最初の3週間が肝心
ストレンジャーとして改革を始める
「停滞しているチームを改善させる」というミッションを与えられてマネージャーに就任するのであれば、その改革はできるだけ早く始めた方が良い。
「最初の3か月は様子を見る」「そこから問題点を洗い出して対処していく」というのがセオリーではあると思うが、個人的にはこの意見には反対だ。
体感的には3か月ではものすごく遅い。
ここでの要諦は「何者かわからない状態で手を付ける」ということだからだ。
着任後3か月もすれば、大体の人柄はわかる。
その人がどういう考え方をして、どういう行動様式を持っていて、どんな発言をするか、予想がつくようになる。
だから、そこから「さあ、色々と変えていくか」と腰を上げても、部下達はマネージャーの「程度」がわかってしまっているので、思い通りに進まなくなってしまう。
マネージャー自身もそのチームの状況がある程度わかってきているし、そこにある種馴染んできてしまうので、変革には及び腰になってしまうことになる。
微調整で良くなるくらいのチームであればそもそも最初から結果が出ているはずだ
「いやいやでも拙速にやってしまうと失敗するんじゃないの?」
「もっとじっくり分析した方がいいんじゃないの?」
この意見は的外れだ。
というか、それを考えてしまうと上手くいかないのだ。
直感や第一印象をもとに改革を始めようとするのは確かに不安だ。
そこに根拠と呼べるものはないからだ。
ただ、そういうような気がしたから、というような曖昧なところが出発点となるからだ。
だから、証拠というか、根拠というか、そういったものを探したくなる気持ちもよくわかる。
でもそれが見つかった時にはもう遅いのだ。
表現しづらいのだけれど、その時点では君は「そこの人間」になってしまっているから、そこから変える為にはものすごいパワーが必要になる、そして残念ながらその力は湧いてこない、という感じが近いかもしれない。
むしろ、部分的調整・微調整・軌道修正で何とかやっていこうとしてしまう。
それは悪いことではない。
ただ、抜本的に変える為にはそれでは不可能だ。
ある種の外科的処置が必要となる。
非難も批判もすべて受け入れる覚悟を持って手術を断行する
3か月もいると、この病は薬でどうにかできるのじゃないか、と思うようになる。
投薬を続ければ、いずれ快方に向かうと考えてしまうようになる。
だって、手術は怖いし、失敗してしまうかもしれないし、体にも負担が大きいし。
きっと本人はそれが小手先だとは思わないだろうが、僕から見ればそんなのは殆ど無意味だ。
開腹して、腫瘍を摘出しなければならない。
もちろん血は出るし、脈拍は乱れるし、しばらくは体力も回復しない。
時に医療訴訟を患者から起こされたりもする。
その時に矢面に立たされるくらいなら、穏便に進めた方がよい、その気持ちもよくわかる。
でも少なくともそれで改革が上手くいった人を僕は見たことがない。
リスクを取らなければリターンはないけれど…
立て直しをする為には色々な覚悟がいる。
自分の直感への猜疑、嫌われて孤立する可能性、変えたところで結果が出るかどうかわからない不確実性、そういったものを全て飲み込まなければならない。
大きなリスクだ。
そして、さらに悪いことに、別に改革がうまくいったからと言って、それが君の手柄だと認めてくれる人は皆無だということだ。
ハイリスク・ノーリターン。
それが立て直しにおける現実だ。
仮に君が始めた改革が上手くいき始めると、「オレは最初から賛成だった」とか「オレの言う通りになった」とか手のひらを変えだす人が続出する。
自分ではそのリスクを負おうとしなかった臆病者たちが急に表に出てきて、手柄を独り占めしようとする。
だから僕の言っていることはただの自己満足に過ぎないのかもしれない。
本当は望まれてさえいないことを勝手にやって、かき回しているだけなのかもしれない。
それを「改革だ」と一人悦に入っているだけなのかもしれない。
成果が出たのは仕組みを変えたからではなく、たまたま運が良かったから。
前からやっていたことが、君の代になってようやく実を結んだね。
外野は本当に色々なことを言ってくる。
暗い森の中は猛獣でいっぱい。そして光は射さない
まだこれはマシな方だ。
改革を始めてから、結果が出るまでにはある程度時間がかかることが多い。
今までのやり方よりも低迷することもザラだ。
そんな最中には批判の声はより大きくなる。
自分も疑心暗鬼で仕事をしているので、結果が出ないとだんだんと不安になってくる。
部下も新しいマネージャーをまだ信用していないので、本当に孤立無援になる。
心が折れそうになる。
実際に心が折れて、そこからパワハラ系マネージャーになったり、ヘラヘラ系マネージャーになったりしてしまう。
そのくらい立て直しの作業は孤独で辛い作業だ。
暗い森を独りでただ歩いていく。
明かりも地図もコンパスもない。
ハイエナたちが君が倒れるのを待っている。
上空にはハゲタカが舞っている。
それが君が歩いていく道だ。
もちろん事前に準備を入念に行って(寝袋や食料等をたくさんリュックに詰めて)、その旅を始めようとすることもできるだろう。
でもその準備はいつまでも終わらないし、居心地も良くなってきて、君はだんだんと旅に出ることが億劫になってくる。
この村はこの村で良い所もある、そう思うようになる。
それはそれでいい。
でももし君が新しい景色を見たいのなら、できるだけ早く出発した方がよい。
そして歩きながら色々な物事を変えていった方が良い。
直感を信じよう。
そして恐れずに悪性腫瘍に手を付けよう。
返り血を浴びても、手術を遂行しよう。
軌道に乗れば、そこからの道は歩きやすくなる。
それを信じて。
それではまた。
いい仕事をしましょう。
編集後記
人間は現状維持を心地よく思う生き物です。
これは本能として太古から遺伝子に組み込まれているものなのでしょう。
隣の山に向かうと食料はあるかもしれないけれど、熊に襲われてしまうかもしれない。それならば、動かずにここで飢え死にした方がマシ、まだ何日かは生きられるし、というのは人間として当然の反応です。
でもそれではマネージャーとしての仕事を成し遂げることはできません。
失敗のリスクを全身で受け止めながら、新しいことを始めましょう。
それがマネジメントの楽しさにも繋がります。
暗く心細い夜を超えた先に光があります。 直感という松明に火を灯し、一歩一歩進んでいきましょう。