コミュニケーション能力とは?
リクルートスーツ姿の若者たちへ
就職活動の季節になってきた。
現在のようなコロナ禍では、面接もリモートで行われることが多いようで、以前ほど街にリクルートスーツ姿の若者を見ることは多くない。
でも時々見かけることがある。
そんな時に、当時の自分を重ね合わせ、彼ら(彼女ら)の背中に向けて「頑張れよ」と心の中で唱える、それくらい自分も歳を取り(キャリアを重ね)、おじさんになってきたわけである。
当時もそうであったと思うけれど、新人に求められる能力の中(それも重要項目として)に、「コミュニケーション能力」というものがある。
この漠然とした言葉は何を指すのだろうか?
そしてその能力を向上させる為にはどうしたらいいのだろうか?
今日はそんなことを書いてみる。
コミュニケーション能力=武装解除できる力
結論から言うと、僕は「コミュニケーション能力」を「武装解除できる力」であると捉えている。
そしてその能力を向上させる為には、(ありふれてはいるが)様々な経験を重ねること(特に苦労をすること)が必要である。
「武装解除できる力」というのは、「忌憚なく話ができる」というイメージに近くて、要はそれぞれの立場を離れて、率直かつ建設的な議論に持っていくことができる力、のことを指す。
その際に、「円滑に話を進められる」であるとか、「淀みなく言葉を出せる」というようなことはあまり関係ない(もちろんできるに越したことはない)。
それよりも、相手のガードを下げられるかどうか、フラットな地平に立たせられるかどうか、というのが重要となる。
ハードモードからイージーモードへ
多くの企業はそこまで考えて「コミュニケーション能力」という言葉を使ってはいないと思うが、これができるかできないかでは、ビジネスの難易度は大きく変わる。
それこそゲームを始める時の難易度設定が「Hard」から「Easy」に変わるくらいに。
ただ一方で、多くの経験を重ねた社会人であっても、これができていない人が相当する存在する(そして自覚がない)ことも事実である。
では、そのような「武装解除できる力」というのはどのように身に付ければ(向上させれば)いいのだろうか?
自分を離れて物事を考えられるようになること
先程、結論として「様々な経験を重ねること」と書いた。
これをもう少し詳しく書くと、自分を離れてモノを考えられるようになる経験を増やす、ということになる。
要は他者に憑依する(ペルソナ化する)、他者の立場を慮ることができること、が重要なのである。
僕はよく営業現場に入ってきた新人に言うのだけれど、商談において達成しなければならないタスク(目的)があるとするなら、それをぽんとテーブルの上に置いて、まず開示することが重要である。
そして相手側がそれに対してどう思うかも話す。
例えば、「そうは言っても、御社の立場からするとこの話はこうですよね…」みたいに。
すると、目的というのが中立地帯にあるような錯覚が生まれる。
そしてその目的を達する為に、こちらとあちらが「協働して動く」イメージが生まれる。
これが僕が言う「武装解除」である。
要は、まずこちらの武器を捨てて、非武装地帯に入る。
そして相手の立場を言明することで、相手にも非武装地帯に入ってもらう。
そこで和平交渉をする。
そんな感じである。
フラットに話すことは簡単だが難しい
当然ながら、それぞれの担当者には、それぞれの会社から命じられたタスクがある。
譲れるラインと譲れないラインがある。
それをできるだけフラットに話すようにする。
これだけのことである。
が、僕はこれを営業の極意だと思っている。
そして、それができない人はとても多い。
オレのターン!
皆、自分の手をできるだけ隠し、相手の立場など知ったこっちゃない、みたいな感じで商談を進めようとする(もちろん自覚はない)。
そして、「立て板に水」のように、流暢に(ぺらぺらと)営業トークを展開する。
僕からしたらそれは「演説」に過ぎないのだけれど、彼ら(彼女ら)はそうは思わないようである。
言いたいことを言って、「では、相手のターン」みたいに、ターン制バトルをしようとする。
当然ながら、相手側も応酬してくる。
相応手負いの状態となり、商談が終わる。
「持ち帰って、社内で検討します」という何にもならない結論だけが残る。
これでは営業としては半人前である。
話がわかる人であることを理解してもらう
重要なことは、相手のクリティカルポイントを探り、それを言い当てるということである。
でもそれは簡単にはできない。
だからたくさんの経験を(それも苦労を)しておく必要があるのだ。
自分がたくさんの経験をしていれば、相手の立場や状況を我が事のように想像できる。
実際に相手の立場に合わせて交渉ラインを変えるかどうかは別として、少なくとも「話がわかる人である」ということを相手に理解してもらうことは、商談においてとても重要なスキルである。
「話がわかる人である」ことがわかると、自然と相手もガードを下げる。
相手がガードを下げたら、こちらも武器を地面に置くことができる。
こうやって武装解除をしていくのである。
地平を揃えて話ができる能力
今回は社外の人との話について書いたけれど、これは社内も同様である。
地平を揃えて話ができる能力をコミュニケーション能力と僕は呼びたい。
少なくとも、「上手に話す」ことではないことは確かであるし、それが人事部の簡単な採用面接で見抜けているようには思われないのだけれど。
それではまた。
いい仕事をしましょう。
あとがき
「コミュニケーション能力の低い若者が多い(増えてきた)」
同僚のマネージャーからよく聞く言葉です。
それは一理あると僕も思っています。
でもそこには、「コミュニケーション能力」というものをきちんと噛み砕いて説明していないから、その努力を怠っているから、という我々側の責任もあるような気がしています。
そしてそう言っている当の本人も、僕が定義する意味でのコミュニケーション能力が高い訳ではないことが、この議論をより複雑なものにしていると思っています。
僕らはもっと「対話」の能力を上げるべきです。
若者たちより先に自らが武装解除するべきで、彼ら(彼女ら)を武装解除させられるようなスキルを身に付けるべきです。
肩ひじ張らず、カッコつけずに、ありのままで接していきましょう。