マネジメントの向上には「監督本」が有効だ
サッカーというゲームはビジネスに似ている
マネジメント力を上げたい、そんな相談を受けることが時々ある。
どうやったらチームが上手くいくのかよくわからない、そういうマネージャーは実際に多いと思うし、その糸口(どこから手をつけていいかわからない)が見つからない人も多数いるだろう。
そんな時に僕は「監督本」を読むことを勧める。
僕の場合はサッカーが好きなので、サッカー監督の本(戦術論や、チームマネジメント、伝記的なものでもいい)を強くお勧めすることが多い。
サッカーというゲームは、時間と共にゲームの状況が刻々と変わっていくし、事前に準備していたことが必ずしも当てはまるとは限らない。
当然ながら相手チームがいて、相手も相手でそのゲームの状況に合わせて戦術を変えてきたりする。
また、プロサッカーチームには物凄く個性的な選手たちがいて、その人達をどのように扱うか、ということもここには含まれている。
もっと言うと、ファンの意見があったり、フロントの意見があったり、自分だけではどうにもならない外的な要因も含まれているのだ。
そういう意味では、ビジネスの環境にとても近いものではないか、と僕は考えているし、実際にたくさんのビジネス本を読んできた僕からすれば、それらの本よりもサッカー監督本のほうが断然役に立つ、と言っても言い過ぎではないように思う。
今日はそんな話をしていく。
(僕はサッカーが好きなので、サッカー監督本を進めているけれど、ゲームが流動的に動いていくスポーツであれば、どんなものでも参考になると思う。ただ、できれば国内だけで人気のものよりは、世界レベルで人気であるスポーツの方が、考え方がドメスティックにならないので、良いとは思う)
大きな指針を立てる
戦略と戦術。
このブログの最初期の時に取り上げた話題である。
ビジネス環境においても、戦略と戦術を立てながら、チームマネジメントを行うことは非常に大事だ。
戦略というのは、大きな枠組みみたいなもので、サッカーで例えるなら、チームコンセプト、みたいなものである。
どのような思想を持って戦うのか、を決める指針となるもの。
ポゼッションなのか、カウンターなのか、ネガティブトランジションが起こる時にはプレッシングに行くのか、リトリートするのか、などなど、チームの土台となる考え方を言う。
個々の選手の能力が高いし、足元の技術も高いから、うちはポゼッション主体で行こう、とか、フィジカル的に押し切れる選手が多いから、ショートカウンター主体で戦おう、とか、そういう概念をここでは指す。
理想のサッカーではなく勝てるサッカーを
これはマネージャーがチームに着任した時に、そのチームの雰囲気を見たり、メンバーと面談したりすることである程度はわかるはずだ。
大事なのは、自分の理想を追うのではなく、まずはそのメンバーに合った戦い方を考えることである。
ポゼッションサッカーがやりたいからと言って、選手が明らかにそれに合っていないのであれば、その理想はすぐに引っ込めた方がいい。
まずは勝てるサッカーを行う。
そしてメンバーからの信認を得る。
やりたいサッカーをやるのは、メンバーの揃い具合と信認具合が十分になった後だ。
この考え方、この順番がとても大事だ。
狭い領域での戦い方の指針を定める
次に戦術だ。
これはもう少し細部、狭い領域での戦い方の指針となるものだ。
例えば、攻撃的な能力の高い選手がいるとする。
5レーンの考え方を基に、ウイングにできるだけクリーンなボールを届けるようにしよう、そしてその選手の能力を活かしアイソレーションで勝負させよう、という戦術を取るとする。
その為には、じゃあ数的優位を作らなければならないよね、とか、一旦逆サイドに相手チームを集めておいて、早いサイドチェンジをする必要があるよね、とか、じゃあその為にはこうすればいいよね、とか、そういう話を詰めていく。
これをビジネス環境に応用させると、「捨てる」部分を持つ、ということになる。
メリットとデメリットは背中合わせ
サッカーというスポーツが面白いのは、戦術にはメリットとデメリットがあって、メリットを活かそうとすると、デメリット(リスク)は許容しなくてはならなくなる、という点だ。
例えば、「ハイプレッシングを行って、ショートカウンターを狙う」という戦術では、ボールを奪えばゴールまでの距離が短いし、得点の可能性が非常に高い、というメリットがある反面、守備時にボールサイドに人が密集するので、逆サイドが開いてしまいがち(逆にカウンターを受けるリスクが高い)になる。
ここで、「いやいや、それなら逆サイドにも人を置かなきゃね」となると、そもそものメリットも中途半端なものになり、効果が激減する。
これはビジネスでも同じで、全部を総花的にやろうとすると、どれも中途半端になってしまって効果が出ない、ということになりがちである、というところに関係してくる。
引き算で考える
戦術とは引き算(捨てること)である。
これを足し算でやろうとすると、結局のところ「努力と根性で埋める」「精神力でカバーする」という訳の分からない方向に向かうので、絶対にやめたほうがいい。
戦略に合わせた戦術を採り、捨てるべきところは捨てる。
これがとても大事である。
他にも、メンバーとの付き合い方やエースの扱い方、フロントやファンなどの「外野」の意見の処し方など、参考になる部分は多い。
是非騙されたと思って、一度読んでみて欲しい。
それではまた。
いい仕事をしましょう。
あとがき
数多のマネジメント本を読んできた僕からすると、10冊のマネジメント本を読むより1冊の監督本を読んだ方が、断然役に立ちます。
というのは、スポーツ(僕の場合はサッカー)において、戦力が潤沢で欠点がない、ということは殆どないから(これはビジネスも同じ)です。
大抵のチームには重大な欠陥があります。
そして欠点を塞ぐ方向に動くのか、ストロングポイントを活かす(欠点に目を瞑る)方向に動くのかでは、チームコンセプトが180度変わってきます。
ましてや、彼らは失敗するとクビになるようなヒリヒリした環境でマネジメントを行っています。
(僕も含め)生半可なマネージャーが書いたものなど、比較対象にすらなりません。
参考にしていただけたら幸いです。