マネジメントに魔法はない

魔法も秘伝のスパイスもない

本当にごくたまにではあるけれど、「なぜそんなに劇的にチームを変えることができたのか?」と聞かれることがある。

「同じメンバー・同じ環境で、大きく成果が変わる、普通はそんなことは起こりえない。だから何か特別なことをやっているのだろう」と彼らは考えているからそのように聞いてくるのだろう。

「何か魔法や秘伝のスパイスがあるのでは?」と。

残念ながら、そんなものはない。

このブログの読者の方であればわかると思うのだけれど、僕が考えていることは多方面に亘るし、それもやや支離滅裂な部分もあって、必ずしも論理的整合性が大事である、ということもない。

雑多なことを、雑多なまま、進めていっているだけだ(目の前には仕事があるので)。

もちろん「勘所」みたいなものはあるとは思うけれど、「スペシャルなんたら」みたいな解決方法はない。

ただ、日々を愚直に繰り返していくこと。

そこにしかマネジメントの進化はない。

今日はそういうつまらない話をする。

水面下の白鳥の努力を知る者はいない

大抵の人には普段の行動は見えない。

それも地味な行動は見えない。

白鳥は水面下で必死に足を掻いている、というのは比喩としてよく使われるものであるが(実際にそうなのかは知らない)、まあそんな感じである。

本当に微々たる改善を、1日1日積み重ねているだけ。

ローマは一日にして成らず、である。

正しいと思うことを正しいと思う方向に変えることが正しいとは限らない

もう少し詳しく言うのであれば、何か悪いことを感じ取ったとしても、それをすぐに変えるべきなのか、少し時間を空けてから手をつけるべきなのか、というのは判断が分かれる、ということは知っておいて損はない。

この辺の感覚が、先ほど述べた「勘所」なのかもしれない。

「正しいと思うことを、正しいと思う方向に変える」というのは、非の打ち所がない議論ではあるけれど、僕はこういう考え方にやや懐疑的である。

もちろん「正しい方向に進んでいくべきである」とは思うけれど、「それが今なのか?」ということはきちんと考量しておいた方が良い。

そのタイミングの見極めというのがもしかしたら「魔法」ということになるのかもしれない。

少なくとも、手をかざして、「はい、劇的にチームが良くなりました!」ということはない。

絶対に。

あるのは、地味でつまらない苦闘だけである。

バイオリズムと成長は間違えやすい

マネジメントをやっていてつくづく思うのは、バイオリズムとチームの成長は混同されがちである、ということである。

チームで働いているのは人間であり、人間には好不調がある。

好調な人が多ければチームには活気が出てくるし、成果もそれにつれて上がってくる。

すると、何となく「チームが成長したのかな」と思うことになる。

実際に何度となくこれに僕は「騙されて」きた。

本物の成長でなければすぐに不調の波に飲み込まれてしまうし、地力がないから跳ね返すこともできない。。

あくまでもその時のコンディションによって成果が左右されてしまうことになる。

これはチームの成長とは言えない。

成長と成果

チームの成長というのは、バイオリズムの変動(特に不調)があっても、ある程度のレンジの中に収めることができる、そして、全体的に右肩上がりになっている、ということを指す。

ただ、残念ながらこれには時間がかかる。

体感的にはどんなに早くても1年普通に2年とか3年とかはかかるものだ。

そういう意味では、あなたがマネージャーとしてどのくらいの期間そのチームを任されるのか、途中で解任される可能性は高いのか低いのか、ということによって、力を入れるべきポイントは変わってくるだろう。

複数年度を前提としてチームマネジメントをしていくのであれば、「成長」という観点を重視すべきだろうし、単年度を前提とするのであれば「成果」に重点を置くべきだろう(もちろんこれは両輪ではあるので、あくまでもバランスの問題である)。

そしてもし「成長」というところに重点を置くのであれば、若手を育てることは大事になるし、燻っている中堅・ベテラン社員を生き返らせることも大事となる。

ベースの成果の改善は一朝一夕ではできない

残念ながら、明日から急に彼らがスタープレイヤーみたいに活躍する、そのように変化する、ということは起こらない。

ただ、ベースの成果、ということであれば、改善は可能だ。

何の手応えもない1on1、何度指摘しても直らないミス、どう教えても上手くならない営業スキル、そんな日々を繰り返していった先にしか、ベースの成果の改善はない。

魔法はかからない。

僕はため息をつきながら、そういう日々に苦悶しながら、そういう見えない部分の仕事を続けている。

たくさんの挫折と諦めの先に

外野は成果だけを見て、「素晴らしい!」「魔法みたいだ!」なんてことを簡単に言う。

「そのスキルを他のマネージャーにも教えてくれ!」なんてことをのたまう。

馬鹿を言うな。

そんなに簡単にできるものではないのだ。

期待をかけたところで部下が成長するわけではないし、願った時に成果が上がるわけでもない

そういうたくさんの挫折と諦めを経た先に、僥倖のようにやってくるのがチームの成長というものである(残酷なことを言えば、たくさんの挫折と諦めをしたからといって、チームが成長しないことだってある)。

それを願って、僕は今日もまた地味な仕事をしていく。

それではまた。

いい仕事をしましょう。


あとがき

スポーツでは当たり前なのに、ビジネスではそうでないというのがなかなか理解してもらえません。

当たり前ですが、初心者がいきなりホームランを打ったり、リフティングができたりすることは起こり得ません(もちろん天才は別です)。

そこまで行くには、日々のたゆまぬ努力が求められます。

それはビジネスにおいても同様です。

現在当たり前のようにできていることであっても、最初はきっとできなかったはずですし、そこまで到達できるとは思ってもみなかったでしょう。

そしてその変化も1日単位ではなくて、年単位のものだったでしょう。

それを忘れずに日々のどうしようもない改善を続けていきましょう。