実を直視するような、地道なマネジメントをやった方がいい。

僕はそう思うのだ。

それではまた。

いい仕事をしましょう。

あとがき

格好良いことばかりを言うマネージャーは多いですが、それが事後的に検証されることは殆どない。

ここに日本のマネジメントの問題点があるような気がしています。

理想的な未来を語るのは自由ですが、そうじゃない現実が訪れた時には、そのツケは払って欲しい。

これは何も「責任を取れ!」ということを言いたいのではなく、言いっぱなしをすることへの対価を増やすことで、言動に責任を持つ人が増えることを願ってのことです。

破壊的イノベーション?

トランスフォーメーション?

その器じゃない僕のような人間は、現実を直視し、日々をアップデートさせていきましょう。