無駄なタスクの履行状況で判断することなかれ

頼んだ仕事をきちんとやってくれる部下は可愛い。が…
「部下の忠誠度をどうやって図るか?」という問いに対して、あなたはどう答えるだろうか?
もちろん答えは色々とあるだろうけれど、答えの1つとして「依頼した仕事の履行状況」が挙げられるだろう。
自分が頼んだ仕事に対して、適切な精度・適切な納期でやってくれる部下に対して嫌な感情を持つ人はいない。
端的に言うと、可愛い部下である、と思うだろう。
ここまではいい。
でもこれが行き過ぎると、組織は疲弊していく。
どういうことか?
では話を始めていこう。
信頼関係を示す指数はないから…
マネージャーの仕事は抽象的なものが多い。
だから、時々具体的な証拠を求めたくなる。
その気持ちはわからないではない。
例えば、部下との信頼関係がどのくらい構築できているか、を知りたいと思ったとする。
指標はない。
数値は出ない。
そのような時に、一つの考え方として、頼んだものをきちんとやってくれるか、ということで代替させようとする、そんなこともあると思う。
「自分が頼んだことをきちんとやってくれていれば、その部下とは意思疎通が図れているし、信頼関係も相応にあるだろう」
近似的にそう思うことは不自然なことではない。
安心したい。安心したい。安心したい。
ただやり過ぎはよくない。
例えば、これをメンバー全員に対して行うとする。
それも高頻度で。
するとどうなるか?
当然ながら、必要のない仕事が増えることになる。
どうでもいいことでも取り敢えず依頼し、その回答を得ることで安心したいと思うようになる(でもきっと本人は無意識だ)。
マイクロマネージャーは自信がないだけ?(と煽ってみる)
「ホウレンソウ」を過剰に求めるマネージャーがその一形態である、と言えば分かり易いだろうか。
「マイクロマネジメント」というのは、一見きちんと部下を管理しているようであるけれど、その背景にはマネージャーの自信のなさや不安があるような気がしている。
部下が自分の方を向いているかどうか不安になるマネージャーほど、このような無駄なタスクを部下に依頼することで、忠誠心を測ろうとする傾向にある、というのが僕の仮説であり、今回の論考である。
昔話の中に、「明らかに無理なものを取ってくるように頼むことで、自分への愛を確かめようとする」という話型があるけれど、僕はそれに近い感覚をこのようなマネージャーに対して持っている。
「これはどうだ?」「できたか。じゃあこれはどうだ?」というように、このような「確かめ」はどんどんインフレ化していく。
と同時に、仕事の内容は無価値になっていく。
無駄な仕事は無能なマネージャーが作っている(と更に煽っていく)
それは上司が理解できない(上司が理解できる程度のレベルの仕事でない)と意味をなさないからである。
結果として、上司のキャパシティの範囲内、上司が理解できる範囲内、にこれらの仕事の精度は収まることになる。
その上司が理解できないような新しい発想や、斬新な切り口は嫌われる可能性があるので、できるだけ凡庸な答えを部下も出そうとする。
かくして、組織内には無用な仕事が増える。
一方、上司は満足げである。
ニュアンスが伝わるだろうか?
そしてあなたも似たような仕事の仕方をしていないだろうか?
是非胸に問いかけて欲しい。
自分が安心したいが為に部下の仕事を増やすなよ
コール&レスポンスというか、自分の問いかけに反応して欲しい、というのは誰しもが思うことで、それを否定しようとする気持ちはさらさらない。
そして、そのような日常的なやり取りがないと、自分の存在価値があるのかどうかに対して不安になる気持ちもわからなくもない。
付加価値の高い仕事というのは抽象度が高いものが多く、ある程度部下の自由意思に任せる必要があるので、自分が欲しいと思ったタイミングでその成果が出てくる訳ではない。
その間というのは、マネージャーは何となく手持ち無沙汰な状態で待つしかなくなるのである。
「あれどうなった?」と聞きたくなる気持ちをぐっと堪えて、遠目から様子を伺うことに徹することになるわけだ。
でも多くのマネージャーはそれが耐えられない。
聞きたくなってしまう。
報告を求めたくなってしまう。
階段を昇っていくように、進捗度合いを確かめたくなってしまう。
なぜか?
安心したいからだ。
可愛い部下は可愛いのか?
部下に仕事を任せるというのは、自分がそこに含まれていないということに対する不安を埋める作業であるとも言える。
自分の色を薄める・消す作業が必要となる。
でもかつてスタープレイヤーであった自分を消すなんてことは、多くのマネージャーにとって耐えられることではない。
だから口を出したくなる。
忠誠度を測りたくなる。
無理難題を押し付けて、それに応えてくれる奴だけを信頼したくなる。
かくしてイエスマンばかりが周りに固まることになる。
裸の王様
自分が頼んだことに対して、いちいち突っかかってきたり、「それはやりたくないです」と言ってきたりするような部下は近くに置きたくなくなる。
自分の自信が揺らぐからである。
このようなタコツボ化・身内化をマネージャーは常に意識しなければならない。
自分が裸の王様になっていないか、常に監視しておかなければならない。
それくらいマネージャーは孤独なものでもある。
でもそれが徹底できた時、マネジメントの段階は確実に1ノッチ上がる。
自信を持って放任しよう。
それではまた。
いい仕事をしましょう。
あとがき
「あれをやったか?」と問いかけた時に、「はい! やりました!」という部下は可愛い。
でも物足りない。
僕はそういう(天邪鬼な)性格です。
だからできるだけ「あれはどうなった?」みたいな仕事を依頼しないようにしています。
それは納期を短くすればするほど、自由裁量の余地は少なくなるからです。
タームの短い仕事は、精度のブレ幅が小さいですし、管理も容易です。
でもその分だけ外れ値も生まれにくい。
そういう意識をきちんと持った上で、どのようなマネジメントスタイルを取るかを考えることが重要です。
小さく纏まることなく仕事をしていきましょう。