FIRE(経済的自立・早期退職)ってどうなの?
FIとRE
昨今、FIRE(Financial Independence, Retire Early)という言葉を聞くことが増えてきた。
これは収入増と支出減により「貯蓄率」を高め、その貯蓄を投資に回し、生涯の支出を賄えるだけの不労所得を得る仕組みを作る、不労所得があるので早期退職も実現できる、というものだ。
とても魅惑的な響きである。
そして全体的にはこの考え方には賛成である。
実際に僕自身も「ファック・ユー・マネーの作り方」という記事で同じような趣旨のことも書いているくらいだ。
ただ、多くの識者が指摘しているように、FI(Financial Independence)とRE(Retire Early)はある程度切り分けて考えるべきだし、REの方が強くなってしまうと、人生は無味乾燥なものになってしまうような気がしている。
大事なのはFIである。
REはその付帯物として考えればいい。
今日はそんな話をしていこうと思う。
クソ仕事の氾濫
FIREという言葉が一定以上の訴求力を持つのは、世の中に「クソ仕事」が増えてきた、いや、世の中の大半の仕事は「クソ仕事」である、ということに僕らが気付き始めたからなのだと思う。
僕たちは自分達の仕事が無意味であることを自覚しながら、それをさも意味がある仕事であるかのように振舞わなければ、高い給料を得ることができない。
その欺瞞に気づきながらも、気付かない振りをし続けなければ、現在の生活水準を維持することができない。
そのような「仕事の無意味性」が僕たちを早期退職へ駆り立てる。
もちろん、そこには嫌いな上司がいたり、不条理を押し付けてくる会社という組織があったりして、その仕事の無意味性に拍車をかけていく。
「職業人」なんていう概念は過去のものだ。
それは生活の糧を得る手段に過ぎない。
早期退職をした後にやりたいこと?
キャリアを重ねていったとしても、有用感なんてものは生まれてこないし、むしろキャリアアップをすればするほど、「クソ仕事」をする羽目になる確率は上がっていく。
それなら仕事を続ける意味なんてあるのか?
たしかにそうだ。
もっと言うと、金を得ることで得られる幸福なんてものはたかが知れている、ということに僕たちは気付いてしまっている。
物質的充足などいらないのだ。
それなら、仕事自体を金を得る為の手段として割り切ってしまって、それを貯蓄(投資)に回せるだけ回してしまえばいい、そこから得られる不労所得で生活をしていこう、と志向するのも、僕には当然のことのように思える。
諸先輩方が説いてくる「仕事のやりがい」みたいなものは陳腐であり、その諸先輩自身の人生が全く幸福に見えない現実において、そこに全人生を捧げるのは馬鹿げている、結局は社畜としての自分を正当化しているだけだろう? と思うのにも僕は賛意を示したい。
ただ、待てよ、とも思うのだ。
早期退職をしたところで、僕は何をしたいのだろうか? と。
そしてそれは退職した後でなければできないことなのだろうか? と。
切り札としての経済的自立
そういう意味では、僕は早期退職にそんなに魅力を感じていないのだと思う。
現在の仕事内容に不満はたくさんあるけれど、「辞めてしまいたい」というところまでは思っていない。
時には充実感を感じることだってある。
もちろん経済的自立には興味があるし、そのカードを手札として持っておきたい、という気持ちはある。
以前に比べて社内の空気は悪くなっていっているし、クソみたいな上司は未だにたくさんいるし、いつでもそのカードを切れるような準備はしておきたい、というのが実際のところだ。
ただ、仮に僕は今の会社を辞めたとしても、マネジメントの仕事は続けたいとは思っている。
それが別の会社になるのか、個人事業主になるかは置いておいても、僕はマネジメントの仕事が嫌いではないし、もっと言うと仕事自体が嫌いではないのだ。
だからFIは目指すべきであると思う。
ただREにはそこまで興味がない。
現在と未来
FIが重要なのは、あくまでも「ファック・ユー」と言える権利を手にすることであって、それが言えれば、仕事の大抵の悩みというのは消えてなくなる、ということだと僕は考えている。
仕事の大抵の悩みというのは人間関係であり、もう少し言うと、上司との関係性である(いや、一番は上昇したいという自我かもしれない)。
そこから解放されれば、仕事というのは格段に面白くなる。
傍若無人に振舞え、ということではなく、自分らしく仕事をすることができるようになれば、必ずしも早期退職する必要はないのだ。
もちろん、REというのは実際に早期退職するのではなく、早期退職できる権利を手にしておく、ということであることはよくわかっている。
ただ、議論の中には、「とにかく今の仕事を辞めたい!」という方向に力点が置かれ過ぎているものがあるような気もしている。
本当にやりたいことがあるという一部の人を除いて、大抵の会社勤めの人は特にやりたいことがないからサラリーマンになったのだろうし、それなのであれば、まずは現在の環境を良くすることを考えるべきなのだろうと僕は思う。
もしそれが難しいのであれば、心理的負担の少ない仕事に転職することを検討すればいい。
上手く言えないけれど、未来にフォーカスしすぎると、現在の仕事が苦役にしか思えなくなってしまう。
少なくとも、僕はFIを志向しながらも、マネージャーとしてそういう環境を作っていくつもりだ。
それではまた。
いい仕事をしましょう。
あとがき
最近自分は「谷間の世代」なのかもしれないな、と思うことが増えています。
僕が入社した頃には、「社内で上昇していく」ことがまだ一般的な価値観として残っていたと思いますし、僕自身もその残り香を吸って、「そういうものなのかな」と思って若手時代を過ごしていたのですが、いつの間にかその残り香すらなくなってしまっていて、若手の間には「こんなクソみたいな仕事をして、偉くなってどうするのだ?」という価値観が大勢を占めるようになっているように感じています。
折に触れて、僕は上司から社内での昇進について説かれるのですが、残念ながら僕は冷めてしまっていて、はっきり言ってそのことにあまり興味が持てなくなってしまっています。
僕の好きな諸先輩方は会社で評価されていない人が多いですし、既に会社を去ってしまった人も多くいます。
そんな中で僕はどのように仕事をしていくべきなのか?
答えはまだ見つかっていないですが、とりあえず金銭的に困らないような準備はしておきたいと思っています。
参考になれば幸いです。