今日も順調に問題だらけ
永遠の中間状態
若いマネージャー達と話をしていると、「今ある問題を全てクリアにしたい」という強い欲求を感じることがある。
それはある種「正しい欲求」である。
でも、ことマネジメントにおいて言うなら、そんなことは起こらない。
常に問題はそこにあり、その問題に取り組み続けるのがマネジメントという仕事だから。
彼方立てれば此方が立たぬ、1つ問題を解決したと思ったら予想外のところで別の問題が持ち上がる(もしかしたら更に悪化している)、なんてことはザラである。
そのような「中間状態」「半熟状態」に耐えられるかどうか。
それがマネジメントの勝敗を分けるような気がしている。
そしてその時に大事なマインドセットは「今日も順調に問題だらけ」というものである。
常に傍らに問題がある状態のまま、仕事をする(続ける)という覚悟。
今日はそんなことを書いていこうと思う。
縛りゲー
マネジメントは「捨てるの禁止の部屋掃除」みたいなものである。
そんなことを思った。
部屋にある物の総量は変えられず、整理整頓したり、新しく収納スペースを作ったりすることで、何となく綺麗に、かつ住みやすくする行為(でも物は部屋から出せない)。
そんなイメージがマネジメントに取り組むうえでは重要だと思っている。
さて、どうするか?
もちろん綺麗さっぱり、捨てられるものは捨てたい。
その方が手っ取り早いし、明らかに綺麗かつ住みやすくなりそうだ。
でも、それは禁止されている。
「それで、どうする?」というのがマネジメントなのだ。
全てを解決するような魔法はない
やる気のない社員、働かないおじさん(おばさん)、他チームと対立ばかりするメンバー、不平しか言わない部下、そういったもの全てを窓の外から放り投げたくなる、その気持ちはよくわかる(僕だってそうだから)。
ただ、それは禁止されている。
というか、現実的にできないことになっている。
人事異動させることも、減給させることも、もちろん解雇することも禁じられていて、「さあ、結果を出せよ!」と言われても、「いやいや、現状見てくださいよ…」と思ってしまうのが、実際のところではある。
でも、そうは言っても、同じメンバーで明日も仕事をしなければならないし、決算毎に成果を出し続けなければならない。
ハイプレッシャーで気が狂いそうになる。
よくわかる。
そして、全てを解決する魔法みたいな策を求めたくなる。
だが、そんなものはない。
その時に唱える呪文が「今日も順調に問題だらけ」という言葉である。
問題は常に起きるもの。だからそれに対して無力さを感じる必要はない。
問題はなくならない。
何か1つを解決すれば(解決したと思ったら)、違う所で別の問題が持ち上がる、それがマネジメントの常である。
そういう意味では、「問題が起きている現状」に対して自分の無力さを嘆く必要はない、とも言える。
どんなチームだって、どんなマネージャーだって、問題はあるのだ。
もちろん大小の差や、頻度の差はあるだろう。
でも、「オールOK」「完璧」というチームはない。
一見、うまく行っているように見えるチームだって、問題は山積している。
その中でいかにやり繰りを行うか。
それがマネージャーの腕の見せ所なのだ。
無理ゲー
メンバー達は自分勝手に行動し、様々な問題を引き起こして帰ってくる。
それも割と手に負えない状態になってから戻ってくる。
やれやれ、と僕は思う。
まるで躾のなっていない(というか躾なんてできるはずがないのだけれど)ネコみたいだ、と。
あちらこちらでミャーミャー鳴き、腹が減ったと纏わりつき、ケンカも日常茶飯事で、そいつらを纏め上げて成果を上げるなんて、無理ゲーのように思われるかもしれない。
そんな状況にイライラしてしまうかもしれない。
気持ちはわかるが、それでは何も進まない。
とりあえずそれがデフォルトなのだ、と思うことにしよう。
問題は常に起き続けるのが当たり前だ、と開き直ろう。
そこからマネジメントが始まるのだ。
「解決」しようとしてはいけない
1つ役に立つかもしれないことを言うなら、バランスは常に考慮しておくべきだ、ということである。
経験の浅いマネージャーほど、問題を「解決したがってしまう」から。
「解決した方が良いんじゃないの?」と思ったそこのアナタ。
まだまだマネジメントの経験が足りませんね。
もちろん解決できるなら解決した方が望ましい。
でも、「解決」なんてないのである。
人間同士のイザコザは、表面的に収まったように見えても、地下には物凄い根を張っていたりするものだ。
だから、「解決」しようとしてはいけない。
「火消し」は重要だとは思うけれど、「弱い火が続いている」くらいの状態は我慢しなければならない(消火までいくと、また別の問題が持ち上がる可能性がある)。
それが方々で起きている状態の中で、チームを前進させるイメージ。
そこにはマネージャーのバランス感覚が絶対に必要だ。
バランスを保ちながら
あらゆる問題が残存した状態でも、倒れずに、ちょっとずつでも前に進んでいく。
ちょっと傾いたらそこに手を入れる、また別の方に傾いたらそっちに注力する、そうやってチームを維持していく。
生半可ではない。
でも、そういうものなのだ。
今日も順調に問題だらけ。
前向きに頑張りましょう。
それではまた。
いい仕事をしましょう。
あとがき
1週間が終わると、ようやく終わったと脱力してしまうことがよくあります。
それくらい日々色んなことが起こり、それに対処するだけでも疲弊してしまいます。
更に成果を求められるだなんて。
完璧を求めてしまうのが人間の性なのかもしれませんが、中途半端な状態を続けること、それに耐え続けることができた時、マネージャーとしては一段階上がるような気がしています。
問題が起きている(起き続けている)ことは異常じゃない。
そんなことをちょっとでも感じて頂けたら、僕がこれを書いた意味もある訳です。
問題と共に進んでいきましょう。