抑揚はいらない

モチベートするよりも安定感を
マネージャーに成り立ての頃と、今とを比べて、意識の面で変わったと思うことの1つに、「抑揚をつけない」ということがある。
当時の僕は、マネジメントにはメリハリが大事で、緊張と弛緩を上手にコントロールしていくことが成果の向上には欠かせないのではないか、と考えていたような気がする。
でも、今は違う。
抑揚はいらない。
というか、あまり波が立たない方がむしろ望ましいのではないかと考えている。
これはマネージャーという仕事が、部下を鼓舞するという行為よりも、精神的な安定感を必要とすることが段々とわかってきたからである。
もちろん、どちらもバランスよくできればそれに越したことはないのかもしれない。
ただ、多くの人達は、どちらかというと部下を奮い立たせる、モチベートするという方に意識が行きがちであると思うので、今日は敢えてそんなことを書いてみようと考えている。
それでは始めていこう。
攻め守りどちらにおいても重要
マネジメントという仕事を安定的に行う為に重要なこととして、「部下から気軽に相談される」ということがあるような気がしている。
これはリスク管理という意味でも、成果の向上という意味でも、どちらにおいても大切なことだ。
旧来のように権威や威圧で部下に言うことをきかせることは出来ないこの現代において、部下から気軽に相談されるような関係性はマネジメントを行う上で不可欠と言える。
そして、そのような関係性を築く為には、マネージャー自身が安定している必要がある。
それが今日のテーマに繋がっていく。
若手社員の心性の変化
これは部下の性質の変化がその要因の1つとなっているのかもしれない。
会社に入ってくる若手社員の心性が変わり、彼(彼女)らの成果を最大化する為にはどうしたらいいのだろうかと考えた際に、鼓舞するようなやり方はあまりハマらなくなったと僕は感じている。
それよりも、何か問題が生じた際に寄り添うというか、助けになる方が、彼(彼女)らからの信頼を得られ、成果が上がり易くなるように思うのだ。
リーダー像の変化
これをビジネス用語っぽく言い換えるなら、「リーダー像の変化」となるのかもしれない。
リーダーシップの取り方が以前とは変わってきている。
ずいぶん昔に「管理職から支援職へ」というタイトルのブログを書いたことがあるけれど、まさにそんな感じで、支援していくのがマネージャーの仕事の大半になったのが現代という時代である。
それはまあ何と言うか、やりがいに欠ける面があるのは否めない。
達成感は得られにくいやり方ではある。
でも、結果としてそのような行動様式の方が成果が上がるのであれば、そのスタンスを取らない手はない。
結局のところ、部下を奮い立たせるとか、自分が引っ張っていくことで成し遂げたいのは「成果の最大化」であって、それが実現するのであれば、その過程は言わばどうでもいいことであるのだから。
平穏無事に暮らしていきたい
そして、ここまで書いてきたところで気づいたのは、これも一種の「暇そうに働くこと」であるのかもしれない、ということである。
テンションの上がり下がり、気合いの入り具合、そのような感情の起伏は現代には求められていない。
これは忙しさにおいても同様であるような気がする。
テンポが変わることなく、ある種淡々と働いていくことを、多くの(若手)社員は求めているような気がしている。
というか、そのような状態をかき乱されることを極端に嫌がっているというか。
できるだけ平穏無事に暮らしていきたいのだ、きっと。
そのような心性を持つ彼(彼女)らにとっては、マネージャーの抑揚というのはむしろ邪魔にしかならないのかもしれない。
「やってる感」はない
経験上、抑揚的なマネジメントを行っていた時よりも、現在のように平坦なマネジメントを行っている方が成果は上がっている。
もちろん、そこに「マネジメントをやっている感」があるかと問われれば、疑問が残るのも事実である。
できるだけ何事もないように仕事をするのは、どう考えてもあまり楽しいことではないから。
でも、裏を返せば、何も起こらないような状態を構築するのがマネジメントの仕事であり、それはそれでそんなに簡単でもないとも思う。
自然な状態は自然には成立しない
戦略・戦略!と言っていた割には、当時の僕はそのことをあまり理解していなかったような気がする。
部下が働き易い環境や、そこで力を発揮できるような雰囲気づくりというのは、敢えて喧伝することではなく、自然とそのような状態になっていることが望ましい。
でも、そのような「自然さ」というのは、「自然に」成立する訳ではない。
たくさんの見えない仕掛けが必要となる。
それを行うのがマネジメントであり、結果としてそれが抑揚のない環境構築に繋がるのである。
物足りなさはあるけれど…
盛り上がりのない職場環境に物足りなさを感じる時は確かにある。
もう少し感情を出した方がいいのではないかと思う時もある。
でも、現状においてはこのような「抑揚のないマネジメント」の方が成果が出やすい気がするのだ。
それではまた。
いい仕事をしましょう。
あとがき
淡々と仕事をすること。
それはつまらないことではあります。
でも、成果ということを第一に考えるなら、その方がいいのではないか(時代適合的なのではないか)というのが今日の話です。
そして、これは好みの問題というよりも、戦略の問題なのかなとも思っています。
できるだけ安定的なマネジメントをしていきましょう。