ちゃんと話を聞けていますか?
hearとlistenの違い?
世の中には話を聞ける人と聞けない人がいる。
多くの二元論がそうであるように、このような文章には注意しなければならないのは承知の上で、そんな書き出しから文章を始めてみる。
というのも、本当の意味で話を聞ける人は殆どいないと感じたからである。
何というか、hearとlistenくらい(本当のニュアンスの違いはわからないが…)違うように思えるのだ。
多くの人が考える「聞く」という行為は、僕からすれば「音が耳に入っている」程度のレベルで、その真意やそこから派生する思考にまでは考えが(全く)及んでいない、そんな感じがするのである。
また、これは「傾聴」ともちょっと違う。
もちろん「注意深く聞く」のは、ただ「音が耳に入っている」とは違う。
でも、「注意深く聞く」のは最低限の話であって、そこで聞き取ったものをどうやって自分の中で消化するかが大事なのである。
そして言うまでもなく、マネージャーにはこの聞く力が求められる。
今日はそんな話をしていく。
音の羅列を解釈する
音とは信号である。
空気の振動が耳の中で電気信号に変わり、脳内で変換させることによって、我々はそれを音と認識する。
ここまでは誰でもできる(ポリコレ的なご指摘はご勘弁願いたい)。
それは音(言葉)として脳内に入ってくる。
でも、大事なのはここからだ。
その受け取った音の羅列を解釈するのが我々の仕事である。
話が通じる人と通じない人
「いやいや、そんなの誰だってできますよ」
果たして本当にそうだろうか?
逆の立場で考えてみて欲しい。
「この人話通じねえな」
そう思った経験はないだろうか?
あなたから発せられた言葉は、空気を振動させ、相手の脳内で確実に音(言葉)に変換されているはずだ。
にもかかわらず、話が通じる人と通じない人がいる。
同じ語彙、同じ言い回し、同じトーンであったとしても、話が嚙み合う人とそうでない人がいる。
そして、そうでない人には、いくら表現を変えても、ニュアンスを変えても、伝わらない。
何となく理解したような表情はされると思う。
でも、全く伝わらない。
そう。
マネージャーは絶対にこうあってはならないのだ。
言葉そのものよりも、その言葉によって何を伝えようとしているかを聞く
僕は以前、他課の新人の女の子から、「ウエノさんは私の考えていることをすぐわかってくれるので助かります」と言われたことがある。
そして別の部下からは「占い師みたいですね」と言われたこともある。
後々詳しく聞いてみると、「たぶんこのくらいの言葉数では伝わらないであろうと考えていたのに、伝わったのでびっくりした」というのが、彼女らが感じたことであるそうだ。
大事なのは言葉そのものではない。
いや、もちろん言葉は重要だ。
でも、本当に大事なことは、その言葉を使うことによって、その人が何を伝えようとしているか、である。
聞くことの全体像
結局のところ、言語というのは手段でしかない。
我々は自分の考えというものを言語によってしか伝えることができない。
テレパシーみたいなものが出来れば別なのだろうけれど、思考の発露を言語というものに頼る以上、そこには「抜け」や「漏れ」が生じる。
当然ながら、話者によって語彙にも差が生じる。
もしかしたら、言い間違いなんてものも発生する。
それら全てを理解した上で、「この人は何を言いたいのだろうか?」ということを理解するのが「聞く」という本当の意味である。
もっと言えば、その聞いたものを自分の中に落とし込むまでが「聞く」という行為の全体像なのである。
話が納得的であるかどうかは関係ない
それは納得するとかしないとか、そういうことではない。
その人がどういう理路を経て、そのような言葉を選び、そのような発言に至ったのか、という背景を理解することが大事なのである。
その中に含まれているものが、自分にとって納得的であるか否かというのはあまり関係がない。
でも、多くの人は、その内容が納得的であるかどうかに囚われ過ぎているように思うのだ。
だから、話の方向性が自分の納得できるものではない場合、聞くという行為が途中で遮断されてしまう。
あくまでも「音として認識する」、それくらいの深度で止まってしまう。
それでは、相手の話を聞いていることにはならない。
当然ながら、部下からすれば、話を聞いてもらったという気持ちにはならない。
話を聞いてもらったという気持ちにならない上司には、以後それ以上の情報が伝わることはない。
後の顛末は書くまでもないだろう。
相手の真意を先に言語化する
僕が占い師だと言われるのは、「皆まで言わなくても」その真意を逆に言語化し、相手に伝えられるからだと自分では思っている。
コミュニケーション・スキルに関する(下らない)本の中には、会話の中で「相手の言うことを要約しなさい(「それはつまりこういうことですね」)」というようなことが出てくることがある。
僕が言いたいのは、そのような小手先のスキルのことではない。
ただ、この要約には、それなりのセンスが必要であることも事実だ。
そして、その要約如何によって、その人が本当に理解しているかどうかというのが一発でわかってしまうのも事実である。
自分に情報が上がってこない、部下からブレストに誘われない、そんな悩みを持っているマネージャーの人は、この「聞く」という行為のレベルアップを意識してみると良いと思う。
それではまた。
いい仕事をしましょう。
あとがき
営業は「聞く」仕事だとよく言われます。
ただ、「話すことよりも聞くことが大事」ということはわかっていても、その聞くという行為をかなりの深さで行える人はそんなに多くはありません。
だからこそ、多くの人は話がわかる人(理解してくれる人)を求めているのかもしれません。
おじさん達がキャバクラやスナックに行くのは、スケベ心のせいだけではなく(もちろんそれがメインでしょうが…)、「誰かに話を聞いてもらいたい」という強い欲求が人間には備わっているからだと僕は思っています(おじさんというのは大抵話を聞いてもらえないですし…)。
部下も同様です。
きちんと話を聞いていきましょう。