木を見て森を見ず

UnsplashSergei Aが撮影した写真

個別の事象と全体感

後輩のマネージャーが異動して、異動先で様々な問題にぶち当たるなかで、「まずどこから手をつけたらいいですかね?」という相談があった。

そう言われても現場の状況がわからないので、答えようがない。

でも、それでは「つまらない奴だ」と思われてしまいそうので、「全体感はどんな感じなの?」と聞くことにした。

というのは、彼の言葉からは「個別の事象」に関する悩み(愚痴)が多過ぎるような気がしたらからである。

もちろん、可及的速やかに「止血」しなければならない事象がある場合は、真っ先にその個別事象に取り組むべきである。

でも、そうでないなら、全体観をフワッと見て、作戦を練る方がいい。

今日はそんなことを書いていく。

全体感によるチームの問題点の把握

マネージャー経験が増えるにつれて、異動してもすぐにどこがそのチームの問題点なのかがわかるようになってきた。

経験の浅い時には、個別の事象ばかりが目に付いていたのだけれど、今は違う。

「全体の感じ」「この辺りがマズいんだろうなあ」というのがわかるのだ。

これだけだと感覚的な話になってしまうので、それを何とか言葉にしようとしているのが今回の試みである。

ありきたりな言い方をすると、「木を見て森を見ず」ということになるのかもしれない。

以下詳しく書いていく。

帰納法と演繹法

チームを改善していくにあたって、アプローチ方法は2つある。

1つ1つの事象を改善していって、全体まで到達するアプローチ。

逆に全体感を見て、1つ1つの事象にブレイクダウンするアプローチ。

帰納法演繹法

今回の話は演繹法に関するものである。

表面をひと撫でする

誤解なきように先に書いておくと、これはチームビルディング初期(最初期)に関わる話である、ということである。

マネジメントにおいては、帰納法的アプローチと演繹法的アプローチを上手に使い分けていくことが重要であることは、ある程度の経験がある方ならご理解頂けると思う。

そしてその中でも、1つ1つの事象を潰していくことは決して悪くはないけれど、まずは全体を「薄く」知るということが大事だと僕は考えている。

「ひと撫でする」というか。

深いところまで入ってしまうと抜けられなくなるので、まずは表面を一通り撫でる。

そうすることでチームの「手触り」を感じる。

それが重要だと思うのだ。

夢中になると迷ってしまう

というのも、個別事象を全部潰したとしても、それが自分が描いているチームの形に近づくとは限らないからである。

目の前の事象に夢中になって進んでいると、目的地を見失う。

山菜取りに行ったおじさんが山中で迷うみたいに。

大事なことはその個別事象がクリティカルなものなのかを見極める目である。

もしその事象がクリティカルなものであれば、すぐさま取り掛かった方がいい。

でも、そうでもないなら、優先させるべきは全体感の方である。

相対的な重要度を理解する

ここまで書いてきて、これは「勉強法」にも似ているのではないか、と思ったのでちょっと脱線してみる。

テストに向けて勉強をする時に、1つ1つ教科書の最初から問題を完璧に解いていくか薄く何回も繰り返すか、みたいな違いのことが今回のテーマである。

僕は後者のやり方をお勧めする。

というのは、もちろん個別の問題は大事なのだけれど、その問題がそのテストにおいてどのくらいの位置づけ(重み)なのか、ということを先に知っておくことが重要だと思うからだ。

相対的位置、というか。

これはチームマネジメントでも同様である。

その個別の事象が、チームの現在の状況を鑑みて、どのくらいの重要度なのかを知っておくことがとても大事だと思うのである。

1発で決めに行かない

そしてもう1つ付け加えるなら、「1発で決めに行かない」ということも挙げておく。

全体感を知り、チームの雰囲気や問題点を把握した後、実際に問題に取り掛かるとする。

その際に、「各個撃破」みたいな考え方は避けた方がいい、と僕は思っている。

それは上記したように、その問題の「相対位置」が大事だと思うからだ。

チームにはバランスがあって、何かに手をつけると、どこかに歪みが生じる。

そして1発で問題を決めに行くと、その反動も大きくなる。

言っていることがわかるだろうか?

だからなるべくその歪みが大きくならないように、少しずつ変化をさせていく。

薄く何度も重ね塗りをする

繰り返しになるが、「大問題」は別だ。

でも、中問題や小問題については、同時並行的に進めていった方がいい、と僕は思っている。

あらゆる出来事は繋がっているし、1つ潰したところでモグラ叩きみたいに別のところで新たな問題が起きるだけなのだ。

だから、「重ね塗り」みたいなイメージを持つことが大事なのである。

薄く何回も取り組む、というか。

それが「木を見て森を見ず」の僕なりの解釈である。

慢性疾患と外科治療

冒頭の後輩マネージャーもそうだけれど、外科的に治療できる(と思っている)問題は大した問題ではない。

本当にヤバいのは内科的な問題(慢性疾患的な)なのだ。

それをどうやって改善していくか。

地味だけれど、食生活の見直し、睡眠時間、運動、喫煙・飲酒、そういったものを少しずつ改善していくしかないのである。

それではまた。

いい仕事をしましょう。


あとがき

マネジメントはバランスとの戦いである。

僕はそんなことを思っています。

全てが一気に改善する、なんてことはなくて、あっちが良くなればこっちが悪くなる、その微調整を繰り返しながら少しずつ改善していく、というのが現実的なところです。

そしてその際には、個別の事象だけでなく、全体の位置関係を理解しておいた方がいい。

それが今日の話です。

目の前のことだけに囚われず、俯瞰して見ていきましょう。