良かれと裏目
良かれと思って為される施策に効果はある?
働くことに意味が薄くなっている時代である。
そんな中では、社員のモチベーションも上がりづらいし、エンゲージメントも高まらない。
そのような社員たちを何とかつなぎ留めるべく、会社は様々な施策を打つ。
フレックスタイムの導入、在宅勤務制度の整備、社内カフェの設置、ノー残業デーの設定、コミュニケーションイベントの開催、その他諸々の福利厚生拡充…。
良かれと思って為された様々な打ち手。
これって効果的なのだろうか?
むしろ逆効果なのではないか?
今日はそんなことを書いていく。
これじゃない感
人事部発信なのかコンサル会社のアドバイスなのか(もしくはその両方なのか)、何だか思い付いたように新しい制度が始まることがある。
冒頭に書いたような、キラキラした施策たち。
その度に僕はうんざりすることになる。
「いや、そうじゃないんだよな…」と。
ズレた施策
確かに僕は偏屈で、変わり者で、だからそのような施策を斜めから見ようとする傾向があることは否定しない。
でも、本当に求めていることはそれじゃないんだよな、といつも思う。
もちろん嬉しくないことはない。
一時的には、ポジティブに受け止める。
でも、それが持続的に効果を上げることなんてないのだ。
プラスよりもマイナスを人間は重く捉える
行動経済学で出てくるワードの1つに、「プロスペクト理論」というものがある。
これは簡単に言えば、「人間というのは、得することよりも損することを過大評価する」ということである。
言い換えるなら、手に入れるよりも損失を回避したい、ということになる。
そうなのだ。
新しく制度を拡充する(加算)するのではなく、今あるマイナス要素をなくして(減算)欲しいのが、人間の真理なのである。
これを人事部やコンサルタントはわかっていない。
というか、あまり重く受け止めていない。
現場でマネージャーをやっている僕はそう思うのだ。
加算よりも減算を
これはこのブログでもいつも言っていることでもある。
マネジメントにおいて大事なのは、加算ではなく減算である。
新しい施策(改革等)をやるのではなく、まずやらなくてもいいことを無くすこと。
チーム内の無駄を削ぎ落していくこと。
それがチームの効率を上げ、部下のモチベーションを向上させる。
マネージャーになって「まず何をすればいいですか?」と聞かれたら、僕は「無駄な仕事を無くしなさい」そう答える。
それくらい減算の考え方というのは大事なのである。
これをやらずに新しいことをやろうとすると、部下の心境としては「確かに悪くはないんだけど、欲しいのはそれじゃないんだよな…」という状態になってしまう。
「コレジャナイ感」が生まれてしまう。
この落とし穴に嵌らないことがマネジメントにおいてはとても大事なのだ。
加算は外れることがあるが、減算は外れない
プロスペクト理論においては、損失は利得の2倍大きく感じる、と言われる。
これは僕が常々言っている感覚と一致しているし、マネジメントにおいて効果を上げるには減算することが近道であることを端的に表わしてくれている。
要は、減算は加算の2倍コスパがいいのだ。
そして、新しいことに対する反応というのは人それぞれであることが多いけれど、無駄なものを失くすことに対する反応は大体同じなのである。
加算は外れることがあるけれど、減算は外れない。
これも大事なことである。
初期においては「外さない」ことが重要
マネジメントにおいて大事なことは、まずそのマネージャーの言うことが信頼できるものであることを理解してもらうことである。
特に初期においては、「外さない」ことが重要なのだ。
そうやって信頼を積み上げていく。
これは冒頭に書いた人事的な施策にも言えることである。
人事部が行う施策の殆どは、(僕が感じているように)思い付きでやっているように捉えられることが多い。
「またかよ…」というネガティブな捉えられ方をされてしまう。
それはなぜかと言うと、人事部の施策というのが「外れ続けているから」である。
そこに信頼感がないのだ。
だから良かれと思ってやっていることも、裏目に出てしまうのである。
減算には体力と気力がいる
大事なことは、たぶん減算の思想なのだ。
何か新しい施策を打つことは悪いことではないけれど、それは今あるマイナスの要素を失くしてから考えるべきなのである。
確かにネガティブな要素を失くすのには、体力と気力がいる。
たくさんの返り血を浴びることにもなる。
でも、そこに手を突っ込まなければ、病巣にメスを入れなければ、組織は良くなってはいかない。
僕はチームビルディングを行う時、この辺をよく意識している。
マイナスを除去しよう
物事の本質はどこにあるのか?
それはどの程度根深いものなのか?
そして、手をつけるとしたら、どのタイミングが望ましいのか?
まずは現状をよく見るのだ。
どこに問題点があるのか?
それを分析するのは、新しい施策を考えるよりも難しいものではある。
でも、それをやらなければ、その作業から逃げてしまっては、折角の良い施策も意味を成さないのだ。
プラスにはすぐ慣れてしまうのが人間の性だ。
でも、マイナスにはいつまでもねちっこく繰り返して不満を言い続ける。
それをまず除去しよう。
それではまた。
いい仕事をしましょう。
あとがき
QOL(Quality Of Life)の向上の為の新しい商品の数々。
それで生活が豊かになるとコマーシャルは囁く。
僕たちは簡単にそれに踊らされます。
でも、まずすべきことは、部屋を片付けることでは?
僕はそんなことを思っています。
QOW(Quality Of Work)の向上もきっと同じです。
マイナスを除去すること。
裏目に出ない確実な一手。
地味ですが、そこから手を付けていきましょう。