言行を一致させる

言うは易く行うは難し

たびたびこのブログ内では言及していることであるが、信頼を得る為には言行を一致させるしかない。

マネージャーの心得を1つだけ挙げろと言われたら、この「言行一致」を僕は挙げる。

これだけやっておけば大きな問題に陥ることはない、そう断言できる。

言うまでもないことだが、この対極である言行「不」一致はマネージャーの信頼感を大きく損なう。

でも、多くのマネージャーは意識的にか無意識的にかはわからないが、この言行不一致をやってしまっている。

それは多くの場合、組織の意向と自分の意思が乖離する場面において、組織の意向を優先させてしまうからだ。

「マネージャーは組織の意向を尊重するのが当たり前でしょ?」

それは間違っていない。

でも、そこにマネージャー自身の言葉が内在していなければ、一旦組織の意向を咀嚼していなければ、この言行不一致の度合いは大きくなってしまう。

このバランスをいかに保つか、ということがマネージャーの腕の見せ所だ。

これは「言うは易く行うは難し」という言葉の通りで、個人と組織とそのどちらに偏り過ぎてもいけない。

絶妙なバランスで、エッジの上を歩いて行かなければならない。

足を踏み外せば奈落の底へ真っ逆さまだ。

普通にマネジメント業務をやっていれば、言行は不一致になる

ではこのバランスをどのように保つか?

もの凄く大雑把に書くと、「譲れるところは譲る。でも譲れないところは譲らない」ということになると思う。

組織の意向というのは、指示や命令という形で矢継ぎ早にどんどん飛んでくる。

真面目なマネージャーは、この指示を「全部聞き入れよう(叶えよう)」とする。

もちろんそれぞれのマネージャーのスタイルがあるので全否定するつもりはないが、これをやっていると、部下からは「組織側の人間」だと思われる。

もう少し悪く言うのであれば、「自分の意志のないロボット(オウム)」だというレッテルを貼られる。

こうなると、部下からの信頼ゲージはダダ下がりだ。

「でも組織側からのウケはいいんじゃないですか?」

これはYesであり、Noである。

というのは、少し長い目で見ていくと、

一見従順で良いマネージャーに見える

→でも部下の信頼を得られていないので実績を上げることができない

使えないマネージャー

という評価に移り変わっていくからだ。

かといって、部下の立場に寄り過ぎていたり、マネージャー自身の我を通し過ぎても良くない。

これは一見物分かりのよいマネージャーに見えるが、組織側から疎んじられるので、結果的に仕事がやり辛くなり、実績を上げられなくなるからだ。

指示に自分の考えを織り込むことで言葉に重みを持たせる

ではどうするか?

個人的には、組織側からの指示の方が圧倒的に多いので、ここでバランスを調節するのが良いと考えている。

でも組織側からの指示というのは、自分の意思とかなりの確率で異なる

平たい言葉で言うと、やりたくないこともやらなければならなくなる。

そしてそれを部下にやらせるようにしなければならなくなる

当然部下はやりたくないことはやりたくない。

この温度調節がとても難しい。

自分でもやりたくない仕事を部下にやらせるのは、良心があるマネージャーであればあるほど悩んでしまう。

このジレンマからどうやって脱出するか?

大事なのは「自分の考えを指示に織り込む(混ぜ込む)こと」だ。

ただ言葉だけを言われたままに投げるのではなく、自分の考えをそれに付けて、少し言葉に重量を増させる。

言葉に重りをつける

こういう意識を持つだけで、言葉が上滑りしてしまう確率はだいぶ下げられる。

部下だって馬鹿ではないので、組織の意向を叶えなければならない、ということは当然わかっている。

そこで問われているのはマネージャーの覚悟だ。

「あなたはどう思っているのですか?」ということを知りたいのだ。

だからそれに対しての意見表明をする

その上でやって欲しいということを伝える。

そして自分もその通り行動する

当たり前のことしか言っていない。

でもこれがなかなかできないのだ。

思考停止は最悪の悪手だ

指示や命令の雨に打たれ続けると、思考を停止させてしまった方が楽になってくる。

ただ従っている方が余計な軋轢もないし、上司に疎んじられることもない。

最終的には「いやいや、部下には言ったんですけど、アイツらできないんですよ」と言って部下のせいにしてしまえばいい。

自分は何も痛まない。

でもこれは最悪の行為だ。

僕は自分の発言には責任を持ちたいと思っている。

難しいことは難しいと言いたいと思っている。

でも組織的にそれを言うのがタブーという場合もある。

その時には僕は自分の考えを述べて、部下と一緒に「難しいなあ」と悩むことにしている。

一緒にその困難に立ち向かって、その困難性を体で味わうことにしている。

そうすると、結果的にその課題ができなかったとしても、そのできなかった原因が体でわかっているので、言葉が滑らなくなる。

上司への説明の時にも、簡単に部下のせいにはできなくなるし、自分の体験も混ざっているので、言葉にも重みが出てくる。

言葉は軽く、行動は重い

「言うならやれよ」

これが部下の本音だ。

言葉は軽く、行動は重い。

言葉は簡単に発することはできるけれど、それを実行に移すのはなかなか大変なことだ。

言ったことをやり続ける。

それをただひたすら繰り返していく。

それが信頼になる。

マネージャーに大事なのはそれだけだ。

信頼があれば部下は力を貸してくれる。

本当にヤバい場面で大活躍してくれる。

本当に。

ではまた。

いい仕事をしましょう。


あとがき

言葉と行動が矛盾している時、その人に対する不信感は大きくなります。

できないことは言わない方が信頼感は維持できるのですが、中間管理職であるマネージャーが難しいのは、この「できないことも言わなくてはいけない」という状況が頻繁に訪れるということに尽きるような気がしています。

僕は自分のキャラクターがだいぶ浸透してきているので、部下達も僕の言い方によってそれが本音なのか建前なのかを聞き分けてくれるようになっています。

このような相互の信頼関係がないと一定以上のパフォーマンスを上げることは難しいです。

YesマンもNoマンもダメです。

いい塩梅で仕事をしていきましょう。