部下と話す時間がない?
忙しくするのはマネージャーの仕事ではない
「毎週部下と2~3時間くらいは面談をしている」と同僚のマネージャーに話したら非常に驚かれた。
「忙しくて部下と話す時間なんてないですよ」というのが彼の言い分で、その言葉には「時間があって(暇そうで)いいですね」という含みがあったので、少しだけ傷ついた。
でも、今になって思い返してみると、やっぱり彼の働き方には改善の余地があるような気がするのである。
もう少し厳しい言葉で言うと、「その働き方では成果は上がらない」ということになるかもしれない。
何度も書いていることだけれど、マネージャーの仕事は忙しくすることではない。
担当者(メンバー)時代とは大きく異なる概念を持つ必要がある。
それがわからなければ、優秀なマネージャーにはなれないのだ。
今日はそんな話をしていく。
部下と話す時間が他にない
僕は毎週部下と1on1を行っている。
10人くらい部下がいるので、1人10分としても100分(1時間40分)、長い人だと1時間近く話したりするので、何だかんだ2~3時間くらいはあっという間に経ってしまう。
内容は仕事のこともあるけれど、どうでもいい話も多いし、どちらかというと1対1で話すという行為自体が大事なのだと思って、この時間を取っている。
もちろん僕だって忙しくないわけではない。
「課長は暇そうでいい」というのが持論ではあるけれど、そんな僕にだって忙しい時はある。
でも、この習慣は欠かさずに続けている。
それはなぜか?
部下とコミュニケーションを取る時間が他にないからである。
1人1人とは殆ど話していない
たぶんこれだって十分だとは言えない。
本当はもう少し時間を取るべきなのだろうとは思う。
というのは、3時間話をすると言ったって、1人当たりは10分~20分くらいしかないわけで、それでコミュニケーションが十分だとは到底言えないと思うからである。
話すのは意思疎通とは異なる
こんな話をすると、「いやいや、オレは普段から頻繁に部下と話をしているよ?」と仰る管理職の方もいるかもしれない。
本当にそうだろうか?
職場での挨拶や簡単なやり取りは、話をしている内には入らないのである。
それはあくまでも仕事上の意思疎通に過ぎなくて、深い話にはなっていないからである。
先週1週間を思い出してもらって、1対1での会話がそれぞれの部下に対して何分あったかを考えてみて欲しい。
ちなみに冒頭に出した同僚のマネージャーは0分である。
果たしてそれでいいのだろうか?
プレイヤーは際限なく忙しくなる
昨今、プレイングマネージャー的な仕事をせざるを得ない人はとても多い。
(手前味噌的な)僕もそうだったが、プレイヤー業務というのは、優秀であればあるほど忙しくなる。
はっきりいって際限なく忙しくなる。
自分でスケジュールをコントロールしようと思っても、勝手にアポイントが入ったりするので、制御不能なくらい忙しくなる。
これはわかる。
でもそれはあくまでもプレイヤー時代の仕事振りである。
マネージャーはそうではない。
自分で自分の仕事をコントロールしなければならない。
というか、突発的に仕事が入ることが多いので、即応できるように、その分だけ余力を残しておく必要があるのがマネージャーの仕事の仕方である。
目の前よりも全体を
もう少し言うと、できるだけ自分でやる仕事の割合を減らして、部下がやる仕事の割合を増やすことが重要となる。
要は、日常業務は部下にやってもらって、マネージャーはもっと全体的な話に注力すべきなのである。
そしてその「全体的な話」の中には、部下との対話も含まれる。
ここに体力を割くことなくして、チームの成果の向上はない。
忙しく働いている(と思っている)マネージャーの大半は、この部分に体力を配分していないので、メンバーがいつまでも成長せず、忙しいままなのである。
普段から話をできる素地を作っておく
1on1を繰り返すことの利点は、部下のパーソナリティを理解することで、どの辺で仕事が滞りがちになるかが手に取るようにわかるようになることである。
もちろんそれに気づいた時に、手を入れるかどうかは判断が分かれるところなのだけれど、少なくともやきもきすることはなくなる。
そしてその仕事がつまる要因は何なのかを一緒に考えることができるようになる。
この反復が部下の仕事力の向上に繋がっていく。
大事なのは個別の仕事を教えたり、サポートしたりすることだけではなく、大枠の概念、俯瞰的に見た時の仕事の流れを円滑にすることなのだ。
これを時々1on1の場面で真面目に話す。
その機会を強制的に作ることができるのが、普段から部下と話をしていることの効用なのである。
暖簾に腕押し。糠に釘。
冒頭の同僚のマネージャーが、仮に僕の話に感銘を受けたとして、「さあ、面談しようか!」と1on1を始めたとしても、深い話をするまでにはそれなりの時間がかかる。
大事なのは継続することで、1回の面談で何か凄いものを得ようとすることではないのである。
ただ単調に面談を繰り返す。
日常の中に1on1を溶け込ませる。
それをすることで、部下の成長を(少しずつではあるけれど)支援することができるようになるのだ。
打ったって響かない。
暖簾を押しても手ごたえはない。
それでいいのだ。
その日々の反復が、きちんとした話をできる土壌になるのである。
それではまた。
いい仕事をしましょう。
あとがき
「部下と話す」というのは「仲良くなる」こととは異なります。
仲良くなる必要はありません。
(強制的に)対話をする習慣をつけることにこそ意味があります。
話すことがない時に、「話すことがない」ことを話すことができることが大事です。
継続していきましょう。