マネジメントは育成ゲームではなく戦略ゲームだ
部下育成に重心が偏っていない?
今日はマネジメントという仕事を行う際の心得みたいなものを書いていこうと思っている。
というのも、マネージャーの多くは(特に若手は)、部下の育成に重心が偏っている気がするからである。
もう少し丁寧に言うと、部下の育成が上手くいかないと(から)マネジメントが上手くいかない、というようなイメージを持ち過ぎているような気がするのである。
もちろん、マネジメントにおいて育成は大事である。
それがなければマネジメントという仕事は確かに成り立たない。
でも、同時に、育成というのはスパンが長いものでもある。
一朝一夕的に、もしくは四半期的に、部下が急成長するということはまず起こり得ない。
だから、意識としては、育成よりもそこにいる現状のメンバーでどう戦うかということを考えた方が良いと僕は思っている。
そしてそこには当然ながら、戦略の要素が絡んでくる。
それでは始めていこう。
部下は育たないもの(それがデフォルト)
「部下が育たなくて困っている」
そのような相談を受けることがある。
(以前にも書いたかもしれないけれど、僕はそれなりに部下育成には定評があるマネージャーだと思われているようで、そのような相談が時折来る)
でも、僕が思うのは、「まあそうっすよね(それが普通ですよね)」ということである。
部下は育てようと思って育つものではない。
何なら、よくわからないタイミングで成長したりもする(だから面白い訳でもあるが…)。
だから、マネージャーとしてはあまりそこに拘泥しない方が良いと僕は思っている。
マネジメントが上手くいかないのは、部下が成長しないせい?
もちろん、部下を育てたいという思いはとても大事だ。
でも、そこに思い入れがあり過ぎるのもまた考え物だと思っている。
というのは、マネジメントが「部下の成長ありき」になってしまう恐れがあるからである。
自分のイメージ通りに部下が成長しないと、マネジメントが成り立たなくなってしまう可能性があるからである。
そして、成長しさえすればマネジメントが上手くいく(自分のマネジメントが上手くいかないのは部下が成長しないせいだ)と思ってしまうのは、とても危険なことでもある。
将来の成長曲線を当てにして仕事をしない
僕はこれを説明するときに、ウイニングイレブンというサッカーゲームのマスターリーグというものを例に出すことが多い。
マスターリーグというのは、選手を成長させながらリーグ戦を戦う、それを何シーズンも繰り返していく、というものである。
そして、(最近のものはどうかわからないが)そこには選手毎の成長曲線というものが図示されている。
現在の能力値はこうで、順調に成長を続ければ将来的にはこのような能力値になる、というようなグラフである。
そして多くのマネージャー達は、このグラフを基にマネジメントという仕事を行っているように思える。
要は、将来の能力値(成長)を当てにして仕事をしている訳だ。
成長? 御冗談を。
でも、僕が何年もマネージャーを経験してきて思うのは、そんなものは全く参考にならないから早くやめた方が良い、ということである。
もっと言えば、成長曲線が横ばい、もしくは下降線を辿るという部下もたくさんいるよ、ということである。
多くのマネージャーは部下育成が上手くいくことを前提に仕事をしているようであるけれど、そしてそれが多くの育成ゲームのように基本的には成功するものだというイメージを持たれているようだけれど、そんなことは全くない。
むしろ能力が下降していくことすらも包含しながら戦略を立てた方が、チームの運営としては上手くいく。
僕はそう思うのである。
マネジメントの概念を変えようぜ?
そして、そこにはマネジメントという概念を変えるヒントが隠されている。
僕はこのブログ立ち上げ当初から「戦略が大事」ということを言い続けているけれど、現在もその重要性が認知されているとは言い難い状況である。
未だにプレイングマネージャーが幅を利かせているし、マイクロマネジメントこそが正統派である、という概念にも変化は見られない。
でも、だからこそチャンスでもあるとも思っている。
自分が馬車馬のように働かなくても、部下を囚人のように監視しなくても、成果が上がる方法はある。
ただ、それを理解している人はごく少数だ。
マネジメントごっこ
だから、そのようなマネジメントごっこをしている人達から早く離れて、マネジメントというものと真剣に向き合うことを始めたらいい。
そして、マネジメントと向き合うためには、戦略構築が欠かせない。
現有戦力の分析を行い、何が最適解なのかを必死に探し、そこに手を打っていくこと。
またそれが環境変化によって変わった際には、違うバリエーションの策を持っていること。
それを的確に実行し続けること。
それがマネジメントである。
簡単ではないが、不可能でもない
メンバーが育たなくても、何なら欠員が出ても、一定以上の成果が出る状態を続けること。
それはそんなに簡単なことではない。
でも、不可能でもない。
繰り返すが部下育成の重要性は変わらない。
ただ、もう少し戦略の重要性にも気を配ってみると、(特に短期的な)成果の違いを実感できるようになるはずだ。
それではまた。
いい仕事をしましょう。
あとがき
「自分のようになぜ成長しないのか?」
若いマネージャーほど、それも自分が優秀である人ほど、このような感覚を持つようです。
そして「それをやってあげたい」とも。
その感情自体はとても純粋なもので、とても清らかだと思うのですが、一方で冷笑してしまう自分もいます。
「そんなに甘くないぜ?」と。
そして、意地悪にも、「逃げてねえか?」とも。
部下が成長しなくても、何なら衰えていっても、成果を出すようなチームを作るのがマネージャーの仕事です。
理想のサッカーよりも、勝てるサッカーを。
それがわかるようになってからが本当のスタートです。
戦略に特化し、望外の部下の成長に驚嘆していきましょう。