シンプル・シンプラー・シンプレスト
想像の何倍もシンプルに
物事はシンプルに。
それも極限までシンプルに。
それが今日言いたいことである。
長年マネジメントをやってきて思うのは、自分が思っている何倍もシンプルにしないと、部下はついて来られないし、それが定着化することもない、という悲しい現実である。
でも、悲観することばかりではなく、シンプル化にはメリットもある。
というか、メリットしかない。
今日はそんなことを書いていく。
奥へ、奥へ。
物事を研ぎ澄ましていくこと。
これはどんな仕事においても重要なことだと思う。
でも、多くの人はこれができない。
もう少し厳密に言うなら、自分では研ぎ澄ましているつもりであっても、まだまだ無駄な部分が残っているので、そこから更に奥に進む努力をした方がいい、ということになる。
想いが強くなれば、言葉数が増える
例えば何らかのメッセージを伝えたいとする。
その際に想いが強くなればなるほど、言葉数は多くなる。
より精緻に、より熱量を込めて伝える為に、表現も凝ったものになる。
それが間違いであるとまでは言わない。
最大限の準備を行い、ベストなパフォーマンスができれば、それは物凄い効果を発揮するだろう。
でも、大体の場合は、あまり準備もせず、本番のパフォーマンスもイマイチになってしまうことにより、このような凝った表現が効果を発揮することはない。
むしろ逆効果になったりしさえもする。
くどい言葉では何も伝わらない
というのも、くどくなってしまうからだ。
想いを尽くそうとすればするほど、精密に伝えようとすればするほど、本質の周りにごちゃごちゃと色んなものが付いてくる。
副詞や形容詞、前置詞や接続詞、その他諸々が付帯する。
結果文章が長くなる。
すると、よっぽどの部下でない限り、本質まで辿り着くことはない。
結局のところマネージャーは何を言いたかったのか?
それがわからないまま、「何か興奮していたな…」とか「話長かったな…」という印象に置き換わってしまうのだ。
本当に伝えたいことは何なのか?
これでは本末転倒である。
メッセージを発するのは、メッセージを伝えたいからだろう?
その為には余計な言葉は本来不要なのだ。
でも、言葉を絞れば絞るほど、本当に伝えたいこと(内容)を厳選する必要が出てくる。
どこが枝葉なのか?
どこが幹なのか?
それを自分の中で吟味する必要が出てくるのである。
言い足りないくらいが丁度いい
ただ、これは思いのほか難しい。
というか、僕の印象では、殆どの人はそこまで深く考えずに言葉を発している。
あと1段か、2段くらい進まなければ、本質まで辿り着かない、というそのくらいの段階で話をしてしまっている。
それをやめる。
ちょっと足りないかな、もう少し言った方が親切ではないかな、と思う地点で止まってしまう。
そんなイメージが大事である。
部下に笑われるくらいのシンプルさに
これは戦略(戦術)においても同様である。
やりたい物事の本質が何なのかを極限まで考えて、できるだけシンプル化を行う。
誰が行ってもできるように、それこそ乳幼児でさえ理解できるように、負荷を極限まで減らしていく。
目安としては部下に笑われるくらいに。
「こんなの誰だってできますよ」
「なめてもらっちゃ困りますね」
そのくらい簡単なものにしてしまう。
そうなったら、その戦略(戦術)は本質的になったと言っても良い。
僕はそんな風に考えている。
ユニバーサル・メッセージ
これはユニバーサル・デザインの概念に近いものだと思う。
老若男女、誰が見てもよくわかり、使いやすいもの。
文化、国籍、性別、年齢、能力に関係なく、誰もがその方向性を取り違えないもの。
それが極限までシンプル化された戦略(戦術)である。
ここには誤解が入り込む余地はない。
意訳や忖度、文脈や行間を読む作業なんていらない。
あるのは、単純なセンテンスだけ。
文字通りの、そのままの意味があるだけ。
それが重要なのだ。
シンプルな物事は、チームを単純化し、エネルギーを生む
と言っても、スローガンやパーパスみたいなものと誤解されてしまっては困る。
多義的な解釈、広がりといったものは不要なのだ。
僕が今回言いたいのは、それ以外の解釈の余地がないくらいまでシンプル化された物事は、チームの行動を単純にし、前向きなエネルギーを生む、ということである。
兎角日本には、無駄なことが多すぎるのだ。
それも内向きのエネルギーというか、文章解読にかける労力が多すぎるのである。
「これはこう書いてあるけれど、本心は違って、本当はこう思っているんじゃないか?」
「いやいや、それは見せかけで、マネージャーは本当は更に別のことを考えているのでは?」
そのような余計な空気の読み合いや、評論は不要なのである。
言葉の意味以上の意味を持たない言葉を
多くの批評家や評論家を生まない為には、マネージャーがまずそのメッセージなり戦略を研ぎ澄ます必要がある。
それが無駄な仕事を減らし、前向きなエネルギーを発生させ、生産性の向上に繋がるのである。
「その言葉の意味」以上に意味を持たない言葉。
そこまで到達できれば、マネジメントという仕事はとてもシンプルかつ本質的になる。
そしてシンプルかつ本質的になれば、チームの行動は力強いものになる。
後は言わなくてもわかるだろう?
それではまた。
いい仕事をしましょう。
あとがき
シンプル化の効力。
これは絶大です。
政治家の振る舞いを思い返さなくても、単純な言葉は力強く、遠くまで届きます。
部下の動きが納得いくものでない場合、まずマネージャーがすべきことは部下をなじることではなく、自分の戦略を研ぎ澄ますことです。
シンプルにいきましょう。