マネジメントは単調性との戦いでもある
今日変えて、明日変わる、みたいなことは起きない
仕組みを変えればすぐに結果が出る、と思っている人がいる。
これはある種の仕事には当てはまる。
ただ全てがそうとは限らない。
しかし同時に、我々は企業人であるので、あるターム内に結果を出すことを宿命づけられてもいる。
でもマネジメントはそこに人が介在する。
そして人の成長は思っている以上に時間がかかる。
今日変えて、明日変わる、みたいなことは起きない。
今日も明日も同じように見える日が続くだけ。
それがずっと続いていくように思える。
何も変わらない単調な日々が、今日も明日も続いていって、成果も単調なままである、そんな風に思ってしまうことがある。
それを打開しようと、色々な新しい施策に手を出したくなってしまう(実際に出したりする)。
それは控えた方が良い。
今日はそんな話をする。
毎日覗き込んだって…
植物の種を植える。
植えた当初は毎日のように植木鉢を覗き込んで芽が出る日を待ち望んでいるけれど、芽が出ない日が続くと、段々とその頻度は減ってくる。
段々と関心が薄れていく。
時々思い出したかのうように水をやってみるけれど、何の変化もないままである。
植えた季節が悪かったのか、気候が合わないのか、日当たりが良くないのか、色々と考えてはみるけれど、表面の平らな土はうんともすんとも言わないままだ。
そしていつしか意識の外にその植木鉢は追いやられる。
その存在を忘れてしまう。
成長するかどうかはこちらの問題ではない
ある朝、天気の良い朝に、窓辺においてある植木鉢に目をやると、緑色の新芽が出ている。
後は勝手に成長していく。
植物の成長ですら、このくらいの時間軸は必要だ。
ましてや人間ならどうか。
僕はチームの変化を求められることが多いのだけれど、それこそ農夫のように日々単調な日々を過ごすことで、それを実現している。
熱意を注いだからといって、手取り足取り指導したからといって、こちらの都合で部下が成長する訳ではない。
成長にはティッピングポイントみたいなものがあって、やる気スイッチみたいなものがあって、あるタイミングでなければ作用しない類のものである。
僕にできることは伸び伸びと生育できる環境を作ることであって、成長するかどうかというのは(冷たいようではあるが)僕の問題ではないのだ。
アナログで単調な日々
自分がしていることに対する見返りがいま得られないからといって憤っている人を見ると滑稽にすら思える。
グーグル検索みたいな瞬時の反応なんてない。
あるのはアナログな、単調な日々の繰り返し。
どうしようもない失敗の繰り返し。
それに耐えられるかどうかが重要だ。
効果を見守る
これはチームの方針にも関わってくる。
ドラスティックな改革がドラスティックな効果をもたらすとは限らない。
もちろん明らかにダメな部分については早急に手を入れるべきだし、それも大きく変えるべきだとは思うけれど、それをし終えた後はしばらくの間効果を見守るということが重要だ。
矢継ぎ早に手を出してはいけない。
あらゆる施策というのは効果ができるまでに時間がかかるものだ。
だからこそ最初の打ち手が非常に重要になる。
信認を背景とした改革の進展
練りに練られた戦略を基に、マネージャーが改革の最初の一手を打つ。
それが最初の成果を生み出すまでには時間が必要となるが、その成果の伸長に伴って、マネージャーへの信認が増していく。
その信認を背景に、もう少し踏み込んだ改革を行っていく。
その改革の効果が出るまでにまた時間が…(以下繰り返し)。
追加の打ち手はいらない
この改革→効果検証までの間、「→」の時間、というのは、単調な日々が続く。
遅々とした歩みというか、ほぼ昨日と変わらない日常がそこにはある。
成果だってすぐには上がらない。
そんな単調な日常が続いている一方、成果は早急に求められているので、ここにジレンマが生じる。
気が急いたり、焦ったりする。
追加の打ち手が必要なのではないか、と思うようになる。
そこで動じないことだ。
様々な要因や誘惑に負けてはならない
先程の植物の例えで言うなら、ここで日当たりの良い場所に変えようとしたり、肥料を増やしたりしようとすることはあまり得策ではない。
もちろんそもそもの戦略が間違っていたならば、早急にピボットすべきであるけれど、そうでないなら、自分の戦略に自信があるなら、しばらく見守るほかはない。
上司からの風当たりが強くなったり、圧力が増してきたり、自分のやり方への懐疑が生じてきたり、その他様々な要因や誘惑によって、単調性を失わせた方がいいのではないか、と思うだろうけれど、そこで挫けてはいけない。
何度も言う。
成果が出るまでは時間がかかるものだ。
それは単調な日々を潜り抜けた先にしか訪れないものだ。
血肉になるまでには時間がかかる
もう少し詳しい話をすると、人間というのは新しい環境に慣れるまでに時間がかかる生き物であるのだ。
特にメンバーの大半は環境の変化というものに対して抵抗感を示すことが多い。
その新しいやり方が、日常になり始めた時、違和感がなくなってきた時、彼らの血肉になり始めた時、成果は出てくるのだ。
そこからは勝手に伸びていく。
縮む期間が長ければ、伸びる高さも高い。
それまでの間は、暇そうにしていればいいのだ。
それではまた。
いい仕事をしましょう。
あとがき
待つ、というのはマネジメントにおいて非常に大事なことです。
素晴らしい戦略も、それが浸透するまでには時間がかかります。
その期間を待てなければ、折角の素晴らしい戦略も台無しとなってしまいます。
ただ、同時に、自信や経験がないと待てない、というもの事実です。
そんなあなたに私から提案を。
騙されたと思って、もう少し待ってみて下さい。
忘れた頃に大きな成果となって返ってきます。
気長に行きましょう。