キャパ大きめで

UnsplashFrancesco Vantiniが撮影した写真

器が小さい僕のような人間はどうしたらいいのだろうか?

「器が大きい人」はマネージャーに向いている。

じゃあ、僕のように「器が小さい」人間はどうしたらいいのだろうか?

そんなことを考えながら仕事をして、もう7年になる。

最初に考えたのは、「器を大きくする」ということである。

そもそもの容量を大きくすればいいのではないか?

ただ、仕事をしていく中でそれは難しい(というかほぼ不可能である)ことがわかった。

なので、今はこう考えている。

「使用率を下げて、容量を空けておく」

意味がわからない?

では、始めていこう。

経験を重ねても器は大きくならない

器の大きな人間になりたい。

それは人の上に立つ仕事をしている人間であれば、誰もが思うことだろう。

度量がある、寛容である、肝が据わっている、などなど、イメージする理想の上司像には欠かせない要素であるのが、この器の大きさである。

僕もマネージャーになりたての頃はそれを目指していた。

というか、ある程度の経験を重ねれば、自然と器は大きくなっていくものだろう、とぼんやりと考えていた。

でも、それは間違いだ。

四捨五入すりゃ同じ

僕みたいな人間ではマネジメント経験を重ねたところで器は大きくならない。

今だって、些細なことで苛立ったり、意地悪な気分になったりしてしまうことばかりだ。

本を読んでも、人から話を聞いても、自分で経験をしても、四捨五入すれば同じ、誤差程度の違いしか生まれていないような気がする。

でも、自分が部下の立場となると、やっぱり上司にはある程度の器の大きさは持っていて欲しいと思うこのジレンマ。

他人には簡単にそれを求めるくせに、いざ自分となるとテンで変わっていない現実。

その度に自己嫌悪に陥ったものである。

大きくはできない。でも、量は空けられる。

ただ(だから)、ある程度の経験を重ねた時にこう思ったのだ。

「容量を大きくすることはできない。でも、容量を空けておくことはできる」と。

こう考えられるようになってから、気がだいぶ楽になったし、実際の仕事にも好影響であったように思う。

もう少し詳しく書いていく。

性能が上がらないCPU

PCのCPUのことを想像してもらえると分かり易いかもしれない。

僕の最初のアプローチというのは、CPUの性能を上げる、という方向性であった。

そうすれば、様々なことを処理しながらも余裕を持って仕事に取り組むことができる。

そう思ったのだ。

でも、どうやらCPUを交換する(バージョンアップする)ことはできないようである。

僕のキャパシティというのは成長することがなく、現状維持なのだ。

それを騙し騙し使っていくしかない。

ある時からそう思うようになったのだ。

バッファーを持たせる

それなら、そのポンコツCPUを上手に使うしかない、という方向に考えが変わっていく。

タスクを減らせばCPU使用率が下がるように、いらない仕事を削って、バッファーを持たせておく。

そうすれば、いざという時に出力を上げることができる。

ピンチの時にも対応することができる。

そう考えたのである。

聖人君子にはなれない。でも、それっぽく振舞うことはできる。

これは日常業務にもとても役に立つ。

忙しい時に平常心を保つのはとても難しい。

多くのマネージャーがイライラしているのは、自分がとても忙しくて、部下のことを構っている余裕がないからである。

もちろん、聖人君子であれば、そのような状況でも大らかに対応できるのかもしれない。

でも、僕には無理である。

それなら、できるだけ忙しくならないような状況を作っておけばいいのだ。

コロンブスの卵

この考え方の切り替えというのは、とてもシンプルであるけれど、とても大事な変更なのである。

マネジメントという仕事に対する概念の変更、と言っても言い過ぎではないくらいの大きな違いだと僕は思う。

もちろん元々のキャパシティというのは、人それぞれなので、ある程度忙しくても対応ができる、ということであればそのくらいの余裕度、そうでなければ大きめの余裕度、というようにしておけばいい。

キャパオーバーはみっともない

これは平常時に使用率を100%にしない、ということである。

フルフルで、常に全力で仕事をする、というスタイルは、一見とても熱心で有能なマネージャーに見えるかもしれないけれど、僕はそうは思わない。

大抵このタイプの人は、ちょっとした異例なことが起きると、すぐにキャパオーバーになって焦ったり、怒鳴り散らしたりするからである。

気持ちはわかるけれど、やめておいた方がいい。

この種の状況下でやってしまった失敗というのは、取り返しがつかないからである(かく言う僕もその経験者だ)。

「ピンチの時に使えない上司」というラベリング

自分では「パニック状態だったから仕方ないよな…」と言い訳して、何とか納得させているのだけれど、部下などの周囲の人達はそうは思ってくれない。

「ピンチの時に使えない上司」というラベリングをされて終わりである。

この状態になったら、信頼を取り戻すことは不可能である。

だから、そうならない為に、普段の仕事に余裕を持たせておくことが重要なのだ。

やらないことを増やす方が楽

もちろん仕事に慣れて、容量を上げるという方法が取れなくもない。

でも、それで空けておける容量なんてものはたかが知れている。

だから、割り切って「やらないことを増やす」方向に進んだ方がいい。

僕はそう思っている。

キャパがあれば、良い人ぶれる

仕事が減れば、自然と余裕が生まれる。

暇になれば、誰かに相談されても親身になることができる。

それはとても単純なことである。

でも、それができるマネージャーはそう多くはないのだ。

それではまた。

いい仕事をしましょう。


あとがき

世の中の大半の人がイライラしている。

マネージャーとして仕事をしていると、それを痛感します。

もちろん御多分に漏れず僕もその一人なのですが、せめてその陥穽に陥らないようにする為には、キャパシティを空けておくことがとても重要です。

マネージャーのキャパ100%ラインというのはピンチの時を基準に合わせておくべきで、普段から100%にしておくと、何かコトが起きるとすぐにオーバーフローしてしまいます。

このようなキャパシティ管理で考えれば当たり前のことが、なぜかできない人が多すぎます。

余裕を持って、暇そうに仕事をしてきましょう。