信頼ゲージを減らさない
ちょっとした行動で信頼はなくなってしまう
築くのは一生、失うのは一瞬、という言葉を持ち出すまでもなく、信頼はマネジメントにおいても重要だ。
と同時に、マネージャー業というのは信頼を失いやすい仕事でもある。
メンバーに対する一挙手一投足が信頼ゲージに影響していくからだ。
いや、その当人に限らず、他のメンバーにも波及していくからだ。
今日のテーマはそれを減らさないようにするにはどうすればいいのか、ということになる。
言行一致すればいいだけなのだけれど…
このブログ内では何度も言及しているように、その答えは「言行一致」だ。
言っていることと、やっていることを同じにする。
それだけのことだ。
だが、言うは易く行うは難し、である。
特に自分が忙しい時や、上司からの無茶ぶりが乱発されている時には、現実的にこれを行っていくのは困難となる。
普段から自分がメンバーに求めていることを自分ではできなくなってしまったり、約束を破ってしまったり、強い言葉を言ってしまったり、余裕がない時には、このような行動や態度になりがちだ。
もちろん人間ができている人であれば、こんなことは軽々とやってのけるのだろうけれど、僕みたいな小さな人間にはこれはなかなか難しい。
では、どうするか?
僕はあらかじめメンバーに自分のキャパのなさを説明しておくことでこれを乗り切っている。
もう少し詳しく説明する。
自分の弱さや至らなさを開示しておく
まだ実現してはいないのだけれど、一時期自分の取扱説明書(課長のトリセツ)を書こうとしたことがある。
これはどんな時に機嫌が悪くなって、その時にはどのように対応したらよいか、というのを事前に知らせておけば、リスクを回避できるんじゃないか、という発想から生まれたものだ。
これと同じような考え方を僕はいま行っている。
事前にメンバーに対して、自分がいかに小さな人間であるか、キャパが小さいか、ということを開示しておく。
特に忙しい時には、その態度が横柄になったり、邪険に扱ったりする、傾向が強いということを説明しておく。
でも、それはそのメンバーを軽んじている訳ではなくて、ただ単に自分の能力が足りないからだ、ということを併せて言っておく。
だから、一旦そのような態度を取られたとしても、めげないで欲しい、というようなことをざっくばらんに言っている。
もちろん、だからと言って、これに甘えすぎてはいけないし、努力を怠ってはいけない。
どんなに忙しくてもメンバーに対して誠実に対応すべきだし、きちんと向き合うべきだ、というのが大原則だ。
ただ、それを100%貫徹できる程、僕は人間ができていない。
イラっとしたり、人に当たったり、まだまだ未熟な部分が多々ある。
事前に説明しておいたからと言って、全てが全て許されるわけではないけれど、それでもその影響を小さくすることは可能だ。
これは自己開示というテーマとも繋がってくる。
メンバーが自分のことを知っていれば知っているほど、このような行き違いのリスクは減少する。
「ああ、忙しいんだな」とか「あのモードに入っているな」と思ってもらえれば、余計な諍いは防ぐことができる。
そんな風にして、僕はメンバーとの信頼関係を維持している。
わかりやすいこと
5年間マネージャーをしてきて思うのは、自分のような人間でも、メンバーと信頼関係を築くことは可能だ、ということだ。
そして、ありがたいことに、(手前味噌ではあるが)その信頼関係は他のマネージャーよりも強い、ということだ。
それはなぜなのかを考えてみると、それは僕がたぶん「わかりやすい」性格をしているからだと思う。
僕は怒っている時は怒っているし、笑っている時は笑っている。
そして、次に怒るのか、笑うのか、も読みやすい(ようだ)。
済んだことは済んだこととして根に持つことはないし、起きた事象は問題視するけれど、それを人格に対して適用することはない。
どこかでも書いたことだけれど、信頼を失うのは、それが本心かそうでないのかがメンバーにわからない時だ。
疑心暗鬼とまでは言えなくても、いちいちマネージャーの言うことに対して、「これは本音か建て前か?」と疑うような状況になっていたら、良いチームは作れない。
言っていることとやっていることが食い違うことが増えていくと、メンバーはマネージャーに対して、段々と不信感を抱いていく。
もちろん彼らも大人なので、それを表立って出すことはないのだけれど、何となくチームがギクシャクしていく。
メンバーにリスクを取らせるためには
傍から見る他のチームのパフォーマンスが上がらないのは、このような小さな「ささくれ」みたいなものがメンバーのブレーキとなるからだと思う。
メンバーがリスクを取った時に、マネージャーが守ってくれるのか、そうでないのか、は大きな違いとなる。
その積み重ねがチームの成果に大きく関係してくる。
大事なのはメンバーに安心してこのリスクを取らせることだ。
そしてその背景にはマネージャーへの信頼感が絶対的に必要なのだ。
僕はメンバーに好かれたいとはもう思わなくなったけれど、仕事上は頼りにされたいとは思っている。
そしてその為には日々の信頼ゲージをコントロールしなければならない。
もちろん相手があることなので、全てをコントロールすることは不可能だけれど、最終的にこれさえできていれば、チームはある程度の成果を上げることが可能であるはずだ。
それではまた。
いい仕事をしましょう。
あとがき
正直でいようとすることはマネジメントにおいて重要なファクターです。
もちろんマネージャーも人間なので、狡さや弱さが顔を出して逃げてしまいそうになるのですが、そこから「逃げない」というその事実だけで、信頼感というのは生まれてきます。
上手く表現できないのですが、信頼というのはこの弱さや狡さに「立ち向かう」ことからしか生まれないと思っている人が多いような気がしています。
それはたぶん間違いです。
僕は自分の能力が足りないことが原因で、「途方に暮れて」、そこに「佇んでいる」ことが多いのですが、それを正直に晒すことだけで十分だと最近は考えています。
マネージャーはスーパー・マンではないし、不得意なこともある。
それを正直に認めること。
それができるかできないかで、難易度は大きく変わるような気がしています。
誇大な自己幻想から逃れて、正直ベースで仕事をしていきましょう。