1人で無理ならチームでね

UnsplashHannah Busingが撮影した写真

No!連帯責任感

個人個人ではダメであっても、チームであれば何とかなる。

チームスポーツがそうであるように、マネジメントにおいてもそれは成り立つ。

それを実現させるのがマネージャーの腕の見せ所である。

そしてその際に役に立つ方法の1つに、「チームで取り組ませる」という手法がある。

1人では達成できないような目標でも、皆でやれば達成できる。

ただ、ここでご注意いただきたいのは、日本社会でこれを適用しようとすると「連帯責任感」が出てしまうことである。

これを回避しながらチームで成果を上げる方法について、今日は書いていこうと思う。

やらせたいことができない状況でどうするか?

マネージャーとして、部下にこれだけはやらせたいということがあるとする。

僕は営業のマネージャーなので、目標水準を達成する為に、例えば毎日20件はセールスの電話をして欲しいなと考えたとする。

チームのメンバーは10人いるとして、それぞれに20件の目標を課する。

でも、残念ながら僕のチームではこれを達成できる人は半分にも満たないことが多く、それが続くと、何となくその目標が宙に浮いてしまっているような状況(「どうせやらなくてもいいでしょ?」)になる。

これは何としても避けたい。

ただ、個人個人ではそれができる能力(や意欲)はない。

「さて、どうするか?」というのが今日の話である。

吊るし上げること=マネジメント?

ここで多くのマネージャーがやる手法は、目標の数字をやっていない人を「吊るし上げる」ということである。

「吊るし上げる」という言葉が強ければ、やっていないことに対して懲罰的な措置を取る、という表現になることかもしれない。

懲罰的な措置というのは、グラフ化して晒したり、個別に呼び出して叱ったり、やるまで帰らせなかったり、まあ様々な方法があるけれど、要は「やらないと嫌な思いをするので、強制的にやるように仕向ける」という方向に進むことが多い。

ここには潜在的に「なぜやらないのか?」というマネージャーの意識がある。

「やらない奴はダメなヤツ」という考え方がある。

確かにそれは否定できない。

僕だってそう思うことは多い。

やらない人は何を言ったってやらない

ただ、マネジメントという仕事を長くやってきて思うのは、マネージャーがいくらそう思っていたとしても、そして懲罰的な表現をもってして本人に伝えたとしても、やらない人はやらないということである。

そして、マネージャーにとって大事なことは、その厳しい現実に悩んでいても何も変わらないし、気分も悪いままなので、仮にその人がやらないとしてもチームとしてやれればよい、という方向に考えを向けることである。

しかし、ここで冒頭に書いたように、チームでやらせようとすると、今度は「連帯責任」という問題が生じてくる。

先程上げた例に戻ると、「メンバー10人×20件=200件」セールスの電話を掛けさせようと、マネージャーが考えたとする。

すると、チーム内で「オレは20件やっている。アイツは10件しかやっていない。だからアイツを叱責すべきだ」というような雰囲気が生まれることになる。

これは非常に良くない。

さて、どうするか?

貢献していない人を叩くのではなく、貢献している人を称える

これは本当に微細なニュアンスの違いなのだけれど、「チームの為に貢献してくれる人を称える」というイメージを与える、ということに尽きると僕は思っている。

「チームに貢献していない人を叩く」というある種日本的な雰囲気を打破し、「チームに貢献してくれている人を称える」という方向に持っていく。

それはここでは簡単に書いてはいるけれど、そんなに簡単なことではない。

マネージャーへのベースの信頼感が前提にあって、かつチーム内のメンバー間における信頼感がなければ、この手法は成り立たない。

でも、これができるようになると、チーム内の雰囲気はガラッと良くなる。

「今日は商談で忙しくて電話を掛けられなかった。でもみんながやってくれた。明日は予定が少し空いているから、自分がやるようにしよう」

こんなイメージなのである。

マネージャーへの信頼感が大前提

これは一歩間違えると、先ほどの連帯責任的なイメージに堕してしまう。

「自分が足を引っ張ってしまっている」というような感覚が生まれてしまう。

この辺のところは、本当にちょっとしたニュアンスの差異なのだ。

文章に書くと、両者の違いはあまりわからないかもしれない。

実質的には連帯責任的なイメージなのではないか、と思われる人もいるかと思う。

ただ、繰り返しになるが、ここにはマネージャーがそのように考える人ではない、やっていない人を懲罰的に扱うことを好んでいない、というメンバーからのベースの信頼感が非常に重要なのである。

「表面的(体裁を保つため)にそう言っているだけで、本当はそうは思っていないのだろう」というような疑念が生まれないような普段の接し方できていれば、この手法は絶大な効力を発揮する。

でも、その為には、やっぱりマネージャーの普段の仕事振りや、人間性みたいなものが問われるのである(僕が繰り返し「結局は人間性」と言っているのは、このようなことが背景にある)。

それではまた。

いい仕事をしましょう。

あとがき

今日の話はマネジメントの中でも結構レベルの高いものであるように個人的には思っています。

というのも、日本におけるマネジメントの殆どは「懲罰的措置(の亜種)」であるからです。

それも「連帯責任込み」の。

隣組と村八分。

それを脱する為のチームマネジメント。

それは簡単なことではありません。

でも、それができた時、マネジメントはもう少しカラッとしたものになります。

湿気を排し、乾いたマネジメントを行っていきましょう。