忙しいアピールは愚の骨頂
無能宣言
何かにつけて「忙しい、忙しい」と言う人がいる。
それを聞く度に僕は残念な気持ちになる。
確かに日本においては、(多少の変化は見られるが)「忙しい=頑張っている」という評価を得られる確率が高いのは事実だ。
だから、戦略的に、私は頑張っているということをアピールする為に、「忙しい! 大変だ!」と周囲に撒き散らすのが有効だと言えなくはない(それにまんまと騙される人も多いし)。
でも、何年もマネージャーをやってきて、それもたくさんのマネージャーを見てきて僕が思うのは、「それ、やめた方がいいよ」ということである。
マネージャーが忙しいのは、言うまでもないことである。
そして大変であることにも異論はない。
ただ、それはあくまでも周囲がそう評価するものであって、自ら宣言しに行くものではない。
もっと言えば、その宣言は「自分は無能ですよ」ということを声高に主張していることと近しい意味になる。
それを理解した上でも続けるなら、どうぞご勝手に。
今日はそんな話である。
労働負荷の高まり
働き方改革と人手不足。
もう少し具体的に言うなら、残業時間の削減と人員削減。
これによって、1人当たりの労働負荷は高まっているように思える。
もちろん、今までの働き方には無駄も多かったので、この方向性が必ずしも間違っているとは言えないと僕は思う。
何もせず、ダラダラとしている「働かないおじさん(おばさん、お兄さん、お姉さんetc.)」はどの企業にだって不要だからだ。
でも、それでも、この数年の労働環境の変化はやや急すぎるような印象はある。
もちろん、コロナの影響はあったにせよ、急に舵を切ったな(それもかなりの急角度で)というのが正直な感想である。
ハードモードを楽しむくらいの心持ちで
さて。
そのような環境の中で、確かに「忙しい。大変だ」と嘆きたくなる気持ちはよくわかる。
ましてやマネージャーであれば、部下が急に退職したり、インフルエンザ(コロナ)に罹ったり、長期休暇を適切に割り当てたり、突発的な仕事が割り込んできたり、それに急ピッチで対応しなければならなかったりと、人員対応に四苦八苦してしまうのは当然とも言えるから。
そして、その苦闘が誰かに認められたり、褒められたりすることはないから。
日々を回すだけでも精一杯なのに、それに気づく人はいない。
だから、「私は大変なのだ!」と叫ぶ。
気持ちはわからなくはない。
精一杯のSOSなのだろう、と共感さえする。
でも、それは悪手だ。
それも一発で盤面が逆転するくらい、かなり良くない手である。
それよりも、そのような苦境の中で、どうやったら日々を円滑に回せるようになるのかを考えた方が良い。
ハードモードのゲームを楽しむように、その状況すらもコメディに変えてしまえばいい。
僕はそう思いながら仕事をしている。
レイヤーを上げる
「あまりにも大変で笑えてくる」
僕が自分のことが嫌いになれないのは、このような強さを自分が持っていることを知っているからである。
僕は状況が混迷を極めてくると、その状況が楽しくなってくるというマゾヒスティクな性質を持っている。
だから、忙しさというのも、あるポイントを超えると、面白くなってくるのだ。
そういう意味では、忙しいアピールをする人というのはレイヤー(層)が低いのかなとすら思ってしまう。
1つ上のレイヤーから、その忙しさにてんてこ舞いしている自分すら見てしまう(面白がってしまう)、この感覚がたぶんマネージャーには必要なのだと思う。
対象と同じ地平で組み合うのではなく、その対象を俯瞰から眺める感覚。
狭い密集した地帯から、スペースがある方にサイドチェンジするような感覚。
そこならもう少し時間を稼げるのだ。
たぶんあなたが思っている以上に、周囲はその状況を理解してくれている
たぶん思っている以上に、上司というのはその忙しい状況を理解している。
もちろん、細部はわからないかもしれない。
でも、その状況が大変であることは、どんなに間抜けな上司だってわかっている。
そこでどう振舞うかがマネージャーの腕の見せ所なのだ。
ボーナスタイム! 得点2倍!
僕はピンチになると、「ボーナスタイムが来た!」と思うことにしている。
普段の仕事であまり上手くいっていない時には、余計にそう思うようにしている。
「一発逆転、ここを切り抜ければ、オレの評価は爆上がりだ!」とそう考えるのである(実際に評価が上がるかは別として。というか、本来他人の評価なんてどうでもいいのだけれど)。
何ともないことでも、それをクリアすれば、得点が倍になるような感覚。
忙しさ、というのはそれがわかりやすく、かつそこまでクリティカルな状況になる可能性が低いものである。
それをどうやって切り抜けるか?
全体最適を
大事なことは、自分が働くことで解決しようとするのではなく、1つ視点を上げて、全体をどう最適化させるかという観点から考えることである。
自分が同じように忙しくなるのではなく、一歩引いた視点から、皆をどう動かしていくかを考えていくこと。
これがマネジメントなのだ。
あなたが忙しくすることは、そしてそれをアピールすることは、全くもって求められていない。
無能と呼ばれるのが嫌なら、それをやるしかない。
それではまた。
いい仕事をしましょう。
あとがき
「仕事ができる」という尺度の違い。
プレイヤーとマネージャーではそれが明らかに違うと僕は思っています。
プレイヤー時代の感覚で仕事ができると思っていると、マネージャーとしては無能扱いされる可能性がある。
この補正というか、調整。
それをする為の第一歩として、忙しいアピールはやめましょう。
マネージャーが忙しいということは、チームが機能していないということであり、チームが機能していないということは、マネジメントの能力がないということです。
マネージャーが忙しいということを大前提として、僕はそのように言いたいと思っています。
大変なのはよくわかります。
でも、別に外に出さなくてもいい(というか、職場で言わなくてもいい)。
平静を装って、有能を身に纏って、強がっていきましょう。