笑いを取る
冗談を言うと苦情を言われる職場
皆さんの職場では軽口を叩くことが許容されているだろうか?
雑談をしていたら白い目で見られたりしないだろうか?
僕はこれが許されない環境にマネージャーとして赴任してきた。
以前の職場と同じように職場内で下らない冗談を部下に対して言っていたら、違う部下から、「ここではそういう冗談はやめて下さい」とぴしゃりと言われてしまった。
冗談の内容が良くないのかと思った僕は少し反省し、しばらくおとなしくしていた。
でも生来がこういう人間なので、またほとぼりが冷めたと思われる頃に、もう少しソフトな冗談を言ってみた。
すると、また部下達は渋い顔をしている。
これは何かあるな? と僕は思った。
段々と関係性ができていく中で、どうやら「楽しそうに仕事をしていると他課から苦情を言われる、それが嫌なので黙って仕事をしている」ということがわかってきた。
僕はこれはナンセンスだと思う。
職種とか業態にもよるのかもしれないけれど、営業に関して言えば、こういう雑談は絶対に必要だ。
職場に相応しい程度という条件はあるとしても、その雑談の中で顧客との話のタネやインスピレーションが湧いてくる。
もう少し真面目に書くと、暗黙知がチーム内に共有されていく。
そして冗談を言ってもいいのだ、という心理的安全感が部下達の仕事に対するストレスを緩和してくれる。
だから、むしろ僕はそういった冗談や雑談を奨励しているくらいだ(ただ自分が黙って働き続けることができないからかもしれないが…)。
白けた顔で疑問も持たず働く低生産性のチーム
しかし、ここではダメと言われてしまった。
でもそんなくらいでは僕はめげないのだ。
誰も部下が乗ってこなくても、僕は軽口を叩き続けた。
それが僕のスタイルでもあるからだ。
というか、このチームが停滞しているのは、そんな冗談も言うことができないという余裕のなさが原因でもあるのではないか、と思っていたからだ。
そうは言っても、僕のせいで部下が嫌な思いをするのはさすがに申し訳ないので、他の課がいないチームミーティングとかで僕は冗談を織り交ぜながら話し続けた。
当然のことながら無反応だった。
みんな顔を下に向けて、僕が言ったことなど存在しなかったかのように無視し続けていた。
単純に冗談がつまらなかっただけ、という可能性ももちろんある。
でも自分を肯定的にとらえるのであれば、「会議は真面目でなくてはならない」というような自主規制のようなものが働いていたことが原因であったと思う。
本当に真面目であれば僕はそれでいいと思う。
でもそこにあった雰囲気は、「そうあるべきだ」という「べき論」が先行してしまっていて、「なぜ笑ってはいけないのか」ということを本質的に考えた結果ではなかったように思う。
僕の嫌いな同調圧力というやつだ。
みんなが白けた顔をして働くのが良いことだと盲目的に信じている、でも残念ながら生産性は全く上がっていない。
僕からしたらとても不思議な事態だった。
でもそれに対して疑問を持つことはないようだった。
皆がみんなつまらなそうに働いていて、結果も出ておらず、それを変えようともしていなかった。
まるで疑問を持つのがタブーであるかのように。
「笑ってもいい」という避難所を作る
そんな状態だから停滞しているんだ、と僕はどこかの会議で言った。
物凄い冷めた視線が僕を出迎えてくれた。
僕はそれを無視して続けた。
「もちろん職場に節度は必要だと思う。ふざけ過ぎは確かによくない、それはわかる。でも、こんな死んだような目で働いている職場で生産性が上がる訳がない。結果が出る訳がない。断言できる。絶対にだ」
「オレのように冗談を言えとは言わない。でももしこの状況を少しでも打開したいというのであれば、少なくともチーム内でコミュニケーションを取る努力をして欲しい。みんなできないできないと蔑まれて、馬鹿にされて、それにただ従っていて、腹が立たないのか?」
「状況を変えたいなら、結果を出すしかない。結果を出すためには、何かを変えなければならない。運だけで打開できるほど甘い状況じゃない。少なくともこのチームには気軽なコミュニケーションができる環境が欠けている。ちょっとしたことを隣の人に聞くことができないなんて、本当に間違っている」
「別に親友になれとか、隣人を愛せ、とかそんなことは言わない。でも家族のことや、昨日の出来事や、旅行の話が普通にできないなんておかしいだろう? それすらもできない奴が、営業で成績を出せる訳がない。そんなこともわからないから、このチームはダメなんだ」
こんなことを言ったと思う。
そう言っても、しばらくはそのままだった。
でも、少しずつチームは変わり始めた。
そして結果も付いてきた。
すると、他課も馬鹿にできなくなってくる。
僕らは楽しそうに、でも必死に働いて結果を出している。
それに文句なんて言われる筋合いはないのだ。
僕はまた朝のミーティングで下らない冗談を飛ばす。
あんなに冷めきっていたチームの中に笑いが起こる。
「今日も頑張るか」という雰囲気がチームに生まれる。
断られるということが前提の営業の仕事には、こういう避難所のようなチームが不可欠だ。
そうでなければ、勇気を持って断られに行くなんてことはできない。
その積み重ねが結果になる。
その辛さを分け合えるのがチームになる。
それではまた。
いい仕事をしましょう。
あとがき
僕は「べき論」が嫌いです。
そうあるべきだ、という同調圧力によって思考停止をしている人が一番苦手です。
ムラ社会のような日本の職場環境の中で、そこから外れることは多くの人にとってはかなりの難事のようですが、僕は軽々とこの境界線を飛び越えることができます。
嫌われる勇気というか、トリックスター性というか。
こういう覚悟を持っていると、職場内で差異を作り出すことができます。
そういう差異を作れることはマネジメントを行う上でまだまだアドバンテージになると僕は考えています。
もちろん結果を出してこそではありますが。
批判も非難も覚悟の上で、自分の信じる方法を貫いていきましょう。