伝え方の重要性

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伝わるものも伝わらなくなってしまうから

社長と面談した部下が不貞腐れた顔で帰ってきたので、「どうしたのか?」と聞いてみた。

彼曰く、「あれだけやったのに、私は全然評価されていない。社長の言うことはもう信じられない」

おやおや、と僕は思った。

そこで、社長に「何を話したのか?」と聞いてみた。

社長曰く、「現状に満足してはいけない。もっと高い成果を彼は出せるはずだ。それだけの期待ができる人材だから」

この乖離である。

なぜこのような事態が生じるのか?

伝え方によっては、伝わるものも伝わらなくなってしまう。

今日はそんなことを書いていこうと思う。

翻訳こんにゃく

冒頭の部下と社長のやりとりの続き。

話を聞いた部下は、面談後明らかにモチベーションを失っていた(社長との面談したその日に痛飲したようでもある)。

2、3日は感情が昂っていたから(その部下は割と表に感情を出しやすいタイプでもある)、暫く放置しておいて、その後ちょっと落ち着いた頃に僕が彼を面談に呼び、「具体的に社長からどんなことを言われたのか?」と問うた。

前年度の評価、昇格に関わることなど、自身が思っていたよりも評価がだいぶ低いものであったらしく、そのことについて相当憤っていた。

その話を一通り聞いた後で、「オレが聞いている話とだいぶ違うけどな」と切り出した。

そこで社長の想いを、僕なりに翻訳して彼に話す。

「社長はお前に期待をしている。だから厳しいことも言う。残念ながら前期はその高い期待に沿うような成果ではなかった。それはお前もわかっているはずだ。昇格についても、お前が期待しているような2ランクアップはなかったが、1ランクは上がっている。それでもまだ不満なのか?」

そのような趣旨の話を、感情の緩急を交えて、丁寧に伝えた。

すると、「そういうことだったんですね。社長との面談では全くそのようには感じられなかったから…」と、涙を浮かべ、ポジティブに受け止めてくれたのである。

面談のゴールとは?

そこで今日のテーマに戻る。

それはマネージャーの「伝える力」についてである。

いつも言うように、マネジメントとは言葉を使って組織を動かしていく仕事である。

今回の場合は、それが「部下との面談における伝え方」にフォーカスされている訳である。

さて、どのような言葉遣いをするのが適切だろうか?

もう少し具体的な話をすると、この面談のゴールとはどのようなものなのだろうか?

目的が叶っていないなら、面談は失敗

もし社長がこの部下のモチベーションを上げたかったなら、そしてそれによって更なる飛躍を願い、組織力を上げたかったなら、社長の面談はゴールに辿り着けなかったことになる。

もちろん、それなりに厳しいことを言いたかった気持ちはよくわかる。

実際に対象の部下は自己評価が高く成果に対するギャップがあることが多かったのも事実だ。

しかしながら、そのような部下の特性(キャラクター)も把握したうえで、どのような論理展開(面談構成)をすれば目的が叶うのかということは、事前にある程度想定できるはずである。

社長にも感情の昂りがあったのかもしれない。

熱を込めてきっと話したかったのだろう、とも思う。

でも、冷静に言うなら、この面談は失敗である。

目的に適っていないから。

ゴールに辿り着いていないから。

もう少しやり方はあったのでは?

もちろん、僕は社長の面談という前段があったからこそのムーブであったのも事実だ。

0から面談を始めた訳ではなく、ある程度の下地があり、そこからの展開をし易かった側面は否めない。

ただ、である。

それでももう少しやり方はあったのではないか、とは思うのだ。

伝えるべきことを伝えながら、それなりのゴールに辿り着くのはそんなに簡単なことではない。

これは営業的に言うなら商談の展開の仕方に似ている。

自社の良い所を言うだけではダメだし、相手の言うことを聞くだけでもダメなのが商談である。

伝えるべきことは伝え、譲歩できるところは譲歩し、それでもそれなりのゴールに辿り着くこと。

できるだけウィンウィンの関係性を構築すること。

それが商談である。

アドリブとあらすじ

僕はずっとそういう仕事をやってきた。

そして商談にはアドリブの要素が不可欠でもある。

事前に想定していた流れと、実際の現場で起きる流れは異なることがある。

その流れを上手に読み、ある時はその流れに身を任せながら、目的地に辿り着くことが大事なのだ。

事前に想定していたあらすじに固執するのは下策である。

相手の表情や感情の動きを把握しながらも、厳しいことも交えながら、伝えるべきことを伝えること。

それはそんなに簡単なことではない。

でもそれができなければ、マネジメントという仕事の難易度は上がる。

なにせ、(繰り返しになるが)言葉を使う仕事なのだ。

パフォーマンスの向上が目的

面談というのは、あくまでも過程に過ぎない。

それを使って、チームなり組織のパフォーマンスを上げるのが我々の仕事なのだ。

ましてや今回のように、内容がたとえ同じであったとしても、正反対の効果を引き起こす可能性がある場合にはより一層注意をしなければならない。

ちょっとしたニュアンス、言葉尻、表情。

それを総合して、被面談者は判断を行うから。

それではまた。

いい仕事をしましょう。

あとがき

自分の感情を優先させて、ゴールを想定していない人が割と多い。

マネジメントという仕事をしていると、そう思うことがあります。

大事なのは目的を叶えることで、それまでの過程は手段に過ぎません。

でも、多くの人は、そこまで考えていないように見えます。

やりたい、言いたい、それは結構。

でも、効果検証もしっかりしましょうね。

大事なのはパフォーマンスの向上です。

冷静かつ冷酷に、効果を計測していきましょう。