ニュアンスとテコの原理とレバレッジ
ちょっとしたニュアンスの違いで成果は大きく変わる
マネジメントをやっていると、ちょっとした仕組みによって大きく成果が変わるという場面に立ち会えることがある。
メンバーも同じ、環境も同じ、顧客も同じ。
でも、成果が大きく変わる。
それはなぜなのか?
自分で言うのもなんであるが、僕はこの質問を幾度となく受けてきた。
その度に僕が答えるのが「ちょっとしたニュアンスの差なんです」ということである。
そして今回はその「ニュアンス」というものを言語化してみようという試みである。
何らかの参考になったらありがたい。
それでは始めていこう。
みんなは魔法を期待する
僕はよくチームの立て直しを命じられる。
その度に思うのが、「チームの立て直し=改革」という固定観念の強さである。
多くの人はチームを立て直す為には大掛かりな変革が必要であると考えているようで、何か魔法というか、スペシャルなことを僕に期待しているように感じることがある。
でも、僕が実際に赴任して、そこでやることは「昨日の延長線上のこと」である。
「なあんだ…」というような、拍子抜けしたような、期待外れのような、言葉や表情には出さないまでも、ガッカリ感を僕は幾度となく感じてきた。
でも、半年なり1年経ち、実際の数字が形として現れてくると、みんな手の平を返したように「凄いですね!」と言ってくる。
この乖離というか違和感。
ここにマネジメントに対する理解度のなさみたいなものを感じるのだ。
特別ではないが、変えてない訳でもない
素晴らしいこと、スペシャルなこと、何か特別な新しいこと。
そんなものはない。
というか、あったら、前任の人がやっているはずだ。
ないから、停滞している訳なのである。
じゃあ、「何も変えていないのか?」と問われたら、そんなこともない。
そこでのキーワードが「ニュアンス」であり、「テコの原理」なのだ。
バタフライ・エフェクト
僕がマネジメントをやっていて、人と違うなと思うのは、ちょっとした細部へのこだわりである。
それはもしかしたら他の人から見たら些細なこと、見分けがつかないようなことなのかもしれない。
例えば、選ぶ言葉、伝える時のトーン、そのタイミング、そういったものが僕が言う「ニュアンス」である。
同じこと、昨日からの延長線上のことであったとしても、その伝え方によって、チームの成果というのは変わってくる。
その変化量、及ぼす影響力みたいなものを、多くのマネージャー達は「見くびっている」ように僕には思える。
それはバタフライ・エフェクトみたいに大きな影響力を持つものなのだ。
そこにどれだけこだわれるか?
こだわるというか、意識を向けられるか?
それがチームを変化させる時には重要なことである。
モチベーションは非常に繊細なもの
今風に言うなら、それはレバレッジをかける、ということになるのだと思う。
ちょっとした変化が大きな影響力を及ぼすことがあるというイメージは、どうやら人間には想像しづらい種類の概念であるようで、それも時間軸が長期になればなるほど、それが変化のきっかけだったのか、ということがわからないように僕には思える時がある(だからこそバタフライ・エフェクトという言葉が生まれ、驚きを持って捉えられるのだろう)。
だからもし、チームがしっくりいっていない、何か変化を及ぼしたいとあなたが思うのであれば、「ブランニューな何か」を外部から持ってくるのではなく、日々のちょっとした行動に意識を向けてみることをお勧めする。
そしてその際に気を付けて欲しいのが、「モチベーションというのは非常に繊細である」ということである。
現代にモチベーションの源泉はない。が…
メンバーがそれぞれあと一歩ずつ前に踏み出すことができれば、チームの成果というのは大きく変わっていく。
ただ、そのあと一歩を踏み出す(踏み出させる)為には、何らかのモチベーションが必要となる。
それは以前であれば、金だったり出世だったり、比較的分かり易いものであったのだけれど、現代では「はい、これです!」と差し出せるようなものではなくなってしまっている。
そんな時代にモチベーションとなる(可能性がある)のが、(ベタな表現にはなってしまうが)マネージャーへの信頼感なのである。
そしてこのマネージャーへの信頼感というのは、非常に脆く繊細である。
ちょっとした言い回し、ニュアンスの違い、で、大きく上がったり下がったりする。
そこに如何に気が付けるか?
それがマネジメントの成果を大きく左右するのだ。
誤差みたいなものの積み重ね
書いていて、非常に面倒くさい話であると思う。
なぜそこまで気を遣ったり、考えたりしなければならないのか、と思われる方もいるだろう。
確かにそうなのだ。
でも、裏を返せば、何か大きな改革をしなくてもチームは変えられる(それもマネージャーのちょっとした言動や行動の違いで)ということなのである。
仕組みや表現を上手に活用することで、受け手の印象は大きく変わる。
何も変わっていなくても、ポジティブに受け止めてくれるようになる。
ある種、誤差みたいなもの。
でも、それができるかできないかで、マネジメントの成果は大きく変わってくるのだ。
騙されたと思って是非やってみてください。
それではまた。
いい仕事をしましょう。
あとがき
僕は言葉の力みたいなものを信じています。
そしてマネジメントにおいては、それが割とわかり易く示されるとも思っています。
ここでイメージするのは、監督が変わった途端に一気に成果を出すプロスポーツチームです。
もちろん戦略的な変更もあるのだとは思いますが、僕はここにちょっとしたニュアンスの違いとそこから生じるレバレッジの大きさみたいなものを感じます。
伝え方次第で成果を大きく変えることは可能です。
細部にこだわっていきましょう。