目標をフォーカスする

思ったよりも優先順位を付けられる人は少ない

成果を出すために必要なことは優先順位をつけることだ。

当たり前のことだが人的資源や時間は有限で、それをどこに重点的に充てていくか、がマネージャーの腕の見せ所となる。

そしてこれもマネージャーになって改めて実感したことだけれど、大抵の人は「それがわからない」ということだ。

これは何も部下に限ったことではない。

自分の上司であっても、それができる人はあまり多くない。

部下に「腹落ちさせる」のは思いのほか難しい

それはこういうことだ。

例えば会社から(例えば本部から)目標が降ってくるとする。

それはある種の経営的な数字から導き出された目標であるので、「どうやってやるのか」ということまで練りこまれていないことが多い。

「とにかくやれ」というのがそのメッセージの主旨だ。

ではそれをどうやるのか?

数字を読み解き、言語化できる上司であれば、どこをどのようにやるのかという要点がわかる。

そして抱えている部下の特性やマインドや外部環境やその他諸々を勘案して方針を打ち出す。

そこには数字や論理が含まれているし、現場に即した「実行可能」なものに咀嚼されている。

部下達は莫大な目標にうんざりしながらも、それらを飲み込んで腹落ちした上で行動を始める。

こうなると成功確率は大幅に上昇する。

でも大抵の人はこれができない。

数字や論理だけがわかる人、現場だけがわかる人、大義がわかる人、であればまだマシだ。

本当に世の中にはこれがめっきりダメみたいな上司がいる。

そして本人はそれに気づいていない。

こうなると部下は悲惨だ。

とりあえず行き当たりばったり走ることになる。

そして思い付きでどんどん目標が変わっていく。

精神的にも肉体的にもかなり辛い状況が続くことになる。

これではリーダー失格だ。

捨てる勇気を持つ

今日のテーマは「目標をフォーカス」することだ。

これは裏返せば、「何をやらないか」を決めることだ。

何かを捨てるということは勇気がいる。

だけれど、先ほども言ったように、あらゆるものは有限であるので、捨てる項目を決めないと全てが中途半端な状態になってしまう。

繰り返しになるが、これをできる人は本当に少ない。

全て満遍なくやろうとして全てどうしようもない結果になる。

そして何が悪いのかを本人は気づいていないから、それを部下のせいにする。

それを繰り返す。

悪循環だ。

目標は1つに絞る

ではどのように目標をフォーカスするのか?

1番大事な項目だけをやることだ。

これもマネージャーになって気づいたことだけれど、大抵の人(部下)は色々な項目を同時に進めていくことができない。

注意散漫になって、自分でも優先順位がわからなくなる。

なので、(チームの状況や能力にもよるが)目標は出来るだけ絞った方が良い。

そして「他の項目はやらなくていい」と宣言する。

もちろん本当に他の項目をやらなくていい訳ではないのだけれど、そのくらい潔く宣言しないと成果を上げることはできない。

心配だろう?

でも大丈夫だ。

1番大事な項目ができていれば、自然と他の項目もできるようになる。

ただ「全てにフォーカスしない」ことが大事なのだ。

「全部やろう」というのは綺麗な言説だけれど、現実的ではない。

リーダーとしてはこう言うのは非常に簡単だし、できないのは部下のせいにすればいいので身を守れるし、こう言った方がリスクが少ないのは確かだろう。

「1つだけやろう」と言ってそれさえできなかったらそれこそ悲惨な結末が待っているからだ。

でも僕の経験から言うと、目標をフォーカスした方が圧倒的に成果が上がる。

それは部下にとってはシンプルな世界になるからだ。

そしてリーダーの覚悟が伝わるからだ。

小さな成功体験の積み重ねがチームを変える

目標をフォーカスすると、それをどのように実施するのかという方法にも磨きがかかってくる。

当然ながらマネージャーもそれを徹底的に考え抜かなければならない。

先頭に立って実践しなくてはならない。

結果として深いノウハウがチームに共有されていく。

それは大きな財産となる。

それ以外の項目のダメージ(不出来)は確かに痛い。

でもその期間はそれを耐えるしかないのだ。

「1つの項目ができた」という達成感はチームに自信をもたらしてくれる。

こういった小さな成功体験が非常に大事なのだ。

「他はダメだったけれど、これはできた」というのはチームが次のステップに進むためには非常に大事なことだ。

もし君の抱えているチームが負け続けているのであれば、勝てそうな項目にフォーカスして、徹底的にそれをやってみることが大事だ。

他は捨てる。

そういう腹を決める。

マネージャーとしての任用期間にもよるし、どれだけ上司を我慢させられるかにもよるけれど、強いチームを作っていきたいのであれば、このプロセスは避けて通れない。

主要5科目はダメでも、「体育だけ5」で良いのだ。

そういう風にしてチームを少しずつ変えていく。

要諦、ポイント、エッセンス、そういったものを見抜き、そこにフォーカスする。

取るべき手段を言語化し、できるような形で部下の前に提示する。

彼らは腹落ちした上で目標に向かって邁進する

良い兆候だ。

それではまた。

いい仕事をしましょう。


あとがき

「現場に落とす作業」は存外難しいものなのかな、と最近感じています。

もちろんただ「やれ」と命令することは簡単なのですが、それを「どのようにやるのか」「どのようにやれば成果が上がるのか」「どのような気持ちに持っていけば部下が動くのか」といった細部まで考えられる人は少ないように感じています。

神は細部に宿る、というような大層な話ではなくとも、部下を腹落ちさせないと劇的な成果は上がりません。

そしてそれはどうやら大抵の人にはピンとこないようです。

経験に裏打ちされた芯を喰ったマネージャーの言葉。

それが僕たちに必要な言語です。

空言を排し、実のある言葉を使っていきましょう。