「オレが教えてやる」はやめよう

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「こちら発」はNG

営業という職種柄(?)、自己愛が強い人が多いように思う。

ここで言う自己愛というのは、自信やプライドに近いニュアンスであって、必ずしもネガティブな意味合いではない。

要は、自分のやり方に拘りがあって、かつ優れているという自信もある、という感じである。

この種の人は、マネージャーになると、「教えたい!」という欲求に駆られるようだ。

その多くは善意から生じるものなので、「何がそんなにいけないの?」と感じる方も多いと思う。

でも、それはやめた方がいい。

というか、「こちら発」のものはNGである。

今日はそんな話をしていく。

プッシュ型セールスとプッシュ型教育

営業には「腕力」が必要となることがある。

「腕力」というのは相手のニーズがどうであれ、流暢に話を進め、成約まで「押し込む(押し切る)」ことができる能力のことを指す。

よく言われる表現で言うと、「プッシュ型」の営業手法である(一般的に想像される「営業マン」というのは、このタイプの人であることが多い)。

そして、冒頭に書いた「教えたがるマネージャー」というのは、この営業手法でのし上がってきた人が多いので、それを部下にも当てはめようとしてしまうのである。

従前であれば、悪くはなかったのかもしれない。

昭和時代であれば、部下も話を聞いてくれたのかもしれない。

でも、令和ではそれはやめたほうがいい。

少なくとも、部下のニーズを探ってから行った方がいい。

それが今日の話の結論となる。

相手に先にカードを切らせる

営業でもそうなのだけれど、相手に先にカードを切らせることはとても重要である。

これは「潜在ニーズを顕在化させる」なんて言われることが多い。

要は、「相手が何を欲しているのかをイメージしてもらい表に出してもらう」ことが重要で、その出してきたものに対してこちらもカードを切れば、勝率は大きく上がるということである。

まあ営業の初歩だ。

ただ、「腕力」に自信がある営業マンほど、この基本原則を忘れがちである。

それは手札のカードが強力なので、相手のカードが何であれ、勝つことができるから(オールマイティカードもしくは数字が大きいカードを想像して頂くと良いと思う)である。

でも、それは部下育成には向かない。

なぜなら、部下はあなたほど優秀ではないからだ。

「マネージャーだからできるんですよ」

これは3すくみのカードゲームを想像して頂ければわかりやすいと思う。

相手が場にカードを出してから、こちらがカードを切れる(後出しじゃんけん的なイメージ)というルールであれば、勝率が上がるのはすぐにわかるだろう。

それが逆であればどうであろうか。

こちらが先にカードを切ってしまうと、相手が当然ながら有利となる。

でも、そんな状況であっても、優秀なマネージャーは、スペシャルカードを持っているので、これでもどうにか勝つことができてしまうのである。

ただ一般の営業マンではそうはいかない。

手札が貧弱であるからである。

先にカードを出させると、大抵は負ける。

だから彼ら(彼女ら)はこう言う。

「それはマネージャーだからできるんですよ」と。

反応が薄いのはやる気がないからではない

ここにはこの種のマネージャーが「部下のニーズを引き出す」という概念も抜け落ちている。

自分のカードが強力であるがゆえに、部下の育成についても、自分の(強い)カードを切ればどうにかなるだろう、と思ってしまうのである。

そして実際に研修や勉強会などをやってみると反応が薄いので、「こいつらはやる気がない」なんて思ってしまったりするのだ。

完全なスタンドプレーである。

教えは「教えが欲しい」という意識があってこそ発動する

教えというのは教えが欲しいという意識があってこそ発動する。

そうでない時に教えようと思っても、なかなか身に付くものではない。

それが冒頭に書いた「こちら発」ではいけない、ということである。

まずは相手を崩すことから始める。

営業的に言えば、どこに部下のニーズがあるのかを探る。

もちろん営業と同様で、部下が言ってくるニーズというのが真のニーズであるとは限らない。

本人すら意識していない部分に本当にニーズがあることもしばしばであるから、そこを丁寧に探って、引き出していく。

いきなり技をかけるのではなく、まずは体重を移動させ、体勢を崩す。

そこで技をかける

このイメージを部下指導にも活かすのである。

マインドセットさえできれば、後は勝手に伸びる

何年もマネージャーをやってきて思うのは、「伸びたい」「成長したい」と部下が思わなければ、伸びたり成長したりすることはない、という当たり前の事実である。

一方で、そのマインドを持たせることができれば、後はそんなに難しいことはない。

ただ、1つ1つ状況に合わせた話をしていけばいいのである。

そして求めているものは部下1人1人異なるのである。

そんな当たり前のことを忘れて、「オレが教えてやろう」なんていうのは間違っているのだ。

オレ流は三流

時代も変わるし、顧客も変わる。

ましてやそのマネージャーの成功だって、「たまたま」である可能性がある。

再現性の低いものである可能性すらある。

それを考慮せずに、ただ「オレ流」を押し付けるのは、はっきり言って営業マンとしても三流である。

それではまた。

いい仕事をしましょう。


あとがき

「教えたがり」善意から生じるので厄介です。

多くの善意から生じるものが厄介であるのと同様に、「教えてやる」という意識も対処に困るものです。

ましてや部下は立場が弱いことが多いので、なかなか断ることができません。

大事なのは、相手に教えて欲しいと思わせることです。

後出しでいきましょう。