待つスキル

UnsplashTom Morelが撮影した写真

オレの頼んだ仕事忘れてない?

部下に仕事を依頼して、その期限が迫ってきた時、あなたは部下に声を掛けますか?

今日はそんな問いかけから文章を始めてみる。

というのも、自律型チームを目指すなら、「待つスキル」は必要不可欠であると思ったからである。

冒頭の問いは、期限をあらかじめ定めているので、声を掛けるのを留まる(留まることができる)人もそれなりにいると思う。

では、次はどうか?

部下に(期限を定めずに)仕事を依頼して、自分がこのくらいで戻ってくるだろうと予測した時間にはまだ返ってきていない場合、あなたは部下に声を掛けますか?

二つ目の質問は、答えが分かれるのではないだろうか?

少なくとも以前の僕なら、どちらの問いにも「はい」と答えていただろう。

でも、時にその問い掛けは部下の自発性を阻害することになる。

だから、できるだけ待てるようになった方が良い。

今日はそんな話である。

結局やっているのはマイクロマネジメントでは?

僕はマイクロマネジメントを毛嫌いしているし、実際にこのブログの中で何度も批判をしている。

でも、ふと我に返って思うのは、「自分だって(時々は)そういうことをしているのではないか?」ということである。

特に、仕事の進捗管理の場面では、それが顕著であるような気がするのだ。

すぐやってしまいたい。じゃないと気持ち悪い。

僕は自分の仕事のやり方として、依頼された事項はいの一番に返すそのスピード感なら誰にも負けない、という点で、「仕事ができる感」をアピールしてきた。

というか、実際にその方が気持ちよく仕事ができるからそうしていた、というのがより正確な表現だろう。

何らかのやらなければならないことが残っていると気になって仕方ない、という性分なのだ。

だから、さっさと終わらせる。

それが僕の仕事のやり方である。

任された仕事を忘れてしまう人たち

でも、マネージャーになってから、そのような仕事のスタイルが一般的ではないことに気づいた。

自分が任された(依頼された)仕事については一旦脇に置く、そしてまず手元にある仕事を片付ける、その後任された仕事に取り掛かる、というのがむしろ一般的なのだろう。

ただ、部下の中には、脇に置いたまま、任された仕事を忘れてしまう人がいる。

それもそれなりの人数(と確率)で。

となると、マネージャーは、ある程度部下の仕事の進捗管理をしなければならなくなる。

自分が依頼した仕事がどこまで進んでいるか、もっと言えば自分が何を依頼したのか、それを複数名の部下に対して記憶(管理)しておく必要がある(これが煩わしいからといって、自分でやってしまうというマネージャーも多い)。

マネージャーも人間なので、管理できるキャパシティには限界がある。

なので、終わらせられるものは終わらせてしまいたい。

そこで冒頭の質問に戻るのだ。

「その場合、部下に声を掛けますか?」と。

自分の想像以上に待つスキル

僕が最近思うのは、この声掛けのタイミングを自分が思っているよりも相当遅くすることができれば、自律的なチームができる(下地が作れる)ようになる、ということである。

というのも、マネージャーが部下の仕事の進捗管理をやりだすと、部下がそれに甘えて自分で管理しなくなるからである。

「どうせマネージャーから催促があるだろう」

「そこから仕事に取り掛かればいいか」

そこまで露骨に思わないとしても、任された仕事に対する注意度合い(自己管理度合い)は大きく減少してしまうのである。

なので、それをやめる。

ギリギリまで、本当にギリギリまで待つようにする。

これが自律型のチームを作る為に必要なスキルなのだ。

仕事の覗き見

「そうは言っても、実際にやらない部下もいるので、そこまで待っていられません」

そういう声が聞こえてくる。

そしてその気持ちもよくわかる。

そこでアドバイスだ。

僕がよくやるのは、「部下のデスクを覗き見る」ということである。

もちろんその際に声掛けはしない。

今は何をやっているのかな、ということを通りすがりに眺めるのだ。

部下の仕事の「文脈」を把握しておく

これは声掛けを自制する為に僕自身が身に付けた方法である。

期限から逆算して、その仕事を終えられるくらいの余力を残した時間辺りに、部下がデスクで何をやっているのかをチラ見するのだ。

その際に自分が依頼したものをやっていなければ、まず期限内にその仕事が戻ってくることはない。

でも、注意しなければならないのは、その前の仕事が立て込んでいたり、急に仕事が差し込まれていたりする場合もある、ということである。

要は、その部下の仕事の「文脈」まで何となく理解しておくことが重要なのだ。

仕掛けないで待つ

これをあまりにも露骨にやると「管理している感」が出てしまうので、「見るとはなしに何となく見ておく」ことをお勧めする。

以前にも書いたことかもしれないけれど、全体感を焦点を合わせずにボヤっと理解しておくことは、チームマネジメントにおいて必要なスキルだ。

どこで何が行われているのか、その緊急度はどのくらいなのか、ということを、口を挟まずに流れだけ追っておくこと。

これができていれば、大体の仕事に対して「待つ」ことができるようになる。

そして待つことができるようになれば、部下側から報告や相談が来るようになるのだ。

仕掛けないで待つこと。

そんなイメージを持って仕事に取り組んでいれば、いつしか自律型のチームができているはずだ。

それではまた。

いい仕事をしましょう。

あとがき

「マネージャーは暇そうでいい」

僕はブログの初期からそのことを言い続けています。

というのは、多くのマネージャーは忙しくし過ぎているからです。

そしてその「忙しい感じ」はチームを確実にダメにするからです。

部下の仕事を管理したり、実際に自分でやってしまったり、介入の頻度が多くなればなるほど、チームはより受動的になっていきます。

そんな人に限って、「部下が自発的に動かない」なんて愚痴っていたりします。

自分がそのようなチームを作っている原因であるのに。

自発的なチームを作る為には、部下に仕事を任せなければなりません。

「勉強しなさい!」と母親に言われると勉強したくなくなる、そんな気持ちを理解しながら、マネジメントに励んでいきましょう。