対話力の高め方
「深く考えずに話す」のは案外難しい?
営業経験が長いからか、対話について思い悩むことは殆どない。
でも、この前後輩のマネージャーから、「1on1の有用性はわかってきたが、どのように部下と話をしていいかわからない」という相談があったので、「ああそうか。対話に悩むことだってあるのだ」ということに気が付いた。
正直な話、部下との1on1において、何かクリティカルな話をする必要はない。
ただのルーティンとして、毎回特に何も考えずに、繰り返していけばいい。
僕はそのように考えている。
でも、この「繰り返し」に思い悩む人だっている。
「そんなに深く考えずに話をすればいい」と言うのは簡単であるが、深く考えずに話をすることが苦手な人だっているはずだ。
そんな人に今日は部下とどのように話をしたらよいか、もっと言えば、対話力をどのように高めたらよいのか、ということを(僭越ながら)書いてみようと思う。
それでは始めていこう。
対話力と対聴力
対話力。
この言葉からイメージされるのは、「話」が大事、ということである。
双方が「話す」。
それが淀みなく行われる。
そんな状態が望ましいと僕らは無意識的に考えているような気がする。
でも、大事なのは、「対聴力」である。
話すよりも「聴く」こと。
それが対話力を高める為には必要なことである。
というのも、話を聴けなければ、対話は会話に留まってしまうからだ。
地下で話をする
対話において重要なことは、日常における会話よりも深い層で話をすることだと僕は考えている。
地下に潜る、というか。
それはB1Fなのかもしれないし、上手くいけばB2F、B3Fに行けることもある。
とにかく、心の奥深いところに触ることが大事なのだ。
もちろん、対話時間中そこにずっと滞在する必要はない(というか、できない)。
ちょっとでも地下に潜れれば、一瞬でも心のヒダのようなものにタッチできれば、その面談には意味があったと言える。
これは狙ってできるものではないけれど、相手の話をきちんと聴くことができるようになれば、その回数は自然と増えていくはずだ。
好奇心を持てない場合、どうしたらいいのか?
では、話を聴くためにはどうしたらいいのだろうか?
「好奇心を持つ」というのがその答えであるが、好奇心というのは持とうと思っても持てるものではないのも事実である。
本来的には、素の状態で相手の話に興味があることが望ましい。
でも、それがないとする。
ましてや、部下の話である(それも毎週)。
そんなことに毎回毎回興味を持って、前のめりに聴くことは難しいだろう。
そうすると、やや技術的に話を聴く為のスキルが求められることになる訳だ。
相手が言った話を自分の言葉に置き換える
この辺は、よくある会話に関する「マニュアル本」なんかを参照して頂ければいいとは思うのだけれど、僕が有効だと思うのは、「相手が言った話を自分なりの言葉に置き換える」ということである。
簡単に言えば、「それってこういうこと?」というような感じである。
それが合っていても、間違っていてもいい。
これによって、相手の話に対して自分が興味を持っていて、自分なりに解釈しようとしていることが演出されるからだ。
確かに本質的とは言えないけれど(本質的には相手の話に好奇心を持つことが重要だ)、これを繰り返していくことで、相手の話の要点を掴もうとしながら話を聴くことができるようになるはずだ。
そして、そのような態度は、相手からしても嫌な気分になることはない。
少なくとも、生返事を繰り返しているような状況とは大きく変わるはずだ。
相手の考えを要約し、連想されるイメージを加える
ここから更に派生させると、「相手の考えを要約し、そこから連想されるイメージを加える」という形がある(上記の応用だ)。
それは時に全然関係ない話となる。
でも、そのような着想を加えることで、話というのは展開を見せていく。
要約と派生。
この繰り返しにより、対話というのは、拡張し、縮約される。
そして気が付けば、地下に潜ることができているのである。
主題も目的もない話
ここまで読んで頂ければわかるとは思うけれど、これはよくある「コーチング」的なアプローチとは全く違うと僕は思っている。
コーチングには何らかの目的があり、ゴールがある。
そこに向かう為のコーチをすることが、面談の主旨となる。
でも、僕の面談は違う。
主題はない。
目的地もない。
その時に思っていること、そこからの連想、によって、話はあらぬ方向に展開をしていく。
要約と派生を意識する
大事なのは、どこかに向かおうとか、何かを得ようとか、その面談に目的を加えないことである。
普段の会話ではできないことができればそれでいいのである。
ただ、それだけでは難しいと感じる人もいるとは思うので、上記したような、要約と派生ということを意識して頂けると、毎回の面談は(多少は)苦にならなくなると思う。
話を聴いてもらえると嬉しいもの
やってみればわかるとは思うが、案外人というのは相手の話を聞いていないものである。
そして、きちんと話を聞かれるという経験がある人もそんなに多くない。
対話力よりも対聴力を。
それを高めるイメージを。
タイトル詐欺になってしまったことを詫びて本稿を終えたいと思う。
それではまた。
いい仕事をしましょう。
あとがき
要約と派生。
テクニカルな話ではありますが、これができると、面談を深いものにすることができる確率が上がるはずです。
仕事をしていても、相手の話を聴ける人はごく稀です。
部下の話を聴いていきましょう。