人生100年時代のマネジメント

UnsplashMohamed Nohassiが撮影した写真

人生の「マルチステージ化」にどのように対応するか?

リンダ・グラットンの「ライフシフト」から、「人生100年時代」という言葉が世に広まって、もう数年経つ。

その間に働き方は変わっただろうか?

この本の要諦は、「教育」「仕事」「引退」という現在の3ステージの人生が、長寿命化の進展と共に「マルチステージ化」する(せざるを得ない)、というところにある。

そういった時代の変化を捉え、リスキリングを行ったり、無形資産を増やしたりすることで、人生における選択肢を増やしておきましょう、というように議論が展開されていて、これは至極真っ当な話だと思う。

特に高齢化が現実のものとなっている日本においては、70歳・80歳まで働くのは未来の話ではなくて、現在でもそのようになっている。

それは必ずしもお金の為だけでなく、人的関係などの社会との繋がりを維持したいという考えに基づいたものだ。

その中でマネジメントというのはどのような位置付けとなるのか?

今日はそんなことを書いてみようと思う。

日本の社会人は勉強しなさ過ぎ

マネージャーとして多くの人と接していると、「選択肢を増やしている人(増やそうとしている人)」というのは存外少ないことに気づく。

というか、日々の生活で精一杯でそんなところまで手が回らない、というのが実情かもしれない。

日本の社会人が「勉強しない」というのはよく言われる話で、それは確かに僕の周りでも実際に観察できるくらい、まあ本当にびっくりするくらい勉強しない(本さえも読まない)。

それは何も「100年時代に対応しよう!」なんて大上段に構えなくても、単純に仕事を楽しくしたり、効果的にしたりする為には必要な行為だと思うのだけれど、多くの人はそんな考えすらないようである。

事後的に選択肢が広がるという感覚

これは「好奇心の欠如」だと僕は思っている。

以前にも書いたことかもしれないが、人生を楽しむ為に必要なことは「好奇心」で、それがあれば大抵のことは何とかなる、と僕は思っている。

「誰かに言われて」ではなく、単純に興味があるから勉強するという行為。

その延長線上に選択肢が広がる(事後的に)というのが大事で、「事前に準備しておこう!」と日本人は力みがちなのだけれど、それはちょっと違う気がするのである。

順番が逆では?

これはライフシフトの議論においても同様である。

「人生100年時代!」というと、それに向けて準備をしておこうと考えがちである。

「人生において仕事をする期間が延びるし、その内容も多様化するから、何とか準備をしておかなければならない」

その気持ちは間違ってはいない。

でも順序が逆なのである。

というか、「好奇心の赴くままに夢中になっていたら、それが新しい仕事になっていた」というのが望ましい状態である。

必要になりそうだからやるのだろうか?

例えば、プログラミングは一時期副業界隈ではとても持て囃されていた。

プログラミングという概念やその構造を知ることは万人にとって大事なことだと思うけれど、それを仕事にするとなると、それなりのスキルなり才能が求められることは、一旦かじってみた人なら良く分かることであると思う。

少なくとも、僕はそうであった。

プログラミングの考え方自体はとても面白いと思うし、好奇心をそそるのだけれど、それを自分の仕事としてやっていく(趣味ならともかく)のは厳しいように感じたのだ。

このプログラミングという言葉は、「英語」と置き換えても良い。

「将来必要になりそうなものランキング」で言うと、以前は英語、現在はプログラミングだということなのだろう(もっと前は水泳だったかもしれない)。

どちらも基礎的な素養は不可欠だ。

でも、それを仕事にするというのはまた違う話である。

横並び意識

話が戻るけれど、ここには好奇心(内的)から出発しているか、必要(外的)から出発しているか、という違いがあって、後者が強くなり過ぎるとそれはあまりよろしくないのではないか、ということを言いたいのである。

「これからはマルチステージだ!」と身構えることは間違いではない。

でも「だから必要になりそうなものを勉強しよう!」というのはあまり効果的ではないような気がするのだ。

それよりは、今興味があるもの、面白いとのめり込むものに力を注いだ方が良いと思う。

それこそがあなたの個性であり、あなたの専門性になり得るものだからだ。

他の人と同じくらいの熱量では、同じくらいのところまでしか到達できないし、似たような成果しか出せない

工夫したり、変なアプローチをすることで、独自性が生じるのである。

緩く統率できる力

これはマネジメントも同様で、僕はマネジメントという仕事は大きく変わるだろうな、と思っている。

少なくとも現在主流の方法のように、「組織の指示に従って一直線になるように部下を纏める」ことはマネジメントとは呼ばなくなるだろう。

そうではなく、「それぞれの部下の好奇心を思い思いの方向に動かしながら、その総体がチームの力に繋がる」、それを「緩く統率できる」というのがマネジメントにおいて大事になるだろう。

人間は感情で動いている。

そしてこれからは好奇心がより重要になる。

その気持ちを折らせずに、かつ纏められる能力。

それがきっとマネジメントというものになるはずだ。

それではまた。

いい仕事をしましょう。


あとがき

「やる気スイッチ」を押させる能力がマネージャーには必要です。

その為には、適切な「仕掛け」をしなければなりません。

そして、適切な仕掛けをする為には、マネージャー自身が好奇心を持っていなければならないのです。

コスパやタイパにばかり囚われず、やりたいという気持ちに振り回されていきましょう。