ホワイト企業=ゆるいブラック企業?

UnsplashNick Fewingsが撮影した写真

1年で辞める新入社員たち

ダイヤモンド・オンラインに、「『こんな仕事のために…』新入社員が1年で退社、ホワイト企業が“ゆるいブラック”と化す理由」(2023年6月27日)という記事があった。

タイトルだけで内容が大体わかるし、でもキャッチーだし、興味をそそる記事でもあったので、僕もご多分に漏れずホイホイと引き寄せられて、このようなテーマで書くことになった、というのが今回の流れである。

趣旨としては以下の通りである(詳しくは当該記事をご参照頂きたい)。

「大卒新入社員の1割は、入社1年目で離職している。その理由として最近浮上しているのが、職場での成長の機会がないことである。一方で、多くの会社が働き方改革で若手社員を大切に扱い、『ホワイト企業』であろうと努めている。そうした職場環境の中で“お客様扱い”が続き、成長につながる負荷の高い仕事に恵まれず、失望して離職している」

現場でマネージャーをやっている僕からすると、書き手の意図伝えたいことはよくわかる。

そしてそれによって惹起される反応も、たぶん予想の範囲にはなると思う。

ただ、1つのネタにはなりそうなので、今日はこの内容で書いていこうと思っている。

それでは始めていこう。

1年で1割辞めるのは普通では?

まず僕が思ったのは、「1年で1割辞めるのって、別におかしいことではないのでは?」ということである。

よく言われる話であるが、「大卒の3割は3年以内に辞める」と考えると、1年に1割のペースというのは特段変なことではないような気もする(初年度は特にギャップも生まれるだろう)。

それはたぶん昔も今も変わらないはず。

自分のことに置き換えてみても、同期はそのくらい(もしかしたらもっと?)辞めていたような気もするし。

そういう意味では、ややミスリードというか、よくよく考えてみたらそんなに特異なことではないのではないか、というスタンスに立ち位置を戻してこの記事は読むべきであるような気がする。

離職理由の変化?

そのように考えると、この記事でフォーカスすべきなのは、「1年で1割離職している」ということではなく、その「離職理由の変化」という点なのだろう。

そしてその離職理由として、「職場での成長の機会がない」ということがタイトルとして掲げられている。

ここにもツッコミどころがある。

記事をよく読んでいくと、「会社を辞めたい・転職したい理由トップ5」という表が出ていて、「成長や昇進の見込みがないから」という項目はその中の第3位(27.3%)である。

また、「成長につながる仕事や責任のある仕事を任せてもらえないから」という項目は、第4位(26.1%)となっている(ちなみに、第1位は「昇給の見込みがないから(40.9%)」、第2位は「休みが取りづらいから(29.5%)」である)。

なんか違和感を覚えないか?

というか、この部分も昔と今とではそんなに変わっていないのでは?

1年目に成長に繋がる負荷の高い仕事は任せないだろ?

離職理由の変化が記事のテーマであるようだけれど、書き手がそちらの方向に誘導したいという意図がやや透けて見える(正確性を欠く?)ように感じてしまうのだ。

もちろん、記事を書く裏側には時系列データがあって、退職理由の順位変動(比率変動)があり、以前と比べて職場での成長機会を求めている、そういうことなのかもしれない。

そして、それは現場感覚とも近しいのも事実だ。

さて、ようやく本来の話に戻ってくる。

「成長に繋がる負荷の高い仕事に恵まれない」って、1年目ならそりゃそうじゃないか?

実力はおありですか?

言わんとしていることはわかる。

大企業であればあるほど、下請け(雑用)的な仕事ばかりされて嫌になる、それはそうだろう(実際に僕もそう感じた)。

そして、現代の若者たちの時間軸が我々とは異なるもの(より短くなっている)ことも理解できる。

さて、では問おう。

「それだけの実力をお持ちなのですか?」と。

任せる? 耐えられる?

1部のスペシャルな人材を除き、多くの新入社員というのは「まだ何者でもない人」である。

(そのような日本的雇用慣行の是非は取り敢えず今回は横に置いておくとしても)右も左もわからない人、というのが大半である。

もっと厳しいことを言うなら、同世代との競争も少なく、違う年代とのコミュニケーション経験が圧倒的に少ない人たち(もっと言えば、挨拶もままならない人たち)ばかりである。

あなたが企業の社長だったとする。

「成長に繋がる負荷の高い仕事」をそのような人に任せるだろうか?

また、逆に新入社員に問う。

「その高い負荷にあなたは耐えられますか?」

成長に繋がる仕事は、事後的にわかるもの

そして、表現が難しいのだけれど、事前に「これは成長に繋がる負荷の高い仕事だ!」とわかるような仕事は殆どないことも言い添えて、本稿を終えようと思う。

ある種の期間を経て、過酷な日々を抜けた先に、事後的に「ああ、あれが成長に繋がったのだ…」と回顧するのが、「成長に繋がる負荷の高い仕事」である。

決して「おあつらえ向き」のものではない。

用意されて、ポンとそこに置いてあるものではない。

仕事はRPGではないのだ。

彼(彼女)らが求めているものは、(僕からすれば)幻想に過ぎない。

そんなものはない、のである。

表出ようや?

少なくとも、それを理解できない者、理解しようとしない者、には「成長に繋がる負荷の高い仕事」をするチャンスは巡っては来ない。

厳しすぎるだろうか?

きっとおじさんの戯言だと一蹴されるのだろう。

それならそれで構わない。

同じ地平でタイマンしようぜ。

勝負にすらならないから。

それではまた。

いい仕事をしましょう。

あとがき

ストリート・ファイトの経験。

特に若手と仕事をしていると、相手にならんな、と思う時があります。

そしてその差がストリートの経験の差というか。

綺麗なグラウンド。

整った芝生。

用意された環境。

完全無菌の環境で育った生物は、外に出ると雑菌にすぐにやられて、死滅してしまいます。

もちろん、そこから這い上がる若手もいるでしょう。

でも圧倒的多数は免疫力が足りないように僕には見えてしまいます。

老害?

戯言?

もし不満なら、文句があるなら、いつでもかかってこいや。

血の気の多い僕はそんなことを思ってしまいます。

成長できる仕事が事前にわかるなんて幻想。

そこに気づけないなら、いつまでも成長できないままです。

コスパ重視。

タイパ重視。

賢い消費者たち。

仕事って、たぶん、そういうもんじゃないぜ?

おじさんと煙たがられながら、高い壁として立ちはだかっていきましょう。