知恵を授ける

担当者とのギャップ

若い担当者と話していていつも思うのが、「全然考えないで営業しているんだな」ということだ。

もちろん彼は彼なりに考えているのだろうし、実際にそう言うのだけれど、僕からすればそんなのは考えた内に入らないそれこそ入口付近をウロウロとしているに過ぎない、ということが本当によくある。

そしてそれに気づいていない

そういう状態では、「売れないのは当たり前だよな」と僕には納得的であるのだけれど、彼は「なぜ売れないのか」と変な袋小路にはまり込んでいたりする。

このギャップをきちんと理解することから、営業マネージャーは部下育成を始めるべきだ。

往々にして営業マネージャーは営業担当として優秀であったはずだから、この違いに気づくまでに時間がかかってしまうのだ。

もう少し言うと、その違いに気づいていたとしても、そもそもの能力やセンスが違うので、それを上手く伝播することができないでいる、ということが起こるし、極端な場合、それを根性や精神論で克服させようとする人だって出てきてしまうのだ。

これを解きほぐすにはどうすればいいのか?

知恵を授ける、というのがその答えとなる。

今日はそんな話だ。

プロダクト営業とソリューション営業

ベタな話になってしまうけれど、営業は「プロダクト営業」「ソリューション営業」に大別することができて、できない担当者というのはプロダクト営業をしがちであるということになる。

もう少し残念な話をすると、できない担当者はこの違いを分かっているにも関わらず、自分ではソリューション営業をしていると思いながらプロダクト営業をしていたりすることが非常に多い。

これを矯正するのは難しい。

絶望的なまでに難しい。

ここから先は営業論みたいな話になってしまうので、エッセンスだけを書くけれど、それを矯正できればできない担当者というのはこの世からいなくなるし、矯正できないからできない担当者がいるのだ、という禅問答みたいな回路を経て、ソリューション営業ができるかできないかというのはセンス(才能)による、というのが僕の現時点での結論となる。

OJTとかロールプレイングとかで身に付くものではないのだ。

「できそう」と「やってみる」のは大きく異なる

もちろん、理論を理解させることはできるけれど、それを実践させることはできない。

理論と実践は違う。

スポーツと同じで、プロの試合を見て「できそう」と思うのと、実際に「やってみる」のとは大きく違うのだ。

頭で理解できても、それができるかどうかは、別の世界の話となる。

というのが前提の話で、「じゃあどうするのか?」というところに戻ってくる訳だ。

それは「プロダクト営業を疑似的にソリューション営業に持っていく(そういう知恵を授ける)」ということになる。

もう少し詳しく書いていく。

(余談にはなるが、僕は営業の究極系は「売らない」ということだと思っている。

 「お節介を焼く」というニュアンスが近いかもしれない。

 それについてはまたどこかで書こうと思う)

プロダクトの力を最大限引き出す為に

販売する商品自体に力があれば、プロダクト営業というのはそんなに難しい話ではない。

例えば最新型iPhoneを売るのは容易だろう。

でも、世の中の商品の大半には競合品があって、自社の製品はそれに比べて劣後しているということが往々にして起こる。

それをどうやって売るのか、というのが営業の仕事となる。

無理やり良いところをでっち上げるというのは詐欺であり、最もやってはいけないことである。

ではどうするのか?

それは「そのプロダクトを自分が買うなら(納得させる)どういう時か?」ということをひたすら考える、ということになる。

それによって「そのプロダクトの力を最大限に引き出す」。

これを大抵の営業マンはおざなりにしてしまう。

自分でも納得できないものを、売ろうとしてしまう。

それでは売れるはずがない。

プロダクトにソリューションを混ぜ込む

僕は「コロンブスの卵」的な考え方をよくする。

同じものを見ているとしても、視点の方向性によって世界は大きく変わる、ということがある。

それを営業担当者に提示する(もちろんハナから商品として力がないものについては難しいので、ある程度商品力があるというのは前提になる)。

プロダクトにソリューションを混ぜ込む。

「そういう考え方があったか」と思わず膝を打つような話を担当者相手にする。

すると、彼ら自身が納得する。

腹落ちする。

彼らはそれを同じように話してみたいと思うようになる。

これで営業成績は大きく変わる。

感心して欲しいと思っているだけ

彼らがソリューション営業ができるようになるわけではないのだけれど、プロダクト自体に「ソリューション風味」を持たせられれば、それが「疑似的に」可能になるのだ。

本当のソリューション営業にはセンスや人間力みたいなものがないとできないけれど、疑似的なソリューション営業はプロダクトに物語性を付与することでできるようになる。

この理路の開示考え方の通り道の共有、をすることがチーム全体の力の向上に繋がるのだ。

「こんな面白い話の仕方を考えたぜ!」というのは僕がいつもやっていることで、僕は若手営業担当者に販売手法のプレゼンを繰り返している。

それを採用するかしないかは彼らの自由であって、僕はただ自分が面白いと思う話をするだけなのだ(ダメ出しも結構ある)。

分かりづらい話になってしまったと思うけれど、これは単純に「なぜ売れないんだ!」と言うこととは大きく異なるということは理解してもらえると思う。

僕はただ「聞いて!聞いて!」と言っているだけだ。

感心して欲しいと思っているだけだ。

それではまた。

いい仕事をしましょう。


あとがき

話し方の巧拙は営業成績に直結しない、というのは一定レベル以上の営業マンには常識だと思うのですが、若い担当者は「上手く話せないから成約できないのだ」と思いがちです。

大事なのは「上手に話すこと」ではなくて、「自分で腹落ちしているかどうか」です。

そして自分を腹落ちさせる為には、色々なことを血反吐吐くくらいまで考えなければなりません。

これができるということがセンスがあるということなのだと僕は解釈をしているのですが、それをできない層というのは一定数いて、部下の大半はそういう人達です。

これをどう使うか、が営業マネージャーの手腕の見せ所です。

どんどん若手にプレゼンをしていきましょう。