ゆっくり急げ

UnsplashNick Abramsが撮影した写真

スピードが全てを解決する、訳ではない

ラテン語の格言に「ゆっくり急げ」という言葉がある。

これは「良い結果に早く至るにはゆっくり行くのが良い」という意味だそうだ。

日本語に直すなら「急がば回れ」「急いては事を仕損じる」に近い言葉とも言えるのかもしれない。

でも、僕の感覚では、「急がば回れ」や「急いては事を仕損じる」よりも「ゆっくり急げ」の方が、マネジメントのやり方としてはしっくりくるので、今回はこちらの言葉をテーマに話をしていこうと思う。

何年もマネジメントという仕事をやってきて思うのは、「待つことの大切さ」である。

今までは「スピードが全てを解決する」という概念を持って仕事をしてきたし、それはある程度実際に成功の方程式であった訳であるが、マネジメントという仕事においては、「スピード=善」であるとは限らない、ということを身に染みて感じる。

「時間を味方に付ける」「上手に時間と付き合う」

そんなイメージを持ちながら仕事をすると、マネジメントという仕事においては成功に近づくのではないか。

今日はそんな話をしてみようと思う。

それでは始めていこう。

判断を間違える確率をできるだけ下げる

マネジメントとは判断である。

でも、人間は判断を間違える。

だから、判断を間違える確率をできるだけ下げることがマネジメントの成功に繋がる。

ただ、そうは言っても、判断の精度を上げることは一朝一夕にはできない。

「さて、どうするか?」というのが僕の思考の流れである。

「拙速な判断をしない」のと「ゆっくりと判断する」のは違う

そして、この回答の1つが「待つ」ということである。

これは表現を変えるなら「拙速な判断をしない」ということなのかもしれないけれど、拙速な判断をしないよりも、「ゆっくりと判断する」という方が僕の中では言葉としてしっくりくる。

「時間を味方に付けて判断をする」というか。

その際に大事なことは、「判断ができない」ことと「ゆっくり判断する」ことは大きく異なる、という考え方である。

外側から見れば同じように見えるかもしれないけれど

判断ができないマネージャーは多い。

それは(以前にも書いた)事実と解釈と意見を分けて理解できない、ということが大きな理由としてある。

でも、今回僕が言いたいことは違う。

「判断ができない」ことと「ゆっくり判断する」ことは、途中経過を外側から見れば同じような状況に見えるかもしれないけれど、明らかに違う。

事実と解釈と意見をきちんと分けて理解した上で、ゆっくりと判断をするのが大事なのである。

もう少し正確に言うなら、事実と解釈と意見の理解は急いでやり、判断はゆっくりやる(場合があってもいい)、そんな感じと言えるのかもしれない。

大きな判断ミスをしないように、判断を熟成させる

大事なことは、大きな判断ミスをしないことである。

そして大きな判断ミスというのは、拙速な状況把握から生じることが多い。

もちろん、上記したように、事実と解釈と意見を急いで行うことは重要であるが、そこからある種「熟成させる」というか「発酵させる」というか、ある程度の時間を置くことが判断の精度を上げることに繋がるのではないか。

そんな風に思うのである。

だから、「ゆっくり急ぐ」ことが大事なのだ。

判断はできるけれど、しない状態

これは「急がば回れ」とは違う。

回らなくていいのだ。

進むべき方向に、そのまま進めばいいのである。

ただ、その際に「時間を味方に付ける感覚」を持っていた方が良い。

そして、判断を寝かせながらも、この辺で判断が必要だなという所が来たら、きちんと判断を行うのである。

だから、「判断ができない」とは違うのだ。

判断はするのである。

そして、それは該当の事象が起きた直後にもできるもの(判断ができる状態にはなっている)だ。

ただ、そこで敢えてしないこと。

ゆっくりと、その判断を遅らせること。

そんな感覚なのだ。

わかっていないと思われる確率の大幅な減少

これができるようになれば、判断の精度が格段に上がるようになる。

それも判断のプラス面が増える訳ではなく、マイナス面が大きく減る結果、精度が上がるのである。

「アイツわかってないな…」とか「そうじゃないんだけどなあ…」と思われるような失態は激減する。

そしてそのような失態が激減すれば、あなたの判断に部下は信頼を置くようになる。

あとは言わずもがなだろう。

しなくていい失点はしなくていい

マネジメントにおいて大事なことは失点を防ぐことである。

それも大きな失点を防ぐことが成功に繋がる。

もちろんそれだけではつまらないし、穏当というか凡庸というか、無味無臭・無味乾燥的なものになってしまうのも事実だ。

でも、しなくていい失点はしなくていい。

それもそれが自分の意図しない失点なら尚のことである。

その際に大事なことは、周囲の状況を適切に把握しながらも、その決断を行うタイミングを待てることである、と僕は思っている。

急かされて決断をするのではなく、決断をする決定権をこちら側で持っておく、というか。

大局的に物事を捉える

事態は刻刻と変わっていく。

もちろん、瞬時に決断しなければ大火事になることもある。

でも、殆どの場合には、時間をある程度経過させた方が、物事の全体像は見えてくるものだ。

そしてマネジメント層がすべきことは、目の前の小さな事象への対処(だけ)ではなく、もう少し大局的な視点からの判断なのである。

それではまた。

いい仕事をしましょう。

あとがき

今日の話はマネジメントという仕事をしなければわからなかっただろうな、という事柄のものです。

僕はスピード至上主義者で、何事も早ければ早いほど望ましい、と思って仕事をしてきました。

でも、たぶん、マネジメントにおいてはそうではない。

そして、もっと言えば、それは仕事全般においてそうではない。

ゆっくりと判断すること。

情勢が時々刻々と変わっていく中でも、その時間経過さえも味方に付けて、大きな判断をしていくこと。

それが結果として大きな成果に繋がっていく。

そんな感覚を持ちながら、いま僕は仕事をしています。

イメージ先行的な話で恐縮ですが、何らかの参考になれば幸いです。